サイエンス

GPSの物理学、なぜナビに相対性理論が必要なのか?


GPS(全地球測位システム)は衛星から届く電波の到達時間を距離に変換し、その組み合わせから現在地を求める仕組みです。ところが、この仕組みを実用的な精度で動かすには、単に距離を測るだけでは足りず、時計の誤差や衛星の配置、さらに相対性理論を用いる必要があると、ソフトウェアエンジニアのシュリ・カルパダ氏が解説しています。

The Physics Of GPS | An Interactive Exploration
https://perthirtysix.com/how-does-gps-work

GPSの基本はとても単純で、衛星が送った信号をスマートフォンが受け取り、その間にかかった時間に光の速さを掛けて衛星までの距離を算出します。GPSは時間を距離へ変換する技術といえます。

ただし、1機の衛星から距離がわかっても、利用者がその衛星のまわりのどの方向にいるのかはわからず、地表上の位置はあくまでも衛星を中心とした円に絞られるだけ。


ここに2機目の衛星を加えると候補は2点まで減り、3機目を加えるとそのうち1点に定まります。これが三点測量と呼ばれる仕組みです。


しかし、ここで大きな問題になるのが時計です。GPS衛星は誤差約1ナノ秒という非常に高精度の原子時計を積んでいますが、スマートフォン側はより安価な水晶発振器を使っているため、誤差がマイクロ秒単位まで膨らんでしまいます。もし1ナノ秒の誤差が生まれれば位置の誤差は0.3m、100ナノ秒だと30mもの誤差につながります。

このため、GPS受信機は4機目の衛星を使って、自分の時計がどれだけずれているかを同時に解きます。4つの測定結果が1点で交わるように時計補正を求めることで、距離の計算をまとめて修正し、ぼやけていた位置がはっきり定まるというわけです。


ここで必要になるのが、アルバート・アインシュタインが提唱した相対性理論です。相対性理論では時間は絶対的なものではなく、観測者の速度や重力環境によって変化する相対的なものだと考えられています。

地球周回軌道上にある衛星は時速約1万4000kmで動いているため、時計が1日あたり約7.2マイクロ秒遅れますが、高度約2万kmの弱い重力下にあるため、一般相対性理論の効果で約45.9マイクロ秒進みます。つまり、衛星の時計は差し引きで1日あたり約38.7マイクロ秒だけ先行することになります。


この38.7マイクロ秒のずれはごく小さいようでも、光は1マイクロ秒で約300m進むため、補正しなければ位置は1日で約10kmずれてしまいます。そこで衛星の時計は地上にある段階で名目上の10.23MHzよりわずかに遅い10.22999999543MHzに調整され、軌道上でちょうど正しい速度で進むよう設計されています。

実際のスマートフォンは4機で止まらず、通常は8機から12機、場合によってはそれ以上の衛星を同時に利用し、アメリカのGPSだけでなくGLONASS、Galileo、BeiDouもまとめて受信します。さらに、衛星が空の一方向に偏ると交点があいまいになるGDOP(Geometric Dilution of Precision)や、都市部で電波が建物に反射して遠回りしたように見えるマルチパス誤差も問題になるため、受信機は見えている衛星の組み合わせを選びながら精度を高めています。


カルパダ氏は「つまるところ、ナビアプリが現在地を数m単位で示せるのは、光速、幾何学、精密時計、そしてアインシュタインの相対性理論が同時に働いているからです。GPSに相対性理論が必要なのは、理論を飾りとして使っているからではなく、補正しなければ短時間で実用にならなくなるほど時間のずれが現実の測位誤差として表れるからです」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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