映画

建築家の視点であの映画の名シーンを分析してみるとこうなる

By phantom of the flicks

建築家の独特な視点から有名な映画のシーンを分析し、通常の映画評論家とはひと味違う批評や分析を公開しているのが「Interiors」です。Interiorsが分析した数々の映画の中から、ダークナイトやロスト・イン・トランスレーションなどの作品をピックアップして、どのように評価されているかを見てみました。

Interiors
http://intjournal.com/

◆1:ダークナイト(原題:The Dark Knight)

By lamazone

クリストファー・ノーラン監督のダークナイトは、ジョーカーの率いる一味が銀行強盗をするシーンから始まります。銀行強盗のメンバー1人1人には、ジョーカーからタスクが与えられていて、メンバーがタスクを完遂すると他のメンバーに殺されます。メンバーの殺害を含めて、全てジョーカーの作戦通りだったわけですが、Interiorsによると、銀行強盗シーンでに階段や机、椅子の配置を含む空間デザインがジョーカーの極悪な作戦をアシストしていたとのこと。

銀行強盗シーンの撮影に使用されたのは、シカゴにある古い郵便局。Interiorsが調べたところ、映画に出てきた「パーテーションで区切られた、銀行支配人のオフィス」「メインロビーに設置された5つの立ち机」が、実際の郵便局にはなく、撮影のために設置されていたことがわかりました。追加で設置されたオフィスやデスクは、映画の中で、銀行強盗のメンバーの1人がパーテーションの裏に隠れていた銀行支配人に殺されたり、ジョーカーが銀行支配人の銃撃をデスクに隠れてしのぐ、といったような使われ方をしています。

By Daniel Sempértegui

銀行強盗のシーンは、多くの映画で取り扱われる定番のシーンの1つですが、ダークナイトの銀行強盗は他のものと少し違います。何が違うかというと、他の映画の銀行強盗シーンは通行人など銀行の外の世界を巻き込むケースが多い反面、ダークナイトでは銀行の中と外の接触が一切ありません。

Interiorsは「ダークナイトの銀行強盗のシーンは『銀行という建築空間をどうやって過酷な環境に変えるか、また、ジョーカーが計画したカオスなプランをどのようにして描くか』ということに挑戦している」と評価しています。

◆2:セブン(原題:Seven)

By jamesb

デヴィッド・フィンチャー監督のセブンは、連続猟奇殺人を描いた1995年の映画。次々と発見される遺体には「GLUTTONY(暴食)」や「GREED(強欲)」など七つの大罪にちなんだ文字が残されていました。5番目の遺体が警察に発見されたところで事件の犯人は自首し、刑事を残り2つの遺体の場所に案内します。

Interiorsが、犯人が刑事たちを残り2つの遺体の場所に案内する、というセブンのラストシーンを分析したところ、撮影された現場は鉄塔が数個ある、だだっ広い荒野であり、映画に映っていたいくつもの鉄塔や送電線などはフィンチャー監督によってCGIで付けたされていたことがわかりました。鉄塔や送電線が入ることによって、荒野がより産業的な雰囲気を含んだシーンに変わっています。

By Tony Hoffarth

また、ラストシーンの一部には「刑事が遠くから向かってくる自動車を見つける」というショットがあるのですが、Interiorの調べによると、「刑事たちが立っていた場所からは自動車が映画のように見えるとは考えがたく、別の場所で撮影したものと思われる」とのこと。しかしながら、その後の、「自動車が刑事の元にやって来て荷物を置いていく」というシーンは別の場所で撮影したものではないことがわかっており、フィンチャー監督はビジュアル的にインパクトをつけるために、「刑事が遠くから向かってくる自動車を見つける」というシーンを別撮りしたのではないか、とInteriorsは述べています。

◆3:ロスト・イン・トランスレーション(原題:Lost in Translation)

By Filipão 28

2003年に公開されたソフィア・コッポラ監督の作品「ロスト・イン・トランスレーション」は、2人のアメリカ人の男女が、言葉の伝わらない日本で出会うというストーリー。Interiorsによると、既婚者であるにも関わらず2人がホテルの同じベッドに横たわって一緒にテレビを見る、というシーンがありますが、性的な印象を全く受けなかったそうです。

このシーンは、1人ずつの個別ショットを挿入しながら、ベッドの上の2人を上から見下ろすような形で進んでいき、2人は話をしながらベッドの上であおむけになったり横を向いたりして、だんだん仲良くなります。Interiorsは、ホテルの中というシチュエーションにも関わらず、性的な印象を観客に与えないで、男女の友情を描ききったコッポラ監督の手腕を評価。


◆4:2001年宇宙の旅(原題:2001: A Space Odyssey)

By Bill Lile

2001年宇宙の旅の監督であるスタンリー・キューブリック監督が「この映画は『nonverbal experience(非言語的経験)』である」と言及している通り、2001年宇宙の旅の3分の2以上のシーンは音声がなく、映画のオープニングとエンディングシーンにさえ音声は含まれていません。Interiorsが分析したのは、映画のラストの「宇宙飛行士のデイブがきらびやかな光の流れる幻想的な空間を超えて、突然真っ白な部屋に到着する」というシーン。

宇宙飛行士が到着した真っ白な部屋は、古典建築風のデザインで、壁にはルネッサンス期の絵画が飾られています。部屋の中にはベッドが1つと数個の椅子、また、白く光る床も印象的。この部屋で、デイブは年老いた老人が食事しているのを発見。老人がデイブの方に顔を向けるとデイブはもう消えていて、老人の顔から老人が未来のデイブであることがわかります。食事を続ける老人が、ベッドに目を向けると、そこには死にかけの老人が横たわっています。この老人も未来のデイブであり、Interiorsによると、このシーンは3人のデイブを、画面を切り替えながら見せることで「時間の進行」を表現。

By Wonderlane

最終的にデイブは「光る胎児」に生まれ変わるのですが、白い部屋に飾られていたルネッサンス期の絵画は「転生」を意味しており、キューブリック監督の映画への細かいこだわりが垣間見えるとのことです。

Interiorsの映画分析からは、普段何気なく見ている映画のシーンを別の視点から見ることのおもしろさが伝わってきます。

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in メモ,   映画, Posted by darkhorse_log

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