数秒で起動するGoogleの「Chromebook」、ノートパソコンとどこがどう違うのか?まとめ
「Chromebook」は一般的なノートパソコンとは違うとGoogleは定義しており、約2年前からその開発は始まりました。そしてついに本日、SamsungとAcerから実機のChromebookが発表されましたが、そもそもこのChromebookは一体何を目指しており、そしてどこがどのようにすごいのでしょうか?
というわけで、現在実機に実装されているハードウェア的な面だけではなく、GoogleはこのChromebookでどこに行こうとしているのか、そういったもろもろのまとめは以下から。
Chromebook
http://www.google.com/chromebook/
Google Chrome Blog: A new kind of computer: Chromebook
まずChromebookの特徴は以下の通りです。
・起動してネットに接続するのに数分も待たなくてよい
YouTube - Chromebook - Speed
・数秒で起動し、すぐにメールを送受信できる
・Chromebook上のソフトウェアはすべて自動的にバージョンアップされ、時間の経過とともに高速化する
YouTube - Chromebook - Updates
・あなたのアプリ、ゲーム、写真、音楽、ムービー、ドキュメントはあなたがどこにいてもアクセス可能で、あなたのパソコンが壊れてもそれらの全データを失う心配はなく、バックアップを忘れていても問題なくなる
YouTube - Chromebook - Sync
・1日1回充電するだけで1日中ちゃんと稼働し続けられるので、AC電源や電源コードは持ち歩く必要がなくなる
・無線LANだけでなく3G接続も内蔵しているので、携帯電話のようにいつでもどこでも必要なときにネットに接続できる
YouTube - Chromebook - Connectivity
・Chromebookは複数のセキュリティレイヤーを内蔵しているので、アンチウイルスソフトを購入したり更新する必要がない
YouTube - Chromebook - Security
・パソコンを使えるようにするためにソフトウェアをセットアップする時間が不要で、最新の状態に保つための時間も不要となる
つまり、「あらゆる場所で、専門知識不要で、誰でも簡単にネットを利用可能にしていこう」というのがChromebookの目的である、ということです。この全要素を全部まとめて1分50秒で解説しているのが以下のプロモーション用のイメージムービーです。
YouTube - Introducing the Chromebook
もっと具体的に実際のスクリーンショットやChromebookの上にコーヒーが盛大にこぼれてぶっ壊れても大丈夫!というようなリアルなガイドムービーは以下にあります。
YouTube - Chromebook - Guided Tour
上記のすべてを実現するため、Chromebookのコアはウェブブラウザとなっています。つまり、Internet ExplorerやFirefoxやSafariやOperaと同じようなネットの各種ページを見るブラウザをコアにしている、ということです。もちろんコアになっているのはGoogleの作ったブラウザ、Google Chromeで、全世界で1億6000万人以上のアクティブユーザーが利用し続けているため、信頼性も相当のレベルに上がっており、開発を担当しているChromeチームがシームレスに全自動アップデートを繰り返しているため、少しずつ良くなり、少しずつ高速化しています。
すでにウェブ上には何百万ものウェブアプリと何十億人ものユーザーが存在しており、新しいアプリを試したり、友人とアプリを共有するのはリンクをクリックするのと同じくらい簡単です。あらゆる情報がすぐに検索可能で、開発者は埋め込んだりマッシュアップして新しい製品やサービスの開発が容易です。つまり、ウェブは電話からテレビまでありとあらゆるこれまで作られた全プラットフォームを網羅できる存在になっており、GoogleのChromebookはその出入り口として開発された、というわけです。
このことは以下のムービーを見るとすぐに理解できます。
YouTube - Chromebook - Apps
また、HTML5やほかのオープンスタンダードな規格の普及によってウェブアプリはまもなく従来のアプリケーションができたありとあらゆることを同じように実現可能にしてくれるはずだ、とGoogleは考えているそうです。
このGoogleの壮大な計画、Chromebookによってあらゆる場所で専門知識不要で誰でも簡単にネットを利用可能にしていこうという計画の第一段階こそがまさにSamsungとAcerから発表された実機のChromebookというわけです。
今後の展開としては、まずアメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・オランダ・イタリア・スペインで6月15日からオンラインでChromebookが購入可能となります。より多くの国々で今後購入が可能になる予定で、アメリカではAmazon・Best Buy・その他の先行する小売業者から発売されるとのこと。
特にGoogleがこのChromebookで注力するのはビジネス向けと学校教育向けの2つ。両方とも今までのようなパソコンの維持やメンテナンスという本質とはかけ離れた部分で複雑・高価・不安定といった要因と戦い続けてきた場所であり、ビジネスや学校教育の現場でこそ、「メンテナンス不要」「バックアップ不要」「アンチウイルスルソフト不要」「いつでもどこでもすぐに起動してネット接続」というChromebookの利点が生きてくると考えているようです。
そのため、Chromebookはビジネスと教育機関向けのサービス(Chromebooks for Business and Education)も用意されており、クラウド・マネージメント・コンソールを経由することで、リモートからユーザーの管理・デバイスの管理・アプリケーションの管理・ポリシーの管理が可能です。つまり、会社や学校のパソコンがどこにあろうが、遠隔操作することでちゃんと管理できますよ、ということです。
以下のムービーを見るとそのことがよくわかります。
YouTube - Chromebook - Business and Education Overview
このビジネスと教育機関向けのサービスはエンタープレイズレベルのサポートと故障した場合の修理保証、修理期間中に同等機能の代替機と交換すること、などが含まれています。使い方がわからなくてもGoogleがサポートして回答をしてくれるようになっており、Chromebookが故障した際にはすぐに修理可能、修理中はChromebookが手元からなくなりますが、全データはネット上にあるので、同等機能の代替機を貸し出してもらえばすぐに元の環境に戻ることが可能、自分のChromebookが修理から戻ってきたらまたすぐに元の環境に戻って作業を止めることなく続行できる、というわけです。
このサービスは月額課金方式で、ビジネス向けは1ヶ月28ドル(約2200円)、教育機関向けは1ヶ月20ドル(約1600円)となっています。
実際に企業でChromebookを利用している例が以下のムービーです。いつでもどこでもネットに接続できるということの利点を最大に活かしている事例がてんこ盛り状態になっています。
YouTube - Chromebook - Jason's Deli
教育現場でChromebookを使うとどうなるのかという事例のムービーもあります。「携帯電話持ち込み禁止・使用禁止」みたいなのを校内にぺたぺたと貼りまくる日本の教育現場では実現するのは不可能な気もしますが……。
YouTube - Chromebook - KIPP Los Angeles
おそらく、Googleがこれまで開発してきたすべてのものを集約するのがこのChromebookであり、今後開発されるGoogleのあらゆるサービスもこのChromebookに集約されることになると思われます。現在までにGoogleが開発してきたサービスやソフトをざっと眺めるだけでも、たいていのことができてしまうことがわかります。
・Windows/Mac OS X/LinuxなどのOS部分
↓
・Chrome OS/Android(今回のコアとなる部分)
・Internet Explorer/Firefox/Safari/Opera
↓
・Google Chrome(今回のコアとなるChrome OSの信頼性を担保するだけの大規模なユーザー数および実際に使用されてきたという実績)
・Outlook/Thunderbird/Beckyなどのメール機能
↓
・Gmail(スマートフォンからもアクセス可能、約7.5GBの大容量メールサービス、有料で最大16TBまで容量を増やすことも可能)
・MS-IME/ATOKなどの日本語入力
↓
・Google 日本語入力
・Outlookなどの予定管理機能
↓
・Google カレンダー
・Word/Excel/PowerPointなどの各種オフィスソフト
↓
・Google ドキュメント
・画像や写真の管理/編集/共有
↓
・Picasa
・地図/乗り換え
↓
・Google マップ、Google Earth、Google 乗換案内
・音声チャット/メッセンジャー
↓
・Google チャット・Google トーク
さらにそのほかのGoogleの各種サービス一覧、今までGoogleが無料で提供してきたあらゆるものとそれらを利用したウェブサービス、Googleが支援してきたオープンな仕組みや規格、それらを利用して開発されたありとあらゆるネット上のアプリ・サービスが全部、最終的にはChromebookの武器となり、利点となり、特徴となるため、究極的には売上につながっていき、シェアが増大すればするほど、Googleの検索結果に掲載されている広告収益につながっていくため、さらにその他のサービスもハードもソフトも安価になっていき……という感じの未来が誕生する可能性がある、と予想できます。
これが吉と出るか、はたまた凶と出るかは、利用するユーザー次第です。
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