日産の新キャラ「PLUG」くんのアニメのクオリティが尋常じゃない理由

「どーもくん」と言えば、NHKのマスコットキャラとして1998年から10年以上も活躍しつづけている、世界的にも知られたキャラクターです。このどーもくんを作ったアニメーション作家の合田経郎氏によって、日産の新たなキャラクター「PLUG(プラグ)くん」と、彼の住む世界「Planet Zero」が作り出されましたが、そのクオリティは、ちょっと尋常ではないほど力が入ったものとなっています。
NISSAN Zero Emission:Planet Zero
http://the-planet-zero.com/

これが合田経郎氏によって生み出された日産の新キャラクター「PLUG」。昨今のゆるキャラブームをまったく無視したかのような直線的なキャラクターデザインです。

PLUGくんのすごいところは、彼らがすべて立体で製作され、コマ撮りアニメーションでその世界観と物語が作られているところ。下のムービーでは、「Planet Zero」を舞台にPLUGくんが恋をし、冒険をする物語が、コマ撮りのアニメーションで描かれています。
PLUG, THe NeW WORLD_JP.mov - YouTube
PLUGくんたちが生活するPlanet Zeroの街。建物の造形などに、違う惑星の雰囲気が出ています。

中央にそびえ立つ塔は「太陽の塔」と呼ばれ、太陽光によって電気エネルギーが作られている模様。

この街の一室にPLUGくんは住んでいます。これは飼い犬の「DOC(ドック)」。この星の生き物たちは、みんな電力を糧に生きているとのこと。

PLUGくんたちは寝ている間に充電をして活動します。

起きるときは自らプラグを引き抜いて起床。


電力が十分に充電されていることを確認。

元気に出勤します。

途中、ベンチで寝ている女の子を発見。

女の子はそっとしておいて、職場に急ぐPLUGくん。

PLUGくんの仕事は、どうやら街の中央にある巨大な発電設備の清掃のようです。

汗をかきながら仕事にはげみます。

仕事が終わり、クラブに足を運ぶPLUGくん。

ここで朝見かけた女の子「eNeL(エネル)」を再び発見。

eNeLに見とれるPLUGくん。

すると、視線に気づき、eNeLもPLUGくんを見つめ返します。

早速クラブを抜け出してどこかへ向かう2人。

たどり着いた先は、PLUGくんの職場でもある発電施設。

太陽の塔に寝転がるeNeL。

そして夜明けが訪れます。


eNeLと出かけるPLUGくん。

途中、巨大な生き物と出会います。これはどーもくんではなく、Planet Zeroに住む「TAIYO-SUN(タイヨーサン)」という生き物。

どうやら眠っている様子。

頭頂部に発電装置らしきものを装着しています。

お腹にコンセントを発見。

自らの頭を差し込むPLUGくん。

太陽が雲で陰り始めます。

充電中のPLUGくん。

太陽光の減少に気づき、目を覚ますTAIYO-SUN。

PLUGくんがささったまま移動を始めます。

太陽光の下に戻り、また眠くなるTAIYO-SUN。


そして背後から迫る黒い影。

さらに進むと、2人は巨大なキリンの群に出会います。これはTAIYO-SUNと同じくPlanet Zeroに生きる「PRAFFe(プラフ)」という生き物。頭についたプロペラで風力発電を行うようです。

子どものPRAFFeは自ら発電できないので、親から電力をもらっています。



PRAFFeの子どもと遊ぶ2人。


そこに迫る猛獣。先ほどの黒い影の正体は、「LIION(ライオン)」というネコ系の動物で、ほかの生き物に襲いかかってエネルギーを奪い取ります。

LIIONに追われる子どものPRAFFe。

噛みつかれてエネルギーを奪われます。


悲しむ親PRAFFe。

PLUGくんはふるえるeNeLの手を取って駆け出します。


林の中を進む2人。

走り続けて海岸線にたどり着きました。


顔を見合わせる2人。

目を閉じるeNeL。

焦るPLUGくん。

と思ったら、突然eNeLが倒れてしまいました。


自分の電力も減っていることに気づくPLUGくん。

鼓動を確かめます。

強く揺さぶっても目を覚ましません。

日が完全に落ちてしまいました。


手を握り、天に祈るPLUGくん。


涙とともに電力が流れ落ちます。

共鳴するかのように、周囲から立ち上がる電気エネルギー。


光の中に、なにかの影が浮かび上がります。

周囲の気配に気づくPLUGくん。

このシルエットは……。


PLUGくんの祈りが通じたのか、PRAFFeやTAIYO-SUNたちが助けに来てくれたようです。

充電を終え、家路を急ぐ2人。


街の明かりが見えてきました。



◆メイキング
アニメーションの製作は、合田経郎氏が立ち上げたアニメーション製作会社「株式会社ドワーフ」のチームによって行われました。製作の様子を追った特設サイトが開設されています。
dwarf : Stop-motion animation production

合田監督は、ストーリーとキャラクターデザインの断片的なアイディアをスケッチし、世界を断片から作り上げていくとのこと。これはPLUGくんが朝目覚めるシーンの絵コンテ。

PLUGくんのデザイン設定画。

PLUGくんの部屋のイメージイラスト。企画段階では、映像のものよりも雑然とした、生活感のあふれる部屋だったようです。

印象的なPLUGくんのベッドも、その設定が細かく作り込まれています。

モニターを見ながらキャラクターの位置を決める合田監督。

TAIYO-SUNのデザイン画。

企画から撮影準備に入ると、合田監督のデザインをもとに人形と美術の製作が始まります。通常の人形製作と異なり、アニメーションの中での動きを想定した関節が必要となるため、骨格は特に重要となるとのこと。これはTAIYO-SUNの骨格。キャラクターのイメージごとにその素材も違っていて、TAIYO-SUNの骨格は木で作られているようです。

撮影用のセットを作っています。後ろにはどーもくんの姿が。

完成したTAIYO-SUNの姿。かなり巨大です。

コマ撮りアニメーションでも照明は非常に重要な要素です。これは木陰のシーンで、樹木の影を落としているところ。

下の画像のようなプレートを使って、影を演出します。

下の画像はカット説明シート。「ランナー股下の突き出し金具がバレてしまうので、手切りでお願いします」など、撮影素材の注意点が細かく書き込まれています。

こうして出来上がったセットを使って撮影が始まります。

コマ撮りのアニメーションとCGというのは、方向性のかなり違う手法ですが、より広い世界観を手に入れるため、ドワーフでは今回CGも大幅に取り入れているとのこと。中でもCGが最も効果を発揮したのが、キリンに似た生き物「PRAFFe」。


PRAFFeは、PLUGくんたちとのサイズの差が大きすぎるため、コマ撮りではダイナミックなアニメ―ションを作ることはできません。そこで、CGを使ってその動きを表現することにしています。

通常のコマ撮りだけでは表現できない、下の画像のような空間の広がりを表現することができるようになりました。

◆Planet Zero
日産の特設サイトでは、PLUGくんを操作してPlanet Zeroの世界を歩き回ることができるようになっています。

Planet Zeroの表面には道路が敷かれており、番号のふられたポイントをクリックすると、様々なステージに入ることができます。

画面をクリックしてPLUGくんを操作します。

PRAFFe登場。

PRAFFeのアンテナをくるくる回して充電するミニゲームが発生します。

各ステージでは、電力に関する様々な知識が紹介されます。PRAFFeのステージでは「代替電力」について学ぶことができます。

TAIYO-SUNも登場。

ミニゲームでは、TAIYO-SUNを動かして、雲間から漏れる太陽光を追いかけて発電します。

また、Planet Zeroでは各キャラクターの紹介を見ることも出来ます。eNeLは実はカラテのブラックベルト保持者だったようです。

DOCはなんと音楽プレーヤーにもなるとのこと。

現在まだ半分くらいのコンテンツが「Coming Soon」となっており、新たなキャラクターの登場も期待できそうです。

最終的に、すべてのステージを遊ぶことで、Planet Zeroの世界観のもとになっている「スマートグリッド」の概念について、その全体象を理解できるようになるとのこと。

また、Planet Zeroから「ムービーシアター」に入ることができ、ここで先ほどのムービーのほか、合田監督とドワーフによって制作された映像を見ることができます。

ここも現在半分以上の作品が未公開となっており、新たなコンテンツの追加が待たれます。


さらに、PLUGくんを使った「パラパラマンガ」を募集する「FLIPBOOK」では、コマ撮りと原理を同じくするパラパラ漫画の作り方を学ぶことができます。
0729_作り方_J.mov - YouTube



さらに、下のムービーではPLUGくんの描き方も教えてくれます。
0729_描き方_J.mov - YouTube



実際にどのくらいのレベルのパラパラマンガが投稿されているかというと、下のムービーが人気ランキング上位の作品です。
1位:ランランラン
【FLIPBOOK STUDIO】ランランラン - YouTube
1位の作品はプロの仕業ではないかと思えるほどクオリティが高いものでしたが、2位の作品はおなじみのパラパラマンガです。三島由紀夫の「金閣寺」の文庫本を使っているあたりにひそかなセンスを感じます。
2位:目玉オヤジは電気自動車の夢をみるか?
【FLIPBOOK STUDIO】目玉オヤジは電気自動車の夢をみるか? - YouTube
FLIPBOOKに投稿できるムービーは、PLUGくんを使ったパラパラマンガであれば基本的に自由です。ペンとノートとデジタルカメラがあれば作成できるので、「学生時代はパラパラマンガの制作にその青春を捧げた」という人には、その秘めた才能を世に問うチャンスになるかも知れません。
NISSAN Zero Emission:Planet Zero
http://the-planet-zero.com/

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