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映像制作の基本とコツをプロが図解と例示で伝授する「PIMOPIC」


個人ユーザーから劇場映画制作の編集まで、幅広く用いられる国産の映像編集ソフトEDIUSのサイト内にある「PIMOPIC(The Perfect introductin of motion picture)」では、映像クリエイターとして実際に仕事を始めている人やこれから映像コンテンツ制作を目指そうという人のために、経験豊富なプロの映像制作者が、映像制作の各段階で必要な技術や機材の理論に基づく基礎知識から実践現場で活かされるコツまでをまとめて伝授しています。

そこらの教科書よりも詳しく書かれており、これが無料で読めるというのがオドロキです。

CREATIVE LAB. INDEX | EDIUS.jp
http://www.edius.jp/cre_lab/index.html



◆どんなことが書いてあるのか
企画段階から映像制作のフローに沿って、図や写真を使って、どのように制作を進めていけばいいのか、またその工程でどのような注意が必要になるのかが、詳細に解説されています。以下にその一部をピックアップして掲載します。

◆プリプロ
プリプロとはプリプロダクションの略で、撮影前の作業の総称です。プリプロにはどんな工程が必要か、映像制作全体のフローを確認しつつ説明されています。PIMOPICによれば、映像制作は大きく分けて下の3段階に分けられるそうです。

「企画・構成・シナリオ作成」= レシピや調理法の考案
「撮影・録音・素材制作」= 野菜や肉といった食材を集めてくる作業
「編集」= レシピに従って食材を調理する工程

これを図にすると下のようになります。


PIMOPICのすごいところは、編集ソフトのサイトなのに、企画の立て方から照明の使い方まで、編集と直接関わらない部分までフォローしているところ。下の図は映像ジャンルによってシナリオの重要度が変わることを示した図です。ドラマのように、シナリオがなくては後の作業が不可能なものから、講演の収録のように、おおまかなタイムスケジュール程度で十分なものもあるとのこと。


コンテの記述の仕方も詳細に解説されています。カット割りとカット番号、シーン番号、各カット、各シーンの時間、被写体とその向きなど、コンテに描き込むべき情報は何かについても解説されています。


◆撮影
「撮影」の項目では、カメラについての基礎知識から、カメラ・ワークはどのようにして生み出されるのかが紹介されています。

下の写真は望遠・広角レンズの違いを比較したもの。これは広角レンズで撮影した写真。


これは望遠レンズ。このような非常に基礎的な事柄にも丁寧に触れています。ちなみに現在、35mmカメラの場合、一般的には50mmのレンズが標準レンズとされますが、これはライカ社が50mmレンズを「もっとも人間の目に近いレンズ」と位置づけたことに由来するとのこと。


「絞り(アイリス)」と「被写界深度(デプス)」の仕組みについて、実はよく知らないという人も多いのではないでしょうか。PIMOPICではこの関係についても、詳しく解説されています。

レンズには絞り(アイリス)がついています。絞りの大きさを表す数値がF値で、焦点距離とレンズ口径の関係は次のように表すことができるとのこと。 F値が小さいほど明るい(光量が大きい)レンズで、F値が大きいほど暗い(光量が小さい)レンズとなります。


また、絞りには、光量を調整する役割のほかに、被写界深度(デプス)を調節する役目もあります。被写界深度とは、フォーカスがあっていると感じられる範囲のこと。


被写界深度には、次のような特徴があります。

1.絞りが大きい(F値が小さい)ほど、被写界深度は浅くなり、フォーカスが合う範囲が狭くなる
2.レンズの焦点距離が長いほど被写界深度は狭くなる
3.フォーカスの中心点から前側の被写界深度は狭く、後側に広い(したがって、奥行きのある被写体に平均的にフォーカスを合わせたい場合は、深さ方向の中央より前側にフォーカスを合わせます。

下の写真は被写界深度の差によって生じる写真の違いを示したもの。これは被写界深度が浅く、フォーカスの合う範囲が狭くなっているため、背景の物がボケて見えています。


こちらは被写界深度が深く、背景の物もはっきりと見えています。


「撮影」の項目では、このほか「パン」「ティルト」とは何か、どのように撮影するのかなど、実際の撮影に必要な知識について解説しています。

◆照明
PIMOPICでは、プロの映像制作者は照明をカメラと同じくらい重要なものとして、照明の役割から、どのように照明を利用すべきかまでが語られています。

照明の役割のひとつは「照度の確保」。当然ながら被写体を十分明るく照らすために照明を用いるのですが、十分な照度というのは状況によって変化します。例えば逆光下の人物の顔を撮りたい場合、背景よりも明るい照明をあてなければ、顔が暗くなってしまいます。

さらに「色彩のコントロール」も照明の役割のひとつです。光源にはそれぞれ固有の「光色」があり、最終的にカメラに記録される色は、「光源の光色」と、「被写体自身の色」の和となります。下にある2つの写真は、同じスシを撮影したものですが、上の写真は蛍光灯下で撮影されたもの。下の写真は白熱灯下で撮影されたものです。


また、「立体感の表現」も照明によって行うことができます。例えば、背景との区別があいまいな被写体に、背後から照明を当てて、被写体の輪郭を強調することで立体感を出す手法があります。

左の写真は、屋外で立体感を出さずに表現された写真、右の写真は照明で立体感を出して表現した写真。


照明の数、強さ、位置、拡散具合などの微妙なバランスを調整することで、被写体の固さや滑らかさなどの「材質感」を表現することも可能です。さらにこれらの要素を組み合わせて、シーンやカットの「雰囲気」を演出するのが、照明の役割と言えます。

照明の役割を述べた上で、実際の撮影でどのように照明を使うかが解説されます。被写体との関係で、どの位置から照明を当てるとどんな効果が出るかが解説されます。


PIMOPICによれば、照明が満たすべき一般的なガイドラインは以下のようなものとのこと。

1. ライトからの直接光や、余分な反射光がカメラに入らないこと
2. 被写体の形を適切に表せること
3. 被写体の立体感や材質感を適切に表せること
4. 影はひとつ、または、ないこと
5. 影の濃度やボケ具合が適切なこと

◆録音
映像制作において、録音は欠かせない要素です。ここでは、どのような仕組みで音がデジタル化されるのかという部分についてピックアップします。

DVカメラの録音モード設定には、通常12bit/32kHzと16bit/48kHzの2種類があります。例えば16bit/48kHzとは、量子化16bit/サンプリング周波数48kHzでデジタル化する、ということを表しています。人間の耳で聞くことができる周波数の上限は約20kHzなので、その倍の40kHz以上のサンプリング周波数があれば、原理的には平均的な人間が聞くことができる音をすべてデジタル化できることになります。


具体的には、ある瞬間の音の振幅=音量を、16bit=2の16乗~65536段階のデジタル値で表し、時間方向には、サンプリング周波数48kHz=1秒間に4万8000回データを記録する、ということになります。分割数を多くするほど、より原音に近い音として聞こえることになります。


録音をするためには、必ずマイクが必要になります。「録音」の項目では、マイクの特性についても解説されています。

マイクが聴き取れる周波数の範囲と、その感度を表すのが「周波数特性」です。原音に忠実に録音するためには、人間が聴き取れる周波数の範囲でできる限りフラットな周波数特性が好ましいわけですが、用途によっては必ずしもフラットな周波数特性が最適とは限りません。

例えばインタビューなど人の声を録音する場合は、人の声の周波数である中音~低音の感度が高いマイクの方が適している場合もあります。逆に、風の強い屋外での録音で風雑音(ウィンド・ノイズ)を低減するために、低周波数域の感度を落とす機能がついているものもあります。これを、ロー・カットフィルターと呼んでいます。


カメラのレンズの広角・望遠に相当するのが、マイクの指向特性です。無指向性マイクとは周囲360度をほぼ一様に録音できるもの。単指向性(カーディオイド)マイクは正面の感度が相対的に高い特性を持ったマイクです。単指向性をより強くしたのが、鋭指向性、あるいは、超指向性マイクです。単指向性マイクでも横方向の音を完全にカットできるわけではありません。また、指向性が強くなるほど背面側(正面の正反対側)への感度も強くなるので注意が必要です。


このほか「録音」の項目では、マイクでの録音を補助する各種録音機器や、スタジオ録音のノウハウなどが掲載されています。

◆編集
編集作業は映像制作の最終工程です。どんなに良い素材が撮れていても、編集の良し悪しで映像の出来栄えを大きく左右します。

編集の意義を如実に表すものとして、旧ソビエトの映画監督クレショフの実験が紹介されています。この実験では、下の画像のように「男・赤ん坊・男」の順に編集した映像と、「男・ゴミの山・男」の順に編集した映像を被験者に見せています。実験の結果、「男・赤ん坊・男」の映像を見た被験者は「男は幸福に満ち足りている」と感じ、「男・ゴミの山・男」の映像を見た観客は「男は悲しみに耐えている」と感じたそうです。


このように、本来は不連続なショットとショットをつなぐことによって映像に新たな特定のムードや意味を生み出すことを、「(ショット間)モンタージュ」と呼びます。こうしたモンタージュ技法は、「ある組み合わせを見ると、そこに何らかの意味を見出そうとする」という人間の特性を利用しており、映像編集の基本的な原理となっています。

映像編集を作業面から捉えると、「与えられた映像素材から、必要な部分を取り出し、並べ直し、つなぎ合わせ、映像効果を加えることで、ひとつのストーリーを構成すること」となり、下の図のように、素材を切り取り、並べ直し、つなぎ合わせ、映像に意味づけを行うのが編集作業です。


また、カットそのものやカットの繋ぎ方にも種類があり、それぞれに名称がついています。比較的よく使われるものは以下の通り。

「肩越し(肩なめ)ショット」。前景に人物の肩から上の後姿を入れて、メインの被写体を映します。


「カット・アウェイ」。メインの被写体から、関連するそれ以外の被写体へカットをつなぎます。


「リアクション・カット」。被写体の行為に関係する人・物のカット(カット・アウェイの一種)です。


「インサート・カット」。あるシーンの中に挿入された、独立したカット。


「視線カット」。登場人物の視点からの映像。


「アクションカット(つなぎ)」。一連の動きを複数のカットにまたがってつなぐこと。


「マッチ・カット」。形状や大きさ・動きの類似した被写体のカットをつなぐこと(オーバーラップすることも多い)。


こうしたカットとつなぎを駆使して編集を行い、さらにその上でテロップや視覚効果、音効果を加えていきます。編集全体の流れは下のように進みます。

素材の選択と分類

マスター・プランの作成

カットつなぎ

テロップ、視覚効果

音効果(S.E.、M.E.)


このほか「編集」の項目では、実際の編集で使用する技法が解説されています。さらに「録音」や「ポスプロ」についても、基本から実際の制作で使える知識までが丁寧に述べられています。

なお、「PIMOPIC」は、関西学院大学で非常勤講師を務める水野五郎氏が監修を務め、コンテンツ制作会社「Xooms」代表取締役の保田充彦が執筆しています。各コンテンツの目次は以下の通り。

・プリプロ
01:映像制作の流れ 02:企画 03:オリエンテーション 04:シナリオの表現 05:コンテ

・撮影
01:レンズの特性 02:画面サイズ 03:カメラ高さとアングル 04:カメラ・ワーク 05:撮影機材 06:撮影の実際

・照明
01:照明の役割 02:色彩表現~照度と色彩 03:ライト・ポジション 04:照明機材 05:3灯照明の基本と応用 06:その他の照明、リンク集

・素材制作
01:CG 02:2DCG 03:3DCG 04:画像合成 05:音素材 06:音素材制作

・録音
01:録音の基礎 02:音声の物理 03:録音機材1-マイク 04:録音機材2-その他 05:スタジオ録音の実際 06:ロケでの録音実技

・編集
01:編集とは何か 02:編集の役割 03:編集の実際 04:編集の技法 05:イマジナリー・ライン 06:音によるカッティング

・ポスプロ
01:ポスプロとは 02:インターレースとフレームレート 03:モニタリング 04:カラーコレクション 05:MA 06:納品

・関連知識
01:ビデオ・フォーマット 02:HD(High Definition) 03:データ圧縮 04:フィルム・コミッション 05:著作権・肖像権 06:ロケハン

CREATIVE LAB. INDEX | EDIUS.jp
http://www.edius.jp/cre_lab/index.html


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in メモ, Posted by darkhorse_log

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