モデルに直接絵の具を塗りこみ、動く肖像画を作り出すアーティスト
通常、肖像画などの人物モデルは画家の作業が終わるまで同じポーズを取ってじっとしているもの。しかしアーティストのAlexa Meadeさんの作品に参加するモデルは、それとはまた別の意味で動くことが難しく、普通の仕事との違いに仰天するかもしれません。彼女はモデルの姿を写し取って描くのではなく、モデルに直接絵の具を塗り込み、まるでキャンバスの中の人物であるかのように見せかけるという手法を採っているからです。
Now that's what I call still life: Artist paints directly onto human models to make them look like canvases | Mail Online
Meadeさんは背景の小物にもまるで絵画で描かれたかのような、絵の具の塗り跡が残るような質感のペイントを施し、モデルへの作業が終わると、その背景とモデルを一緒に撮影します。モデルと背景に直接絵の具を塗って描くことで、現実の物や人がまるで2次元の世界の中にあるかのような錯覚が生まれ、眺めていると不思議な印象を受ける作品となっています。
細い筆でまるでメイクをするように絵の具を塗っていきます。
顔の塗装が終わった後はこんな感じ。ペイントされたサングラスで目元を隠すといよいよ人間っぽさが消えうせ、絵の一部を切り取ったと言われても分かりません。
作業が終わっている足と、まだ手つかずの腕を見比べると、マネキンや合成ではなく、本当に人間に色を塗っているというのがよく分かります。
のどのあたりに深い陰影をつけています。
そして最後に腕にペイントを施していきます。
すべての作業が完成し、すっかり絵画の中の存在と化したモデルとMeadeさん。モデルが本当に絵に描かれたかのような姿になっているので、Meadeさんと視線をからめているだけでどこか現実離れした光景が広がります。
ワシントンDC育ちのMeadeさんは、画家として活動を始める以前は、米国議会にインターンとして勤めていました。政治家のPRという特殊な職業は、彼女に表層的な外観を変えることで、人の知覚に強く作用するほどの変化を起こせるということに気づいたといいます。自身の活動を紹介するサイトで、彼女は「聴衆が(政治家から)受け取っていた印象は各人によってばらばらでしたが、それはすでにプレゼンテーションされている情報を個人的に解釈しているのです」と発言しています。
彼女の作品と同様の手法を使っているアーティストはほかにもいて、イギリスのバンド「The Maccabees」のジャケット写真の撮影で、バンドのメンバーたちに直接絵の具を塗り込んだアーティスト・Boo Ritsonさんが知られています。Ritsonさんの作風はかなりデフォルメ感があり、仕上がった人物がまるでマネキンのように見える一方、彼女の方は絵画的な表現で作品を作りあげています。
Ritsonさんが手がけたアルバム「WALL OF ARMS」のジャケット写真。
Maccabees
Meadeさんの作品は自身のサイトよりもFlicker上の写真の方が更新が速いようなので、もっと彼女の作品を見たいという人は下記ページにアクセスしてみてください。
Flickr: AlexaMeade's Photostream
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