ソフトバンクが感情を持つロボット「Pepper」を発表
ソフトバンクが6月5日(木)13時から記者会見を実施します。会見の内容について、孫正義社長自らのTwitterで「私は、25年間この日が来ることを夢見て来ました。」とツイートしています。
ソフトバンクグループ 記者会見 2014年6月5日(木) | ソフトバンク
http://webcast.softbankmobile.co.jp/ja/conference/20140605/index.html
ソフトバンクモバイルとアルデバラン、世界初の感情認識パーソナルロボット「Pepper」を発表 | 企業・IR | ソフトバンク
http://www.softbank.jp/corp/group/sbm/news/press/2014/20140605_01/
発表会前日の孫社長のツイートはコレ。
明日、我々の新技術への取り組みを発表します。
私は、25年間この日が来ることを夢見て来ました。
6/5 13時〜 http://t.co/P3Ys1f4C7R
— 孫正義 (@masason) 2014, 6月 4
そして当日も、かなりワクワクしている様子のツイート。
皆さんに我々の新しい技術への取組みをご紹介できるまで、あと1時間弱。ワクワクします。インターネットでの生中継します。
6/5 13時〜 http://t.co/P3Ys1f4C7R
— 孫正義 (@masason) 2014, 6月 5
会場はこんな感じ
会場が暗転し、現れたのは……
ロボットでした
いろいろと動いてみせるロボット
そこへ、孫正義社長が登場。
ロボットとコミュニケーションを図っています
孫社長からハートを受け取ったロボット
ひょっとすると100年、200年後の人々が「あの日がはじまりだったのか」と振り返るかもしれない、と孫社長。
感情を持ったロボット「Pepper」くん、だそうです。
Pepperくんとおしゃべりする孫社長
ウェーブするPepperくん
落ち込むPepperくんと励ます孫社長
ここからPepperくんの機能自慢がスタート。頭にスピーカーが内蔵されており……
あちこちから話しかけられても反応できる、というところを見せつけるPepperくん。
さらに、目には距離センサーが内蔵されています。
孫社長との距離を計測するPepperくん
一瞬、「その機能は何の役に立つのだろう」と思ったのですが、それを見透かしたように「では、親知らずはなぜ生えてくるんです!?」と、無駄に見える機能もあるということを熱弁するPepperくん。
さらに、孫社長の笑顔に点をつけるPepperくん。「目が笑っていませんよ!」と78点の評価でした。
産みの親であるALDEBARAN(アルデバラン)の創業者兼CEOのブルーノ・メゾニエ氏も登場して、Pepperを紹介できて嬉しいとコメント。
ここからは孫社長によるプレゼンテーション。今日が「人類にとっての転換点」となるかもしれません。
Pepperは世界で初めて感情を持ったパーソナルロボットです
ソフトバンクのビジョンは「愛を持ったロボット」
つまり、感情を理解して、自ら動くロボット。
「家族の喜び=自分の喜び」
ノイマン型コンピュータはプログラミングで動きますが、このパーソナルロボットは家族の喜びのために動きます。
パーソナルロボットの特徴は感情エンジン+クラウドAIにあります
褒められるとうれしいので、もっと褒められたいという気持ちになります。
感情エンジンはこの動きと同じように、喜びの感情を伝えることでいいことだと認識して学習していきます。
クラウドAIは集合知により、加速度的に成長します。
また、空気を読んで人を笑顔にします。
例えばベビーシッターのような仕事をしたり……
パーティープロモーターのような仕事をしたり。Pepperはいろいろなことができます。
感情の大きな振れは重点的に記録し、いつもの感情は簡略的に記録。
従来のロボットは成長の余地はそれほどありませんでした
しかし、パーソナルロボットは学んで成長していきます。
ビジョンの実現に向けた最初のロボットです
Pepperは2015年2月に一般発売決定
価格は19万8000円
全国のソフトバンクショップへ全国展開
6月6日から、ソフトバンク銀座・表参道に現れます。
こんな感じで接客
連続稼働時間は12時間以上
開発者向けのイベントは9月に開催予定
体験・開発の場が表参道と秋葉原に今夏オープン
秋にはテックフェス(仮称)を開催。
続いて、Foxconnのテリー・ゴウ会長兼CEOが登場
ゲスト5名とPepperとのふれあいコーナーが設けられました
「ハイテクハリウッドオーディション」
このコーナーでは突然Pepperくんが「ニコラス………ペッパーです」と別人格に。
Pepperのスペックは以下のようになっています。
◆スペック
サイズ(高さ×奥行×幅):1210mm×425mm×485mm
重量:28kg
バッテリー:リチウムイオンバッテリー
容量:30.0Ah/795Wh
稼働時間:約12時間以上(ショップでの利用を想定した場合)
・センサー類
頭部:マイク×4、RGBカメラ×2、3Dセンサー×1、タッチセンサー×3
胸部:ジャイロセンサー×1
手部:タッチセンサー×2
脚部:ソナーセンサー×2、レーザーセンサー×6、バンパーセンサー×3、ジャイロセンサー×1
・可動部
自由度 頭:2、肩:2×2(L/R)、肘:2×2(L/R)、手首:1×2(L/R)、手:1×2(L/R)、腰:2、膝:1、ホイール:3
モーター:20個
ディスプレイ:10.1インチタッチディスプレイ
プラットフォーム:NAOqi OS
・通信方式
Wi-Fi:IEEE 802.11 a/b/g/n(2.4GHz/5GHz)
イーサネットポート×1(10/100/1000 base T)
・移動速度:最大3km/h
・移動可能段差:最大1.5cm
正面から見るとこんな感じ
◆質疑応答
TBS ヤマシロ:
今回のロボット、人型にこだわった理由とはどういったもの?
孫正義:
やはり感情移入するという意味で、他の形より人間の形の方が家族の一員として感情移入しやすいんではないかということです。
TBS:
人っぽさが海外の同様のロボットに比べてアドバンテージになるということですか?
孫:
はい、それもあります。
TBS:
具体的にはどのようなアドバンテージ?
孫:
日本には「鉄腕アトム」があったので、世界の中でもロボットに対する親近感や夢を抱いている人が多いと思います。人の形をしたロボットが多くの人の心をときめかせるし、日本だからこそアニメの世界でなじみがある。そういう夢を描いているエンジニアも多いし、待ち望んでいる人も多いのではないかということです。
ハシモト:
ロボットの身長や体重、タイヤがついてるとか、細かいロボットの仕様を伺いたいというのが1つ。もう1つ、みなさん伺いたいことだと思いますが、アメリカのT-mobileの買収に合意したという話がありますが、話せる範囲でお答えいただきたい。
孫:
身長は120cmぐらいだったかと思いますが、体重その他、詳細は追って。T-mobileについては、その発表会ではないのでコメントを差し控えさせていただきます。
週刊アスキー タカギ:
3点質問です。日本の家には段差があると思うが、そちらはどうお考えですか。また、クラウドが落ちたときにはどうなるのでしょうか。胸のタブレットは外せるのでしょうか。
孫:
12時間以上の連続動作を目標に作ったので二足歩行はしていませんが、技術的には我々のグループとして長くもつようになってきています。バッテリーが5時間、10時間と保つようになれば二足歩行もありえますが、お店で立ちっぱなしでも大丈夫なように、また家庭でしょっちゅう電池切れしていては白けてしまうので、まずは連続稼働時間を長くできるようにということです。クラウドについては複数のデータセンターでやりますし、電源も落ちないようにします。インターネットサービスを毎日提供している立場から、クラウドのサーバーは落ちないようにと考えています。タブレットは差替できるようになっています。
Q:
今日のデモではPepperくんが滑らかに応答していたがこれは事前にプログラミングしたものなのか、それともすべて自律なのか。プログラミングであれば、どこまでがプログラミングされたものなのでしょうか。19万8000円という価格設定ですが、利益はありますか?ビジネスとして、どれぐらいの利益規模を考えていますか?
孫:
滑らかな会話ができるようにというのは、アプリケーションをシーンに合わせて用意していて、デモの多くの部分はアプリケーションに基づいたもの。ただ、会話で何を喋っているのかは認識していて、ロボットオーディションのコーナーのように、怒っているのか悲しんでいるのかという感情を読み取っています。これは感情認識エンジンが稼働し始めているということです。明日から銀座と表参道の店舗に出ることになっていて、30分に1回、アプリケーションとして予めジョークをいったりダンスしたりのショーをできるようにしています。その合間合間にはフリートークの時間があり、人工知能でお客さんとの対話をします。フリートークだと事前にシナリオがあるわけではないので、様々にお客さんとのトークを楽しみます。その中では会話がかみ合ったり、なかなか成立しなかったりすると思いますが、クラウドで毎日進化します。来年2月の発売までに、最初は2店舗、最終的には数百店舗でできるだけ多くのお客さんとふれあい、会話をする中で学習し、進化していきます。
利益は出ません、それ以上にコストはかかっているが「低い値段で高い志」、利益を度外視してでも、1人でも多くの人が、PCと同じぐらいの値段で買えるということに力点を置きました。子犬を飼うのでも20万円前後しますから、それと変わりません。保守管理が別途ありますが、ペットでいえばペットフードをあげたりお医者さんに連れていくのと同じような部分です。保守費用は別途ありますが、本体価格はあくまでも19万8000円。量産するようになればそれなりのビジネスとして成り立ちます。Foxconnを製造パートナーとして選んだのは、それが大きな理由です。どのくらいの事業規模かは、まだ今日発表したばかりなので、これから詰めていくということになります。
Q:
利益は保守やソフトウェアやアプリから?
孫:
そちらはそちらでコストがかかりますので、あくまで量産、何万台、何十万台、何百万台になっていけば、いずれはコストダウンでビジネスが成り立つようになるだろうと、そういう意味です。
コヤマ:
クラウドサービスで料金を取るのか、利益を考えているのか。また、アルデバランの従来ロボットとの違い。見た目やサイズはわかるが、その他の点はありますか?
孫:
あまり目先の利益は出なくてもいいと、ゆたっとした構えでいます。量産効果が出てくれば赤字にならない程度にはなるだろうと。大きく稼ぐというよりは、アプリのプラットフォームとして作るので、いろんなコンテンツやアプリが出てきて稼げるようになるのではないかと。アルデバランの従来のNAOとの違いについては、ブルーノさん。
ブルーノ:
一番の違いは見た目もサイズもですね。機能については、ソフトウェアは同じですから、今すぐではないが、NAOと持っている機能と同じものを装備することができます。人との対話や感情認識の部分も互換性があります。コミュニティを作っていて、その中でアプリが作られれば、ロボットが人のために何かできるようになります。そうしたロボットが増えていけば、より多くの人に貢献できるようになります。なぜ人型なのかという質問がありましたが、とにかく、人々との対話をできるだけ効果的に行うためには人型なのです。ポジティブな感情を持ってもらうためです。動物にも愛情を抱くことはありますが、人型の方がより育めるからです。
孫:
25年前からなんとかロボットに心を持たせたいという思いがあり、それが今回、COCORO SBというクラウドサービスを提供することで新たな進化が生まれ、共同でやることによって進化が加速するのではないかと。
コヤマ:
クラウドは月額制ですか?
孫:
それはある程度かかりますが、どれくらいにするのか、そういうサービスにするかは開始の2月までに詰めていきたい。
コヤマ:
NAOとの互換性は、NAO向けが使えて、逆もいけるということですか?
ブルーノ:
その通りです。もちろん形は違いますが、基本アプリは同じで、双方互換性があります。今すぐにPepperに導入できるわけではありませんが、調整すれば使えます。
日本テレビ 安藤:
「25年間夢見ていた」とツイートしていましたが、25年前に夢を見たきっかけは?
孫:
潜在的な意識は、子どものころに見た鉄腕アトムです。アトムが空を飛び、100万馬力で悪者をやっつけるのに胸を躍らせ、学校から急いで帰ってきてアニメを見ていたのを覚えています。ただ、アトムは涙を流せない。心がないからわからない。痛いとか悲しいとか嬉しいとかがわからない、という話があったと思います。それってかわいそうだなと、子どもなりに思い、いつか大人になったとき、ロボットがそういうことを理解できればいいなと思いました。ソフトバンクを創業してコンピュータに触れるようになって、CPUの能力もメモリ容量も通信機能も進化していく中で25年ぐらい前に、PCのはるか先、一番難しいことである“感情”にも挑戦したいと。
僕なりの理論では、人々の感情を数値化することは可能なはずだ、とその時に思ったんです。人間が理解できるということは、コンピュータにも理解できる。そうなるはず。ロジックを考え始めて、チップや通信、クラウドなど要素技術が出てきて、とうとうロジックと技術が揃って実現できるときが来た。ブルーノとの出会いで、体もロボットとして用意できる。今こそ挑戦するときだと思いました。
日本テレビ:
Pepperという名前の由来、込めた思いは?
孫:
いろんな名前を議論して何百も候補を出しました。コードネームは「太郎」で、ちっちゃな男の子を育てるように、心を込めて作った。でも、世界に提供したいということで、日本的な名前よりは世界中の人々が覚えやすくてでもちょっと変わっていて、ということで絞り込みましあt。
毎日新聞 横山:
Pepperはソフトバンクショップなのかオンラインなのか、どこで販売していくのですか。また、赤字からスタートするということだが、ロボット事業をどういう方向へやっていきたいのか。通信やスマホ事業との関連性も含めて教えて下さい。
孫:
ソフトバンクショップは全国に数千あって、どこででも買えます。ショップの大半には毎日ある状態になる予定で、順次、店舗数は拡大します。ネットカンパニーですから、ネットでも注文できます。まずは日本からスタートして、ある程度こなれたら世界展開もやっていきたい。最後まで赤字で行こうと考えているわけではなく、今は台数が少ないので製造コストより売値が安くなるが、事業として成り立つようにと考えています。ソフトやアプリ、コンテンツ、色んな形で利益も出るようにしていきたい。通信はWi-Fiを通じていろんなクラウドとのリアルタイムのやりとりが行われますが、Wi-Fiだと家の片隅で信号が弱かったりするので、ソフトバンクの得意とするLTE通信チップも近いうちに載せていきたい。
Q:
Googleがロボットベンチャーを買収して商用化を狙う中で、市場が立ち上がる前に先んじて事業を開始したタイミングについて。Foxconnとの連携の意義について、よりハード展開を加速される考えがあるのでしょうか。
孫:
Googleの狙いは我々とちょっと違うのではないか。彼らはより産業用の、生産性のあるものを求めていて、コストももっと高いモノだと思います。我々は生産性というよりは家庭の中やお店で人々を楽しませたい。というところに力点を置いています。だからこそ感情認識エンジンを積み込んでいます。ソフトバンクはグループ会社でもゲームとかやってるように、エンタメにも力を入れているので、そういう観点からは違いがあると思います。感情認識および自立的感情を持つことについては、特許を100件以上出願済みです。単によその会社のロボットを見よう見まねで後追いでやったのではなく、独自の特許をたくさん出願しているという立場にあります。
Foxconnについては、周辺機器やアクセサリではすでに取引があり、Yahoo!BBのモデムもFoxconnで作っていて、長いパートナーシップがあります。今回、本格的なロボットへの参入で、Fxconn以外に考えられないということで製造パートナーになっていただきました。PCやスマホなどを自分で作りたいということではありません。
インプレスWatch 太田:
海外展開と、クラウドによる集合知で成長が加速するというお話ですが、海外のユーザーの利用の仕方も反映されるのでしょうか、それとも各国で分かれているのでしょうか。また、開発者向けのSDKではどういったことができるのでしょうか。
孫:
海外展開は順次。それぞれの国で習慣が違うので、その国に力点の置かれたものは国に当てはまるようにするが、笑顔は何人でも笑顔だと思うし、悲しんでいるトーンは何語でも同じトーンだと思う。言葉の内容より声のトーンや表情がより感情に近いというのが我々の研究結果で分かっているので、直感的な感情は国をまたいでいけるのではないかと思います。集合知とローカル、家庭のローカルと国のローカルと、それぞれを含めて集合知を合わせていきます。
ブルーノ:
SDKですが、NAOqiという専用のOSがあり、すべての感情認識機能に埋め込まれています。開発者会議を9月に行うことになっているので、どのようなことができるか、何の可能性があるのかを説明します。また、アトリエを開設するので、来てくれれば何ができるか、どんなツールが利用可能かも知ってもらえます。
孫:
人の心を和ませたい、寄り添いたい、その思いが融合して、こうして人類初の感情を持つロボットができたと思っています。多くの部分はアプリで作られていて、その中での会話、言葉という限られた中での認識です。これは小さな一歩ですが、人工知能はクラウドになるので、シナリオによらないフリートーク部分も、銀座や表参道のショップでぜひ試して下さい。100%の会話のやりとりはできないが、会話として7割~8割は成立します。そこに感情認識というものが芽生え始めています。1歳2歳の子どもは「愛」といわれてもわからないけれど、嬉しいとか悲しいとか、嫌がるという認識はできます。我々の感情認識でいえば、最低、そのレベルに行きつつあります。完全認識はアプリの中で稼働させる形ですが、将来はフリートークでも感情認識ができるようになります。認識できるということは自我を持っているということ。幸せな感覚で育まれたPepperはより幸せに、寂しがらせるような家族で育ったPepperは寂しがり屋のPepperになるということです。
・つづき
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