レビュー

ユートピアの逆、ディストピアを扱った作品の「予言」がどれだけ実現しているかをまとめる「Dystopia Tracker」

by Bruno Vaz

ユートピア(理想郷)と正反対の概念にディストピアというものがあり、豚が独裁者と化すジョージ・オーウェルの「動物農場」やアンソニー・バージェスの「時計じかけのオレンジ」といったSF作品で未来的に描かれるのが一般的。これまでのフィクションで描かれたディストピアはどれだけ現実化しているのか?ということで、ディストピアを扱った映画・漫画・小説をまとめて、それがどのように現実となったかを記録しているのが「Dystopia Tracker」です。

Dystopia Tracker
http://www.dystopiatracker.com/E



ページのトップには「Editors Picks」ということで、オススメの作品のパッケージ写真と内容が表示されています。


例えばウィリアム・ギブスンの小説「ニューロマンサー」には「裕福な人々は知能を搭載した自動運転車を使う」という文章がありました。クリックしてみると……


以下のようなページが出現しました。


ニューロマンサーは1984年に出版された本。


2010年にGoogleが自動運転車をフルオートで路上運転したこと、2012年にカリフォルニアから30マイル(約48km)の距離を事故1つなくドライブしたこと、2014年にはメルセデス・ベンツが360度ビデオセンサーとレーダーを搭載したSクラスの自動運転車を2015年に発売予定であると発表したことなどが時系列順に記載されています。


なお、「Read more about this」をクリックすると、Googleによる当時の発表など、詳細な内容を読むことができます。


さらにGoogle自動運転車について追記すべき内容があれば、「Add a realisation」から投稿を行うことも可能です。


また、ページ下部からは「ニューロマンサーは他にもこんなことを予言していた!」ということ投稿したり、ウィリアム・ギブスンやニューロマンサーに関連した予言を見たりすることもできます。


トップページに戻りスクロールすると、「Editors Picks」の下にはSF作品に登場するたくさんの「予言」が並んでいました。


「人々はタブレット型コンピューターで本を読むでしょう」というのは1987年に放送された「新スタートレック」からの一節。クリックしてみると……


2007という数字の横に「本はKindleやiPadでよく読まれている」という文章が書かれていました。iPadが発売されたのは2010年ですが、2007年はKindleが発売されたので、予言が実現したのは2007年ということになっています。


どんどん見ていきます。「スカイネットと呼ばれる人工知能を持った軍用ネットワークは自我を持ち、核を使って人間を大量虐殺し始めるだろう」と聞き覚えのある文章は……


1984年の映画「ターミネーター」です。ターミネーターの舞台は1997年ですが、2012年には筑波大学から生まれたCYBERDYNEがロボットやパワードスーツを開発しました。


「人間クローンの技術は、月面など危険な環境で複雑な仕事を行う新しいタイプの労働者の代替手段として、コスト効率のいい方法になった。クローンは本人の記憶と技術を受け継いだ精密なレプリカだ。彼らは3年ごとに取り換えられ、何が起こっているのかは伝えられなかった」という文章は……


2009年のイギリス映画「月に囚われた男」。現在、クローン人間の存在は公に発表されていませんが、75歳の男性の肌からDNAを採取しクローン細胞を作ることには成功しています。


続いての文章は「未来において、人々はアパートを離れない。彼らは家にいて退屈な食事を行い、脂肪をつけ、体を『マシーン』に接続しオーディオやビデオを通して二次的に人生を経験する」という引きこもりたい人にとっては夢のような世界です。


E・M・フォースターの「The Machine Stops」という小説にある文章でした。フォースターはこの他にも「天使も踏むを恐れるところ」や「眺めのいい部屋」などを発表しています。


次は「世界中の政府や科学者たちは減少しつつある資源を守るため、ウィルスを作りだして人口のコントロールを行おうとしている」という文章。


これは2014年9月に公開予定の映画「The Maze Runner」の原作にある文章です。The Maze Runnerの世界は2220年という設定。現在アフリカではエボラ出血熱が再流行していますが、いつかこのような事態が人間の手によって故意に引き起こされてしまうのかもしれません。


「テクノロジーは人々に永遠の命を与えた。死にたいと願う人はそのための施設で自殺ができる」という文章は……


木城ゆきとの漫画「銃夢」の中に登場する一節でした。


「選ばれた人々の娯楽として、下層の人間は人工フィールドで生死を賭けた闘いを強いられた。まるで現代のグラディエーターのように。」


映画にもなったスーザン・コリンズの「ハンガー・ゲーム」からの1節でした。ストーリーは1896年から開催されているオリンピックをベースにしていると言われています。


電気刺激を使って脳から選択した記憶を消す「脳消しゴム」を扱ったのは……


1948年に出版されたエドモンド・ハミルトンの「(PDF)The Knowledge Machine」という作品。まだ実験段階ですが、現在アメリカでは脳に極小チップを埋め込んでPTSDを治療するというプロジェクトが進められています。

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in メモ,   レビュー, Posted by darkhorse_log

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