木星の衛星「エウロパ」の表面から水の噴出を観測、地球外生命体発見へ一歩前進
天文学の父と呼ばれるガリレオ・ガリレイは、木星の衛星である、イオ・エウロパ・ガニメデ・カリストを発見した人物でもあります。このうち、氷に覆われた“氷衛星”のエウロパで、宇宙に向けて噴き出している水が観測されました。これにより、エウロパの氷で覆われた外殻の下には液体の水でできた「海」が存在している可能性が強くなり、この海の中には地球外生命体が存在するのではないかと考えられます。
First water plume seen firing from Jupiter moon Europa - space - 12 December 2013 - New Scientist
http://www.newscientist.com/article/dn24743-first-water-plume-seen-firing-from-jupiter-moon-europa.html
Hubble discovers water vapour venting from Jupiter’s moon Europa | Press Releases | ESA/Hubble
http://www.spacetelescope.org/news/heic1322/
Hubble Sees Evidence of Water Vapor at Jupiter Moon - NASA Jet Propulsion Laboratory
http://www.jpl.nasa.gov/news/news.php?release=2013-363
エウロパから大量の液体の水が噴出している様子を観測したのは、NASAのハッブル宇宙望遠鏡。大量の水が噴出していることから、氷の外殻の下には液体の水が存在している可能性が高まりました。
これまでも木星とその衛星の探査は行われてきました。特に有名なのは宇宙探査機ガリレオで、1995年から2003年まで木星とその衛星を探査し、エウロパの地表にある無秩序な隆起・断層・割れ目などを見つけています。これらの情報からは、エウロパの外殻が比較的薄く、表面が開いたときに地下から水が噴き出すことで氷に覆われた状態になっているのではないかという推測が成り立ちます。しかし、ガリレオの探査期間中に水が噴き出す瞬間は観測できず、水の存在の有無は謎のままになっていました。
今回、ハッブル宇宙望遠鏡が捉えたのは、エウロパの南極側で立ち上る水蒸気の大きな雲。地表から水の柱が約200kmの高さまで立ち上っていて、その水の噴出量は毎秒3000kgにも上ることが判明しました。
「これは大きな発見だ」と言うのは、カリフォルニアのマウンテンビューにある地球外生命体の発見を目的とする非営利団体SETI協会のシンシア・フィリップス氏。「もし水が噴出していたのならば、そこには液体の水が存在するということで、地表からかなり近いところにあるはずです」
「ガリレオの探査で水柱を観測できなかったのは、水柱の噴出が断続的なものだから」と語ったのはサウスウエスト研究所のローレンス・ロス氏。木星の引力により小さな衛星は押しつぶされたり伸ばされたりしていますが、エウロパも同じように木星の影響下にあるので、エウロパが木星から最も遠く離れたときにだけ裂け目が開いて水の噴出が起きるようになっていて、ガリレオはそのタイミングを逃したのではないか、というのがロス氏の推測。
ガリレオが水柱を観測できなかったもう1つの理由は、可視光線を使用して観測を行っていたからだとロス氏。もしもエウロパで観測された水柱が、噴出時にはチリや氷を巻き上げず、水蒸気のみ噴き出していたとすれば、それを可視光線のみで捉えるのは非常に難しいとのこと。その点、ハッブル宇宙望遠鏡は、肉眼では捉えられない領域の光(紫外線など)も撮影可能なので、水柱の発見ができたのではと示唆します。
エウロパの外殻下にある液体層の中は生命体が存在する可能性が非常に高いので、これを探り「地球外生命体が存在するかどうかを調べること」は宇宙探査のロマンと言っても過言ではありません。実際に、欧州宇宙機関の探査機「JUICE」や、NASAの探査機「Juno」では、現在木星探査のために着々と準備が進められており、これらはエウロパの水柱を近くで観測できるかもしれません。さらに、これらの探査機が実際に水柱の一部を採取できたならば、エウロパの地表に降りてドリルで地盤を掘るなどの面倒な作業をせずに、外郭下にある液体層のサンプルを得られることになり、ここで初めて「未知との遭遇」が起きるのかもしれません。
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