ふりかけるだけでうまみを感じられる化学調味料は本当に体に悪いのか?
味の素で有名なうまみ調味料は、手軽に料理に「うまみ」を追加できる化学調味料ですが、多量の摂取により、健康に被害を与えるのではないか?という議論が昔から延々とされ続けているという側面もあります。そんな化学調味料が本当に体に悪いのかを研究した内容がまとめられ、ネット上で公開されました。
The Notorious MSG's Unlikely Formula For Success
http://www.buzzfeed.com/johnmahoney/the-notorious-msgs-unlikely-formula-for-success
ニューヨークを中心にレストランを展開しているmomofukuグループの創始者でありシェフでもあるDavid Changさんは、グループの一部として食品研究所を設けており、研究所のヘッドであるDan Felderさんと共に、カビや菌による食品の発酵に関心を寄せています。Changさんは、「もし発酵がなければ、私たちが1世紀以上も親しんできたビールや、チーズ、ミソ、キムチなどの発酵食品を食べられない悲しい世界で生きなければならない」と言います。
Davidさんたちは、日本のミソに目をつけ、ピスタチオ・レンズ豆・ひよこ豆などの豆類をすりつぶしてペースト状に「hozon」することで、日本の醤油に似た「tamari」が作れることを発見し、この製法を「bonji」と名付けました。彼らは、日本のかつお節を参考に「豚の削り節」を作り上げたりと発酵技術の研究に熱心ですが、その中でも特に、発酵によって得られる「うまみ」に注目。
研究所の棚にはさまざまな缶詰食品もあり、中には巨大な缶詰のMSG(グルタミン酸ナトリウム)として知られる化学調味料があります。MSGは食品の歴史で誤解され、害悪とされてきた成分です。しかし、研究所では、この3年間で缶詰の中で発酵した豆類の成分から純粋なグルタミン酸の分離に尽力を尽くしました。人間の舌はグルタミン酸を感じる味蕾を持っており、グルタミン酸を豊富に含む食品はおいしいと感じるため、うま味調味料は東アジアを中心に世界的に流通。Davidさんももともとは、自分のレストランでMSGを使用するのに反対であり、一時期は大好物であるキューピーのマヨネーズを個人的に使用するのはやめていたと言います。しかし、10年にわたるMSGの研究や科学により、MSGが健康被害を与えるという誤解が覆され始めているとのことです。
グルタミン酸は20種類あるアミノ酸の1種類であり、人体に必要な成分ですが、人体内で作り出すことが可能であるため、食品からの摂取は基本的に不要です。また、グルタミン酸は体内に存在し、脳内では反復学習と記憶に関する重要な神経伝達物質である微少な1000兆ものグルタミン酸塩として、ニューロンの刺激毎に電気信号としてシナプスを通過。
FDA(アメリカ食品医薬品局)の発表によれば、私たちは毎日、3種類の方法で食物から13gのグルタミン酸を摂取しています。1つめがタンパク質に含まれるグルタミン酸、2つめがフリーグルタミン酸を含むいくつかの食物、チーズ・トマト・海藻やしょうゆなどです。これらはタンパク質中にある他のアミノ酸と結合せず、舌の上でうま味を感じさせます。また、発酵には、元来食物に含まれるフリーグルタミン酸の量を増加させる効果があります。3つめが、一般的にMSGを含む食品からであり、ドリトスやスナックのチーズパウダー、ケンタッキーフライドチキンなどに含まれます。FDAはMSGからのグルタミン酸の摂取は日に0.5g程度と推測しています。
MSGは単一の「グルタミン酸イオン(glutamic acid ion)」が単一の「ナトリウムイオン(sodium ion)」と結合することで塩状になるため、「グルタミン酸ナトリウム(monosodium glutamate)」と呼ばれます。MSGを摂取した際、唾液はグルタミン酸イオンに含まれるナトリウムイオンを溶かし、フリーグルタミン酸が脳へ信号を送ると、脳はタンパク質が豊富なおいしい食物を食べていると認識するとのこと。
MSGの元となるうま味の歴史で重要な人物が東京大学の科学者だった池田菊苗氏です。妻との夕食の際、「ミソ汁のダシはどうしておいしいのか?」という疑問を抱いたのをきっかけにして研究所で調査し、昆布とかつお節からとったダシから感じる酸甘塩苦の4基本味以外の味成分を、「うま味」と名付けました。日本は肉食の文化がなかったため、魚や野菜などに含まれる少ないタンパク質を効率的に摂取するための方法だったと考えられていますが、ダシをとるとおいしいと感じる理由は知りませんでした。池田氏は東京大学の研究所でダシの研究を続け、純粋なグルタミン酸を取り出す方法を発見。こうして池田氏により世界初のMSGを販売する会社「味の素」が設立。
味の素は1909年から発売され始め、数年で東アジア諸国でも使用されるようになりました。それは、日本のダシ・しょう油・ミソのような発酵食品である、タイのナンプラー、中国のトウバンジャン、韓国のキムチのようにうま味を豊富に含む料理を持つ国々だったからです。
1947年にフード・ブームにあったアメリカにもMSGが上陸し、「味覚覚醒調味料」として人気を集め、現在まで使用されています。1960年台にはベビーフードを含む多くの加工食品への使用を確認。人間の母乳には100g中19mgのフリーグルタミン酸が含まれているため、赤ん坊もうま味を求めているとのことです。
1968年の4月にThe New England Journal of Medicineで「中華料理店症候群」という言葉が使われ始め、この記事を書いた医師であるRobert Ho Man Kwokさんによると、外食の際に中華料理店に行っていると、途中から首の後ろ側の感覚消失、手や背中の痛み、全身の脱力感や動悸という妙な症状を感じ始めました。中華料理店のしょうゆに含まれるアレルギーを疑いましたが、自宅で使っているものと同じだったため除外。Kwokさんは血中のナトリウム濃度から、中華料理に使われる大量の塩が原因である疑い」と書いたのですが、NewYorkTimesに取り上げられたことから、「中華料理店症候群」は一躍有名になり、MSGに対する誤解が増加する原因の1つとなりました。
ワシントン大学の精神科医で神経病理学者であるJohn Olneyさんは、グルタミン酸の神経伝達物質としての役割や集中する際の影響について興味を抱いており、生まれたてのハツカネズミに多量のMSGを注入した結果、脳障害やその他の問題が確認されたという研究で有名。彼は反MSG世界の表看板となり、アメリカではこのような研究結果から次第にMSGに対してのバッシングが始まり、味の素の株価は急低下、ベビー用品へのMSGの添加は禁止となりました。
その後、Olneyさんは研究結果の裏付けのため、1972年に霊長類への作用の実験としてアカゲザルの脳にMSGを注入し病変や異常を確認。しかし別の研究者が猿を使って実験を行っても、同様の結果は得られず、グルタミン酸を含む食事量に対する人間の脳内のグルタミン酸塩レベルの変化も認められなかったと述べています。「脳はまるで閉鎖的な北朝鮮のようにグルタミン酸を外部から摂取せず、必要なグルタミン酸塩は全て脳内で作られます」とプリストン大学の分子生物学および神経科学の准教授であるSamuel Wangさんは言います。
MSGを含む加工食品である缶詰のスープ、シーザードレッシング、ソーセージ、しょうゆ、ケンタッキーフライドチキンなどは、高血圧を回避するための食品リストと同じであり、全ての食品にはリスクがないわけではありません。MSGでネット検索すると一番上に表示されるMSGTruth.orgやFDAによっても、MSGの健康被害に関しては他の食品以上のリスクがあるとは書かれていません。
Davidさんのレストランでは、自社で発酵させて作られた昆布塩を使用していますが、自然に発酵させた昆布塩は「グルメ」と呼ばれ、同じく発酵によって作成され同じグルタミン酸という成分を持つMSGは「悪霊」と呼ばれるのはなぜでしょうか?
Davidさんはもう少しでレストランにMSGが塩と同じように使用されるようになると確信しており、自社ウェブサイトから「うま味スプレー」、「うまみダスト」の発売を予定。最後に、Davidさんは研究の成果を実行するために、自宅でミートソースパスタにグルタミン酸塩をふりかけて料理して食べました。調理の熱によって室温は上がっており、暑さを感じるものの、「これは自家製イタリア料理症候群でしょうか?フォークは進みますが、私の身体には何も起こりません」と話しています。
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in メモ, Posted by darkhorse_log
You can read the machine translated English article Is it really bad for chemical seasonings….