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単語が目に飛び込んできてすごい速度で文章を読めるようになる「Spritz」


ネットや本などで文章を読んでいても、なかなかスラスラとテンポよく読み進められなかった経験をしたことがある人も多いはず。一般的に、日常で言葉を話すスピードに比べて文章を目で追って読むスピードは遅くなってしまうというのがその原因なのですが、逆転の発想で文字を次々に表示させ、まるで話すようなテンポで文章を読み進めていけるようにする技術が「Spritz」です。

Spritz
http://www.spritzinc.com/

Spritzを使い、1分あたり250ワード(250wpm)というスピードで文章を表示させてみたイメージがこちら。もとの文章に沿って文字が次々に表示されていくために、読む側は視線をまったく動かすことなく読み進めることができます。


サイト内の各ページには以下のようなアイコンが設置されており、クリックするとページ内の文章をSpritz画面で表示させることが可能になっているので、いろいろと試しに読んでみるのもいいかもしれません。


なお、Spritzでは文字の表示スピードを調節することも可能です。500wpmだとこのぐらいのスピードになり、初めて目にした場合にはほとんど追いつけない状態に。しかし、何度か見ているうちに目が慣れてきて、次第に判別できるようになってきます。


Spritzはいわば「テキスト・ストリーミング」と呼べる方法で単語を表示させて文章を読むスピードを上げ、コミュニケーションのクオリティを上げることを狙いとしたサービスです。アメリカ・ボストンに拠点を置くベンチャー企業が約3年間の期間を経て開発した技術で、その開発には文章読解方法論の専門家やソフト開発のエンジニアが携わっています。

紙やディスプレイに表示された文章を読む時は、眼球が文字列を追いかけながら単語を認識して意味をくみ取っていきます。この従来の方法では、文章を読んでいる時間のうち実に80%が物理的に眼球を動かすことに費やされており、実際に文章を読解する処理には20%の時間しか充てられてないことが明らかになっています。


言い換えれば、視線を動かして単語を取り込む作業に費やす時間が理解全体のスピードを遅くしているということになります。そこでSpritzでは、文字を次々と表示させることで眼球を動かす必要をなくし、より効率的な読解を可能にするという技術を開発しました。これは以前から存在している「速読」などとは全く異なったアプローチとなっています。

カギになっているのは、表示する文字数を「13文字」に限定していること。人間の目が一度に認識できるのは13文字程度という研究結果が出ており、それ以上になると視線の移動が始まることが明らかになっています。これは、例えばYahoo!トップページのニュースの見出しは下記イメージのように13文字以内で作成されていることにもつながっています。


また、単語中の一文字だけ色が変更されていることも理解のプロセスを高速化するためのポイントとなっています。ある単語を目にしたとき、私たちは気づかないうちに単語の一部分に視点を合わせ、脳の理解を開始させるというプロセスを行っています。この視線を合わせる位置はORP(Optimal Recognition Position:最適認識位置)と呼ばれ、単語ごとに異なっているのですが、Spritzはその文字に色をつけて視線を誘導することで、より速い単語認識を起こさせるという手法を採っています。


さらに、デジタルならではの手法も併せて採られています。このORPは、単語の文字数が長くなるほどセンター位置から左へとシフトする傾向にあります。Spritzではその位置を画面上の一点に固定して表示させることで、より負担の少ない文字認識を可能としています。下図のFigure 1では、従来の「速読」で文章を読んだ時のモデルを示したものですが、ORPの位置が左右に細かく移動しているのに対し、SpritzではFigure 2のように一定の位置に表示させて視線移動をより少なくしていることがわかります。


今後は、アプリケーションでのサービス提供やウェブサイトへの埋め込みキット、さらにOSやソフトとの統合を進めてウェアラブルデバイス上での動作などの展開を検討しているとのこと。実際に、2014年2月に開催されたモバイルワールドコングレス(MWC)の会場では、サムスンの新製品であるGalaxy S5Gear 2にSpritzが搭載されることが発表されています。

Spritz Reinvents Reading on Mobile Devices, One Word at a Time -- BARCELONA, Spain, Feb. 23, 2014 /PRNewswire/ --
http://www.prnewswire.com/news-releases/spritz-reinvents-reading-on-mobile-devices-one-word-at-a-time-246756751.html

2014年2月末時点で対応している言語は英語・ドイツ語・フランス語・スペイン語・ロシア語となっています。日本語は含まれていませんが、文法が近いとされる韓国語の開発が進められているということなので今後の対応に期待したいところです。

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in ソフトウェア,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

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