ザンビアを最貧国と報道してバンブーバイクを売ることが「貧しさ」を作っているのではありませんか?
こんにちは。自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。最近、ザンビアで作られるバンブーバイク(竹製自転車)のニュースをよく見かけます。その記事の中でザンビアがアフリカの中でも「最貧国」の一つとされていて目を疑いました。
アフリカで「最貧国」と呼ばれるのはモーリタニア、ギニアビサウ、ギニア、シエラレオネ、リベリア、マリ、ニジェール、チャド、中央アフリカ、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、エチオピア、ソマリア、ブルンジ、モザンビークといった辺りでしょうか?ナイジェリアは貧富の差の富の部分が大きすぎて何ともいえません。西アフリカでもセネガル、ガーナは発展があって別格です。中央アフリカのカメルーンも地域一帯の工業を担っています。東アフリカの「最貧国」とイメージのあったマラウイは意外にも工業国でした。いろいろなアフリカを見てきましたが、国によってだいぶ差異がみられます。
北部アフリカのモロッコ、アルジェリア、チュニジア、リビア、エジプトといった産油国と、工業国のアラブアフリカ諸国がブラックアフリカ諸国と一線を画しているように、南アフリカ共和国を中心としてナミビア、ボツワナ、ジンバブエとともに発展の進んでいる国々の一つであるザンビアを「最貧国」として扱うことに、センスの無さを感じました。
アフリカ南部「ザンビア」の雇用を拡大する“竹でできた自転車"
アフリカ南部で生まれたハンドメイドのバンブーバイク 日本上陸 - ワールドニュース - 2012年01月17日 - Fashionsnap.com
アフリカ南部ザンビアの首都ルサカはこのあたり。
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「最貧国」の1つ、ギニア。
同じく「最貧国」といわれるブルンジ。
どうして、こういった扱いが起きるかというと、「アフリカは貧しい」というイメージからではないでしょうか。貧しくないと話題にならない。だからこそ「アフリカは貧しい」という報道が好まれるのでしょう。
「最貧国」のザンビア、それもマイナーな国境を通ったときは私も「ひさびさに衝撃を受けるかもしれない」と構えていました。そんな入国事務所は普通の建物で、中はガンガンとクーラーが効いていて最高でした。蒸し暑いコンテナのような小屋で大学ノートに氏名とパスポートナンバーを記名する……というようなことはありませんでした。国境のすぐ近くには集落がありました。一つの商店に入ってみると、棚に値札をつけた商品が並んでいて拍子抜けしました。金網の向こうの商店主に「あれ、いくらするの?」と聞くことはありません。電気も水道もあるようでした。こんな辺境にすら「PUMA」という、チェーン展開されているガソリンスタンドもありました。
始めての商店で買ったザンビアンシェイク。
首都ルサカに入ると何軒ものモールを見かけました。「SHOPRITE」「PicknPay」「Game」といった南アフリカ資本のスーパーマーケットやディスカウントストア、「KFC」や「Subway」といった、日本でもなじみのあるファーストフード店がここにはあります。宿の近くの大きなモールと、MANDA HILLと呼ばれるモールで買物をしましたが、内部はヨーロッパのようでした。経済崩壊を起こしたジンバブエの首都ハラレのショッピングモールは寂れていましたが、ルサカのショッピングモールは真新しくて勢いを感じます。本当に「最貧国」と呼ばれるような国には、このような場所はありません。
真新しいヨーロッパにあるようなモール。
要塞のような「MANDA HILL MALL」
「KFC」はナイジェリア、ケニアなどこれからの発展が期待できる地域に同業他社に先立って進出する傾向があります。
ルサカ中心街のストリート。
たしかにルサカへの道のりはいつものアフリカでした。電気も水もないような茅葺の土でできたような家。シャワーなんてないから川で沐浴をする人たち。道端に座って通り過ぎる車が止まるのを待つ木炭やバナナの売り子。鉄板の上に焼かれている羊肉。かといって、彼らの幸せは彼らにしか分かりません。援助が必要であれば、首都に集まるお金を地方に回すべきでしょう。そうすることで解決できる問題もあります。アフリカの貧しさは自国の政治で変わる気がしてなりません。
暑いので子どもたちは川で遊んでいます。
一般的なアフリカの集落。
川で沐浴中に会った子どもたち。
お金のかからないおもちゃ。遊び方はいつだって自由です。
ザンビアを旅することで私はザンビアにお金を落としていきます。私が落としたお金は「最貧国」ザンビアの人たちの生活の一つとなるものです。だからこそ私が少しでも長くザンビアを旅して、「最貧国」ザンビアの人たちの生活を助けるために、GIGAZINEの記事を読んで応援していただけると嬉しく思います。
バンブーバイク(竹製自転車)の販売を自分の記事に例えるならこうでしょう。自分にとってアフリカはアフリカでしかありません。豊かだろうが貧しかろうが、そこにあるものをただ伝えるだけです。アフリカにお金を落とすことは、アフリカの人たちの生活に繋がります。だけどそれを声を大にして言うことではありません。理由は自分が旅をしたいからアフリカに来ているからであって、そこでアフリカの貧しさを利用したら嘘になるからです。
自分が旅をしたかったのでアフリカに来ました。これはコンゴ共和国。
このバンブーバイク(竹製自転車)はどのような形になるでしょうか。「ザンビアの人たちのために」と社会貢献を全面に出している以上、ビジネスにはなって欲しくありません。「ザンビアの人たちのために」と言いながら、稼ぐことには抵抗はないのでしょうか。とはいっても、無償のボランティアで社会貢献も難しいでしょうから、せめて収益くらいは広く公表されるでしょう。それをせずにザンビアが貧しければ貧しいほどバンブーバイク(竹製自転車)は注目を浴びて、その結果ザンバイクス・ジャパンが儲かるという図式は訳が分からなくなりますから。
「アフリカは貧しい」という報道は援助される方ではなくて、援助する方に必要かもしれません。「アフリカは意外に普通でそれなりにやっています」では援助は集まらないし、記事にもなりません。日本ユニセフで広報を担当しているタレントの方が「危険なソマリア」に行ったとして話題になりました。しかし、旅人は絶対にそんなことをしません。「比較的に安全なソマリランドを旅した」とアピールします。
シエラレオネの首都フリータウンの繁華街。貧しいといわれる中でも人々は懸命に生活しています。
アフリカにいると、幸せと援助について考えることがあります。ギニアの集落では一つのテレビを100人近くでみつめていました。貧しい光景です。でも、これが不幸だとも言い切れません。別の建物では激しいダンスパーティーが繰り広げられていました。電気が来てないので発電機を回しています。アフリカの「最貧国」と呼ばれる国々では4人から5人の子どもを生むのが一般的です。自分の子どもに幸せを感じるのは、明らかに日本の方が少ないでしょう。その上に援助も欲しいとはおかしな話ではないでしょうか。日本で例えるなら、できるはずの避妊をせずに出産を繰り返した上、生活保護をもらって暮らしていたら非難されるのは当然です。日本では子どもの数を考えます。働きづめてお金はできるけど子どもも育てられない日本人と、のんびりと暮らしてお金はないけれど子どもを育てるアフリカ人、どちらが幸せでしょう。だからこそ、「変わりたい」と向かうから手を求めていたときに、彼らの努力と引き換えに実施するのが援助ではありませんか?日本は明治のはじめ、それこそ無償の援助ではなく、知識や技術のある欧米人を高給で雇って変わりました。日産自動車のフランス人社長はボランティアでやっているわけではありません。
いつもたくさんの子どもたちに会うのがアフリカ。写真はナイジェリア。
アフリカの人たちを苦しめるのは独裁者。看板はウガンダのムセベニ大統領。
援助やボランティアの弊害を考えるようになったのはカンボジアでした。「学校を作ってあげよう」と、そんなプロジェクトがテレビで放映されるほど、カンボジアは日本にとって好まれる援助大国です。ジェノサイドも伴った長い内戦が続きました。一般には優しい人たちであふれています。ですが、ところどころ「日本人は金を持っている」というイメージでもあるのか、嫌な経験もしました。国境ではビザ代をごまかされてあ然としました。イミグレーションの建物内に旅行会社の人がいて代行したというのです。アンコールワットのあるシェムリアップでは、それぞれ別の場所で3度もお釣りを渡そうとしませんでした。「援助は人を駄目にする」とはっきり分かったのは、自転車でついてきた日本語が話せる10代後半の青年でした。ちょっと興味があったので彼の家まで寄って話を聞くと「日本に行ってみたい」「パソコンが欲しい」と言われて困りました。彼は大学で英語、独学で日本語を勉強していて彼の努力は紛れも無く素晴らしいものなのに、それに釣り合わない姿勢がとても残念でした。
土地がないから湖で暮らすカンボジアの人たち。
さて、このバンブーバイク(竹製自転車)自体は面白い商品でしょう。フレームだけで40万円以上するものを10万円を切る価格で販売しています。だからこそ、それだけにすることはできなかったのでしょうか。例えば、南アフリカのワインとかは「貧しいから」と販売されるわけではないですよね。安くて美味しければ誰だって買います。バンブーバイク(竹製自転車)だって一緒だったでしょう。良いものが安く手に入れば結果として「ザンビアの人たちのため」になったはずです。今回のザンバイク日本事務局の販売の方法や、日本メディアの報道の仕方をみると、結果を出して目的を達成するのではなく、「ザンビアの人たちのため」という目的を出して、「バンブーバイク(竹製自転車)の販売」という結果を求めているようでした。その結果のためにザンビアはアフリカの中でも「最貧国」の一つとされました。
Facebookのザンバイクオフィシャルページで、以下の質問をしました。勢いのままに書いたので、バンブーバイク(竹製自転車)をザンバイクと誤解していて褒められたものではありませんが、公の場で質問したので、そのまま掲載します。
どうも、自転車で世界一周をしていてアフリカを周ってザンビアを旅しています。さて、ザンバイク自体は面白い試みだと思います。ですが、「最貧国」という文面を押し出して共感を集める報道には違和感を感じます。ザンバイクの日本事務局ではザンビアはアフリカの「最貧国」という定義なのですか?そのような報道の仕方についてはいかがお考えでしょう?ザンビアは「最貧国」だからザンバイクを購入して欲しいということでしょうか?また、ザンバイク一台に付き事務局はどのくらいの収益を上げるのでしょうか?これは公表されているのでしょうか?これは、ザンビアが貧しければ貧しいほど事務局は儲かるのではないかという疑問からです。アフリカにいると幸せについて考えます。援助について疑問を覚えます。よかったらご回答下さい。
この質問について、以下の返信がありました。
コメントありがとうございます。自転車での世界一周素敵ですね。
良い機会なので、長文で恐縮ですが、ザンバイクス・ジャパンとしてのこの取り組みについてのスタンスをご説明できればと思います。
ご興味のある方のみ、読んでいただけましたら幸いです。
ザンバイクスの取り組みは援助ではなくソーシャルビジネスです。国や財団による援助ではなく、社会変革のためにゼロから起こしたエンタープライズです。慈善団体ではなく、社会変革を伴う事業を行う会社であり、アップルやソニーなどと変わらない事業体です。我々も様々なリスクを持ちながらこの事業に取り組んでいます。
ザンバイクス以外に今まで障がい者支援やフェアトレードなどの貧困状況などにある弱者支援のプロジェクトを数々行ってきました。NGOやNPOの活動資金は国民の税金を活用しての活動がほとんどです。海外援助もODAなどの税金によるものです。しかしザンバイクスでは事業の継続性を考え、助成金や寄付金に頼らず自ら活動資金を生み出していくビジネスと社会活動の融合を模索しています。社会的事業の継続には、活動資金の確保がとても大切です。
しかしこれはなかなか難しく、その事業から利益を得ていくことは非常に難しいことです。ご心配なく、ザンバイクスバンブーバイクの売上のほとんどは現地活動と日本における活動に使われています。その結果、失業率50%以上の現地で40人の雇用を生み出す工場の維持を実現し、現地のスチールバイク提供の事業継続も実現させていけます。現状利益は出ておらず、赤字の現状です。
このような弱者や最貧国によるものづくりや事業の創出を、貧しい国の物価との差益でたくさん儲けているのでは?弱者を使って仕事をさせて搾取では?という方も必ずいらっしゃいます。いろいろご意見もありますが、目の前の困っている人の現状を変えるということを第一優先として、批評をいただき自問自答をしながら取り組んでいるのが現状です。
それが正しい事かどうか以前に、現状を今すぐ変える必要がそこにあるためです。またフェアなトレードでなければビジネスというのは継続が難しくいつか破綻してしまいます。弱者支援を目的としたビジネスの場合は、寝食を捨てて無償でやれというのも普通できないことですし、このバランスは非常に難しいです。
しかし、やる以上は社会的問題も解決しながら、さらに社会に良いことが出来るように、優秀な人材が集まるように、事業を継続できるように、関わる皆で利益を最大に高めていきたいとも考えています。実際にバングラデシュのNGOやイギリスのNGOにビジネスとしての成功事例があります。
そして、ザンビアは国連により後発開発途上国(最貧国)と定義されています。
特にそういった国には格差が存在し、旅行では目につかない取り残された部分があるのが現実です。ザンバイクスは、その中でも経済的支援や開発から取り残された人のための現地活動を行っています。また、今回そういった取り組みの中で生まれた製品を日本のマーケットに「最貧国から」という訴求で販売していくことは、製品背景の個性を活かした伝え方として、また多くの人に現地の状況を知っていただくきっかけとして、前面に出していくべきと考えています。そして多くの人に興味を持ってもらい、ザンバイクスバンブーバイクに乗っていただきたいと考えています。
5年以上現地で活動を行うザンバイクスのメッセージは、困窮する現地において「自転車をつくるだけでない。人々の生活を変えるんだ。」というものです。ザンバイクスジャパンの使命も「自転車を売るだけでない。人々の生活を変えるんだ。」というものなのです。
バンブーバイクは、今後中国をはじめとした世界の生産国から日本に輸入されることになると思います。ザンバイクス・ジャパンとしては単なる竹で出来た自転車をご紹介するのではなく、最貧国とされるザンビアの現状を多くの人に知っていただき、現地ザンバイクスの社会活動も知っていただきながら、このバンブーバイクを楽しんでいただければと思っています。
ザンバイクスにはそんな社会的背景もありますが、そんな理屈は抜きにして、アフリカのワイルドさを感じる楽しいバイクフレームになっていることです。
「理屈抜きに面白い製品」として、一般製品とならんで競争力の製品になりえているという点、他の地域にも先駆けて世界でもいち早く高品質の量産体制を築いた点など、現地メンバーの努力を感じます。
ザンバイクスバンブーバイクの魅力は、難しい話もあるけど「とっても楽しい自転車!」であることです。
自転車での世界旅行が、ご自身の夢や生活を実現しながら、多くの人を幸せにして、世界の困窮する人を救い、生活を変えられるような活動につながれば素晴らしいですね。
ザンバイクスバンブーバイクでの旅もおすすめいたします!!
ザンバイクス・ジャパン 事務局 手島大輔
ここに記しますが、国連の後発開発途上国を最貧国と定義するのは数字だけにとらわれすぎて、現実が見えていません。人口が少ないけれど資源があるから、一人当たりの所得が高いコンゴ共和国やガボンが最貧国から外れて、工業国でありながら人口が多いために一人当たりの所得が低いマラウイや、それこそ最貧国からの脱却を図るルワンダと、どちらが発展していたかと聞かれたら後者を挙げます。仮にザンビアが後発開発途上国を脱したら「最貧国」という言葉は使わなくなるのでしょうか?それに時間がかかるとは思えません。
今回、記事にしたことでザンバイクス・ジャパンとバンブーバイク(竹製自転車)に一人でも多く興味をもってくれたらと願います。結果を出してから目的を達成せず、目的から結果を導き出そうとする姿勢は共感できません。結果を求める為にザンビアはアフリカの「最貧国」の一つであることが必要だったようにみえます。その「最貧国」のザンビアはかわいそうだから助けてあげないといけないという上からの目線がアフリカにとって必要かも考えてください。
首都ルサカの整えられた幹線道路。
ここまで書いてみて、何が正しいのか自分にも判断は付きかねています。だからこそ、これを読んでくれた方が、自ら考えて様々な意見を出して欲しいと思います。ザンバイクス・ジャパン事務局も社会貢献を標榜してビジネスをしている以上、皆様の質問や意見には答えてくれることでしょう。自分の方にも質問や意見があっていいと思います。そうすることで考える材料が増えてすべてをプラスに導いてくれるはずです。自分もまた、誰が何を考えるのか気になります。
(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com)
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