サイエンス

「フロート式原子力発電所」で津波にも高い耐性をみせる原発をMITが考案


2011年に発生した東日本大震災による津波は東京電力の福島第一原子力発電所に極めて大きな被害をもたらし、いまだに本当の被害の実態は把握できていないほど。そんな中、マサチューセッツ工科大学原子力理工学部(NSE)のJacopo Buongiorno教授の研究チームは、沖合い5~7マイル(約8~11キロメートル)の海上に浮かぶ「フロート式原子力発電所」の構想を明らかにしました。この構想は、近くアメリカ機械学会(ASME)の小型モジュラー炉シンポジウムにおいて発表される予定となっています。

Floating nuclear power plants could avoid disasters like Fukushima | The Verge
http://www.theverge.com/2014/4/16/5620916/mit-floating-power-plant-concept-could-avoid-disasters

以下のムービーでは、Buongiorno教授がフロート式原発の概念を語る様子を見ることができます。

Floating nuclear plants could withstand earthquakes and tsunamis - YouTube


こちらがフロート式原発の概念を語るBuongiorno教授。津波の影響は陸地から離れるほど軽減されることから、沖合10キロメートル前後の洋上に原発を建設することで、福島第一原発のような被害を避けることができるとしています。


洋上に浮かぶイメージ図がこちら。洋上の石油プラットフォーム建設の技術をもとにしたもので、最上部にはヘリポートやクレーンが備え付けられています。


特徴的なのはこちらの断面図。原子炉や使用済み核燃料プール、発電機などの主な設備は全て海面よりも低い位置に配置され、海上部分は制御室や居住スペースなどに充てられています。フロート体は海底のアンカーとケーブルで固定され、発電された電力は海底ケーブルを通して陸地へと送電されます。


多層構造となっている海上部分は制御室などのほか、復水貯蔵タンクに多くのスペースが割かれている様子が見てとれます。この図を見る限り、放射能レベルが低い施設がまとめられている模様。


メインとなる原子炉は完全に海中レベルに配置され、圧力容器の周囲は海水とみられる液体で満たされています。教授は海水を「ほぼ無限大の冷却装置」として活用し、万が一の際にも常に炉心が冷却可能な状態とすることで、メルトダウンにいたるリスクを下げることができるとしています。また、人が住む陸地から離れることで、事故の際にも人びとの生活に与える影響が少なくなるとしています。なお、万が一の事故の際の海洋に与える影響についてはこの段階では語られていません。


海上原発については、ロシアが沖のすぐ近くに同様のフロート式原発を置く構想をうち出していますが、10数キロメートル離れたものはBuongiorno教授の構想が初めてのものとなります。

次世代のエネルギー政策については、Microsoftの元会長であるビル・ゲイツ氏が次世代型原子炉による発電を開発する企業「テラパワー」社を立ち上げるなど、世界でも原子力エネルギーに対する関心が集まっているという現状があります。フロート式原発はまだ構想の段階であり、具体的なプランはこれから検討が進められていくことになっています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
究極の地熱発電とも言われる「マグマ発電」が実現に向けて前進 - GIGAZINE

電力会社9社それぞれの現在の電力使用状況が一目でわかりやすいグラフ - GIGAZINE

「やぁ、ビル・ゲイツだけど何か質問ある?」ということで本人が降臨して次々と回答した全問答まとめ - GIGAZINE

世界最大の海洋温度差発電プラントが中国で作られる - GIGAZINE

激変する世界のエネルギー事情が簡潔に目で見てわかるレポートムービー2012年版 - GIGAZINE

最新型原子力発電所「AP1000」と東芝とアメリカの関係がよくわかるムービー - GIGAZINE

in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.