無人で貨物を運搬する「ドローン輸送船」をロールス・ロイスが開発中
Amazonが倉庫の従業員をロボットと置き換えたり、無人機を飛ばして配送する計画を明かしたりしていますが、高級車や航空機用ジェットエンジンのメーカーであるロールス・ロイス社はさらにもっとスケールアップした計画として、海上を航行する無人の「ドローン輸送船」の開発を進めていることが明らかとなりました。
Rolls-Royce Drone Ships Challenge $375 Billion Industry: Freight - Bloomberg
http://www.bloomberg.com/news/2014-02-25/rolls-royce-drone-ships-challenge-375-billion-industry-freight.html
ノルウェーにあるロールス・ロイス社の「ブルー・オーシャン」プロジェクトの開発チームのオフィスには、360度ビューを再現したシミュレーターのプロトタイプが設置され、海上を航行する船舶から送られた映像やデータなどの表示がシミュレートされています。同社の構想では、将来は陸上に設置された「バーチャル艦橋」から何百隻という輸送船を集中制御するということが想定されており、未来のブリッジは以下のようになるようです。
Rolls-Royce presents the future of tug bridge controls - YouTube
FedExやDHLなどに代表される航空貨物輸送が拡大している中においても、船舶による海上輸送は世界の輸送量の90%を占めており、同社は3750億ドル(約38兆円)とも言われる海上輸送の市場において、安全で安く、環境汚染も少ない輸送方法としてドローン輸送船の開発を進めている、ということになります。
同社のオスカー・ラベンダー副社長は「技術的側面から見れば、すでに実現可能なレベルです。ここ10年の間にバルト海のような海域で運用が開始されることになると思いますが、規制のハードル、業界と組合からの反対意見があるために世界規模での展開には時間がかかるでしょう。あとは海運業界がゴーサインを出せば、いつでも実行に移ることができます」と述べています。
ドローン船には、乗組員が住む居住スペースやそれに付随する電力、空調、水回りなどの設備が不要になり、搭載できる貨物の量を増やすことが可能。船体重量は5%程度カットでき、運行にかかる燃料コストも12%から15%節約できるとしています。
By David Wallace
この動きに対し、当然のように各方面からは反対や疑問の声があがっています。世界最大の船主団体である国際海運会議所のスポークスマンであるサイモン・ベネット氏は「現行の法律の多くでは、船舶の運航の際の最小人員数を定める規定が存在しており、無人輸送船は、これに照らし合わせると違法ということになります」とコメント。国連の専門機関の一つである国際海事機関(IMO)のスポークスマンは「船舶が登録されている国が、その海域内で船舶を管理し、国際法を遵守させる責任がある」としています。IMOの規則は戦闘用の船舶と漁船を除いて国際的に運航され、重量が500総トンを越える船舶に適用されると規定されています。
船舶保険の90%をカバーするP&Iクラブの国際グループの役員であるアンドリュー・バルドー氏は「無人船舶がIMO規則に沿っていないと判断される以上、運用には適していないと判断され、保険の適応を受けることはできません」と語っています。さらに、船舶の組合員の450万人以上が加盟する国際運輸労連は「プロの乗組員が持つ人の目や耳、思考プロセスをドローンに置き換えることはできません。海上で故障した場合や想定外の事態が発生した際にまず頼れるのは人でしかありません」と反対の立場を明確にしています。
By Greg Bishop
これに対しロールス・ロイス社では「ドローンへの移行は緩やかに進むと考えています。まずはコンテナ船やドライバルク船といった分野から進むものと考えています。石油や液体ガスなどの危険物を運ぶようなタンカーのドローンへの移行は時間がかかるとみています」と語っています。
同時に、ドローン船は海賊対策についても有効であるとロールス・ロイス社では考えています。捕虜にする乗組員がそもそも存在していないため、人命を危険にさらすリスクが低下し、貨物に被害が及ぶ可能性を低くすることが可能としています。
By Earl
船を運行させる全体のコストのうち、乗組員にかかるコストは約44%を占めると言われています。ロールス・ロイス社では、運行にかかる人員を削減することで運行コストを下げることが可能とし、離れたリモートオフィスで船を操縦する船長、機材の修理や積み荷を取り扱う港湾作業者などの人員に対しても、海上で長い期間を過ごさざるを得ないことと比較してよりよい生活の質を得ることができると語っています。
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