サイエンス

クローン羊「ドリー」誕生から30年、クローン技術はどれくらい進んでいるのかについて専門家が解説

By Toni Barros

世界初の哺乳類の体細胞クローンである雌羊「ドリー」は1996年7月5日に誕生しており、2026年で誕生30周年となります。そんな現代においてクローン技術がどれくらい進んでどのように活用されているのかについて、メルボルン大学でがん科学およびデジタルヘルス分野の学術専門家兼上級講師を務めるサタナ・ドゥシャンテン氏が解説しています。

30 years since Dolly the sheep was born, where is cloning technology at now?
https://theconversation.com/30-years-since-dolly-the-sheep-was-born-where-is-cloning-technology-at-now-285886


動物のクローン作成のほとんどは「体細胞核移植」と呼ばれる技術を用いて行われます。体細胞核移植では、生殖に関与しない細胞を動物の体から採取し、DNAを含む細胞核を取り除きます。ドリーの場合、ドナー細胞は乳腺から採取されました。次に、別の動物の卵巣から卵子を採取し、その核も取り除きます。最初の細胞の核は電気パルスを用いて卵子に挿入され、融合した卵子が胚へと発育し始めると、代理母となる動物の子宮に移植されます。その結果生まれた動物の核DNAは、元のドナーとほぼ同一となります。

ドリーのクローン作成には277回の試行が必要だったとされており、ドゥシャンテン氏によると、現代でもクローンが1つ成功するごとに多くの再構築胚が発育に失敗する可能性があるとのこと。また、クローン作成には依然として特殊な装置やドナー細胞、卵子、代理出産が必要であり、費用がかさみ規模拡大も困難であることから、哺乳類のクローン作成は依然として非効率的であるそうです。

また、クローン技術における最大の課題は遺伝子を複製することではなく、「エピジェネティック・リプログラミング」と呼ばれる生体細胞の初期化です。細胞には遺伝子だけではなく、環境や経験も成長や行動に影響を与える要素として刻まれており、DNA配列そのものではなく、どの遺伝子を働かせるかという情報も細胞には記録されています。そんな生体細胞に特殊化した役割を忘れさせ、受精直後の胚のように振る舞わせるリプログラミングは難しく、初期化が不完全であることが多いため、多くのクローン胚は正常に発達しません。


クローン技術は優れた遺伝子、高い生産性、病気への抵抗力といった貴重な特性を持つ動物を繁殖させるために、畜産業界で使われることもあります。オーストラリアでは馬のクローンを作ることが認められており、血統の保存や絶滅危惧種の遺伝子保存、優れた競技馬をスポーツで活躍させるなど、さまざまな分野で活用されています。また、中国やアメリカなどの国々では猫や犬のペットクローンが商業的に提供されています。ただし、クローンペットには潜在的な健康リスクや倫理的な問題なども指摘されています。

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また、2018年には中国科学院の研究チームが、ヒトと同じ「霊長類」に属する動物として初めてのクローンとなるほぼ同じ遺伝子を持つカニクイザルのクローンを誕生させたことを発表しています。2024年にも中国の研究者たちは世界で初めてアカゲザルのクローン化に成功しており、霊長類のクローン化により人類の健康・医療に貢献することが期待された一方で、動物愛護活動家からは倫理的な懸念も表明されました。

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そのほか、絶滅危惧種の個体数回復を支援することもクローン技術の有望な用途の1つです。アメリカ魚類野生生物局は2020年に、北アメリカに生息する絶滅危惧種のクロアシイタチ2匹のクローン化に成功したことを発表しました。一方で、クローンを作るには完全なゲノム、適切な卵細胞、近縁の代替種が必要なため、遺伝子が損傷していることが多い数千年前に絶滅した古代種などを復活させることはほとんど不可能であるとドゥシャンテン氏は指摘しています。ただし、絶滅した動物の特徴の一部を現存する近縁種に取り入れるような研究も進んでいます。


クローン技術は絶滅危惧種の失われた遺伝子を回復させるのに役立つ可能性がある一方で、遺伝的に類似した動物を過剰に生産すると、病気に対する脆弱性が高まる可能性があります。また、動物クローンの失敗率は高く、胚・代理母・クローン動物に容認できないリスクが生じることもあります。そのため最初のクローン動物「ドリー」から30年たった現代でも、ヒトクローンは依然として実現不可能であり、倫理的懸念も含めて多くの国で禁止または厳しく制限されています。

ドゥシャンテン氏は「ドリーが誕生してから30年、ドリーのクローン技術から得られた知見は、疾病研究、農業、そして自然保護の分野を大きく進歩させてきました。しかし、クローン技術は依然として難しく、安全性、規制、そして一部の用途をそもそも追求すべきかどうかといった疑問が依然として提起されています」と語っています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1e_dh

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