なぜハンモックで寝ると気持ち良く眠れるのか

by antwerpenR
日本では住宅事情や気候の関係もあって、あまり身近ではないハンモックですが、旅行先で試した経験があったり、何となく憧れているという人もいるのではないでしょうか。そのハンモックがもたらすゆっくりとした「揺れ」が睡眠にとって非常に効果的なことが研究によって明らかになりました。
Why Hammocks Make Sleep Easier, Deeper : Shots - Health Blog : NPR
スイスの科学者が行った研究によると、ハンモックがもたらす穏やかな「揺れ」は、ベッドで寝るよりも素早く眠りに落ちることができる上に、より深い眠りになるそうです。そして「揺れ」がもたらす脳の活動の変化が不眠症に対する新たな助けとなるかもしれないとのこと。

科学者たちが行った実験では、端から端まで到達するのに4秒かかるほどゆっくりと揺れるベッドを用意しました。研究を主導したジュネーブ大学の神経科学者ソフィー・シュワルツさんは「この『揺れ』は非常に穏やかで滑らかですね。母親が赤ちゃんを揺らして寝かしつける時よりも穏やかで、鳩時計の振り子よりもかなり遅い速度です」と話しています。
これが実験に使ったベッド。

被験者の大人たちに「揺れるベッド」と通常の「静止したベッド」の上でそれぞれ1回ずつ45分間の昼寝をしてもらい、頭皮に取り付けた電極で脳の活動を計測しました。すると、「揺れるベッド」で寝た時の被験者は素早く眠りに落ちましたが、この結果は科学者たちの想像の範ちゅうだったのであまり驚かなかったそうです。しかし、計測した脳の活動結果を見てみると両者の間に大きな差ができていたので、これにはさすがの科学者たちも驚いたとのこと。
睡眠は、脳波と眼球運動のパターンで4つのステージとレム睡眠に分類でき、ステージI~IVをまとめてノンレム睡眠(深い眠りの状態)と呼びます。そのステージIIでは「睡眠紡錘波(スピンドル)」という睡眠脳波が出現しますが、「揺れるベッド」で寝た時の被験者はステージIIの時間が伸びたそうです。

by BrandontheMandon
「睡眠紡錘波」は騒音などノイズの多い環境での穏やかな睡眠に関係しており、脳が睡眠者を落ち着かせようとしているサインとも考えられているとのこと。また、新しい情報を記憶する能力や記憶の再構築にとっても重要です。さらに、回復力のある良質な睡眠に関係しているスローオシレーションの増加も見られ、これまで経験的にわかっていた「揺れると眠りやすくなる」という考えがより確固たるものとなりました。

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「我々が見つけようとしたのは、『揺れは眠りを誘う』ということへの科学的な証明です。」と、シュワルツさんと共に研究を実施した神経科学の教授を務めるマイケルさんは言いました。そして、計測した脳波に大きな変化がみられた結果には「全く予期していなかった」と語っています。なお、今回の実験結果は生物学全般を対象としている学術雑誌「カレントバイオロジー」にて発表されました。
「『揺れ』は脳を変えました。今後はこの実験を脳卒中やその他の脳損傷を持つ人々を対象にしてテストする必要があります」とシュワルツさんは言い、不眠症などの一般的な睡眠障害の助けになる可能性があるので、夜の長時間睡眠に与える「揺れ」の効果も調査するそうです。

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