はたしてホテルのルームサービスの料金は高いのか?
By Will Merydith
ホテルの部屋に食事を運んでもらえるルームサービスは、旅先で疲れたときにはとてもありがたいものであり、またこの上なく贅沢な気分にさせてくれるものでもあります。もっとも、ホテルを離れてから料金を見てみると「こんなにもかかっていたのか」と思ってしまうこともありますが、この料金が相応のものかというと、むしろ安いぐらいなのだそうです。
Why Is Hotel Room Service So Expensive?
http://priceonomics.com/why-is-hotel-room-service-so-expensive/
世界で初めてホテルの部屋に配膳してくれる「ルームサービス」を提供したのは、ニューヨークのウォルドーフ=アストリアで1930年代後半のことでした。さまざまな料理を注文してから30分ほどで部屋まで届けてもらえるというルームサービスの概念は、当時、超豪華なサービスと捉えられたとのこと。その後、多くの高級ホテルがルームサービスの提供を開始して、1969年にはウェスティンホテルグループが24時間対応のルームサービスの提供を開始、宿泊客はたとえ午前4時であってもキャビアやロブスターという豪勢な料理を注文できるようになりました。
そして、現在では、四つ星ホテルではルームサービスの提供は標準的なサービスとして当然視され、アメリカにある5万件を超えるホテルのおよそ半数がルームサービスを提供しているとされます。アメリカホテル協会の報告書によると、ルームサービスの利用者の多くはビジネス客であるとのこと。
2013年、旅行ウェブサイトのトリップアドバイザーは、アメリカの各都市ごとにトップ10の四つ星ホテルのルームサービスで提供されている「クラブサンドイッチ」の価格を調査しました。その結果は次の表の通りです。
調査された150件のホテルのクラブサンドイッチの平均価格は約16ドル(約1650円)と、通常のレストランに比べると強気の値段設定となっていました。さらに、ホテルのルームサービスでは、この料理の価格に加えて一般的には5ドル(約520円)から12ドル(約1240円)の間で変動するルームサービス手数料が必要とされ、さらに税金がかかるためクラブサンドイッチの価格は実際には25ドル(約2600円)を超え、ホノルルのホテルであれば40ドル(約4200円)近い金額になるとのこと。もちろん、これはクラブサンドイッチに限ったことではなく、ルームサービスで注文できるすべての料理に高い料金が設定されており、ミルク一杯で20ドル(約2100円)することさえあります。
では、なぜルームサービスの料金はこんなにも高いのでしょうか。理由の一つは、ホテルが高い価格を取ることで差別感を出しているためです。豪華な夜を過ごすために400ドル(約4万2000円)という大金を支払う顧客であれば、ルームサービスが高くても気にしないはず。また、「時間をお金で買いたい」と考えている人なら、わざわざ食事に出かける時間を省いてくれるルームサービスへの対価を惜しまないでしょう。
二つ目の理由は、客に支払う意志があるということです。たいていの宿泊客は、疲れ果てた状態でホテルに到着します。そして、そのような客はたいてい空腹です。そのような状態で、土地勘のない旅先をうろついて食事する場所を探すだけの気力が残っていないことも多く、こんなときにはルームサービスはもってこいと言えるのです。
By cygnoir
しかし、24時間注文可能なルームサービスの料金設定は客の足元を見たものではなく、高いと感じるのならばそれは無知に起因するもので、大きな誤解だという指摘もあります。
PKFホスピタリティリサーチのロバート・マンデルバウム氏によると、一般的なホテル収益に占めるルームサービスの収益はわずか1%に過ぎないとのこと。ホテル1部屋のルームサービスによる平均収益は、2007年には1150ドル(約11万9000円)だったのが2013年には866ドル(約8万9400円)にまで下落しており、1日の利益に換算するとわずか2.37ドル(約250円)という微々たるもの。マンデルバウム氏は、「ルームサービスはホテルのプールに似ています。利用するのは10%の人だけで残り90%の人は利用しないにも関わらず、プール付のホテルに泊まりたいと考えるものなのです」と話しています。
By Mac Hotels
ニューオーリンズの高級ホテルで働くジェーコブ・トムスカイ氏は、「キッチンを夜通し使える状態に維持し、従業員の眠気をカフェインで取り払い、夜通し働くことを強いるために必要なコストは、午前4時に揚げ物を注文する酔っ払った宿泊客のルームサービス代金ではとうていまかなえるものではない」と話し、24時間のルームサービスはホテルにとって経済的に割に合わないと考えています。
では、経済的に見合わない24時間のルームサービスを、どうしてホテルは取りやめないのでしょうか。その大きな原因は、過当競争です。多くの旅行ガイド誌やホテルの格付制度は、四つ星・五つ星の資格としてルームサービスを提供していることを要求しています。ルームサービスのあるホテルとルームサービスのないホテルであれば、圧倒的に前者の方が求められていることから、ホテルはルームサービスをやめるわけにはいかないとのこと。まさにチキンレース状態というわけです。
By Neil Moralee
しかし、2013年にニューヨークで2番目に大きなホテルであるヒルトンミッドタウンは、高い人件費と安定しないオーダーによる不採算性・非効率性を理由に、2000室すべてでルームサービスの提供を中止する決定をしました。そして、ルームサービスをやめる代わりに、24時間セルフサービスで使える冷蔵庫「Herb n’ Kitchen」を導入しています。また、ホテルの宿泊客に対して、ホテルの近くのレストランの豊富なメニューの中から好きな料理を注文して部屋に届けてもらえる「Moving Menus」という新しいサービスを導入する試みも始まっています。
オムニホテルのデビッド・モーガンCEOは、「ルームサービスは将来的に消えていくだろうと思います。今、明確な変化の兆しがあります。多くのホテルが新しいサービスを導入しています。新サービスへの切り替えでお客様に余計な費用負担が生じることはありません」と話しています。
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