超高速無線通信で映画などのコンテンツを秒速で送れる規格「TransferJet」
カメラやスマートフォンの性能が向上し、いまや「Xperia Z2」や「Galaxy S5」といったスマートフォンでも4K画質のムービーが撮影できるようになっています。しかしそうなると大変になってくるのが巨大なデータの取り扱い。現在はUSBケーブルやminiSDカードでやりとりするしかないデータのやりとりですが、東京ビッグサイトで開催されているワイヤレスジャパン2014の会場では、そんな面倒くささを解消してくれる日本生まれの規格「TransferJet」が紹介されています。
近接無線転送技術 TransferJet™規格対応IC | 専用IC | 東芝 セミコンダクター&ストレージ社
http://www.semicon.toshiba.co.jp/product/assp/transferJet/
TransferJet
https://www.transferjet.org/ja/
TransferJetの展示が行われている東芝のブース。他にも、同規格の普及を進めるTransferJetコンソーシアムのブースでも一部デモが行われています。
その高速性を垣間見ることができるムービーは以下から。HD画質で撮影したムービーデータ(容量17.6MB)を、TransferJetのチップを搭載した2台のデモ機間で転送しているのですが、端末を近づけた瞬間に転送が始まり、およそ1秒でデータのコピーが完了してしまいました。
TransferJetを使ったスマホ間での高速データ通信の様子 - YouTube
TransferJetの最大転送レートは560Mbpsまで対応、最大実効レートでも375Mbpsという高速性を備えた規格となっています。
ブースにいたコンパニオンのお姉さんをムービーで撮影し……
その端末を接続待ち状態の別の端末に近づけるだけで、あっという間に転送が完了しました。
TransferJetは中心周波数4.48GHz帯の電波を用いた通信規格の一つで、無線伝送距離は0~3cmという近距離に対応したもの。他の通信規格との比較は下図のようなもので、横軸が伝送距離、縦軸が通信速度を表しています。現在普及しているNFC(FeliCa)やBluetoothよりもはるかに高速な速度を備えていることがわかります。Wi-Fiと比較すると速度はほぼ同等、距離は全くかなわないものとなっていますが、これはTransferJetは近距離での通信を目的に策定された規格であるため。逆に電波の出力が抑えられている分、混信がほとんど発生しないという特徴があり、Wi-Fiよりも手軽な接続設定や接続時のレスポンスの速さが、TransferJetのメリットとして紹介されていました。
このデモ機は2007年頃に策定された規格に基づくもので「560Mbps・タッチ1秒47Mバイト」という高速性能を備えていますが、現段階で定められているロードマップでは、2015年には「2Gbps・タッチ1秒250Mバイト」、そして2017年には「10Gbps・タッチ1秒1.25Gバイト」という非常に高速な通信規格にまで高められることになっています。
短期間に大量のデータをピンポイントに届けることができるということで、スマートフォン同士やPC間との通信はもちろん、公共の場で情報やコンテンツを送受信する用途にも向いているとされています。
そこで考えられている構想の一つが、「デジタルKIOSK」というコンテンツ提供システムです。
デジタルKIOSKには販売用の映画ソフトや各種コンテンツが収められており、ユーザーはスマートフォンを上に載せることでデータを購入することができます。
スマートフォンの画面上で決済が完了し、データのダウンロードがおよそ5秒で完了。「OK」を押してスマートフォンを手に取ると……
購入した映画をスマートフォン上で見ることができるようになりました。将来的には、このような端末を空港などにも導入して、フライト前に気軽に映画を購入して機内で楽しむことができるようになる仕組みも検討しているそうです。
なお、TransferJet対応の機器はすでに市販が開始されており、USB端子などに挿してデータを送受信できるTransferJetのUSBアダプターや、チップを内蔵したカメラなどを家電量販店やネットで購入することが可能。USBアダプターの場合はバスの転送速度がネックになるために本来の性能を発揮するには至っていないとのことですが、簡単にデータをやりとりできる便利さが気になる人は試してみてもいいかもしれません。
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