ハチは社会を作ると各個体が得をすることが明らかに、協力の大きな利益で社会が維持される
By majamarko
「なぜ女王バチだけが子を産み、働きバチとしての多くのメスは子を残せないにもかかわらず、ハチの社会はこの特徴を変化させずに進化してきたのか」というダーウィンの残した疑問を北大がハナバチの習性を利用して解明しました。
ハチは社会を作ると1匹1匹が得をすることが明らかに(PDF)
http://www.hokudai.ac.jp/news/120704_pr_agr.pdf
進化論で有名な自然科学者のチャールズ・ダーウィンは、残す子供の数がより多くなる性質が進化するという自然選択説を説きましたが、そのダーウィンが生涯のうちで解決することができなかった疑問がハチの社会についてです。ハチの社会はメスが中心で、オスは特定の時期に女王バチと交尾するためのみに生まれます。この時メスの働きバチは自分の子を産まず、母である女王バチの産んだ子を育てて生涯を終えますが、なぜ子を残せないメスが大半を占めるにも関わらずハチが自然選択により進化できたのか、ということは長年のあいだ未解明問題として残されていました。
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この疑問に対してハミルトンは、社会を作ると自分で子を産まなくても母親である女王の残す子どもの数が増え、母親経由で弟妹に伝わる働きバチの遺伝子量が増えるからだという理論的な説明(ハミルトン則)を与えていましたが、これが実際のハチやアリで検証されたことはありませんでした。
北海道大学農学院・博士課程2年の八木議大さんと北海道大学大学院農学研究院の長谷川英祐准教授の研究論文「社会性と単独性が共存するハナバチが,ハミルトン則の決定的な証拠を与える」によると、ごく一部のメスが単独で巣作りを行うというシオカワコハナバチを利用してハミルトン則の検証を行った、とのこと。つまり、社会を離れて単独に子育てをするメスと、社会を作って協力しながら子育てをするメスを比較して、次世代への遺伝子伝達量がどのように異なるのかを明らかにしたのです。
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その結果、複数のメスが協力する巣における幼虫の生存率は単独の巣の生存率の約9倍で、より多くの子を育てられることがわかりました。これは、単独だと成虫が餌集めに出かけている間、幼虫が補食されないように見張ることができず、幼虫の生存率が下がるからだと考えられます。母親と協力する娘は、直接子供を産まないにもかかわらず、幼虫の高い生存率により単独で巣を営む同世代のメスよりも、母親経由で次の世代に伝わる遺伝子量を大幅に増やしているということです。また、中には血縁関係のないメス同士が直接産んだ子を協力して育てることで、多くの子を残すことに成功している巣もありました。
つまり、協力相手が非血縁者の場合は自分の子を残すことで直接遺伝子を伝え、母親と協力する場合は母親経由で間接的に遺伝子を伝えているというわけです。いずれの場合も、社会構築は幼虫の生存率を大きく高める効果があり、それが各協力個体の利益を高めていることが示されました。
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なお、今後この検証は社会的な協力を維持するために必要な条件の解明に役立てられるということです。
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