屋根から下りられなくなった1匹のネコを助けるため、総勢25人もの消防士が派遣される
動物の救助がニュースの地方欄などで「心温まるニュース」として取り上げられることもありますが、ちょっとそれとは一線を画した大騒ぎがイギリスで起こりました。
なんと屋根から下りられなくなった1匹のネコを助けるために、総勢25名もの消防団員が派遣されてしまったということです。
ネコ1匹のために25人の消防団員が出動した珍事の詳細は以下から。Operation overkill: 25 firemen and five engines sent to rescue one cat stranded on roof | Mail Online
この記事によると、サフォーク州の消防団が民家の2階の屋根に上ったまま下りられなくなったネコを助けるために、常識をはるかに上回る、なんと総勢25名の消防士が出動してしまったそうです。
国が定めた「安全衛生に関する規則」に基づいて、1匹のネコを助けるために5組の消防隊、人数にして総勢25人の消防士が出動したわけですが、そのコストは概算でも1500ポンド(約20万7千円)に及ぶとされており、かなりの大ごとになっているのが分かります。
サフォーク消防団ははしご車と2名の屈強な隊員を、わざわざ現場の民家から約60マイル(約96.5km)離れたところから派遣。それ以外にも、高所での作業について特別訓練を積んだ隊員を、現場から20マイル~30マイル(約32~48km)離れた場所からそれぞれ1名ずつ派遣したとのこと。
しかし皮肉なことに、遠方から駆けつけた隊員を含め、多数の消防隊員が駆けつけたにもかかわらず、はしごをかけて屋根に上った地元消防団の隊員によってネコはあっさり救出され、彼らは特に何をすることもなく帰還することになったそうです。消防士の救助活動ガイドラインでは、はしごに上って救助活動をすることは一時的であれば認められていたため、特別に訓練された消防士でなくともネコを助けることは可能だったようです。
どうしてこのような事態となったのかという理由ですが、消防士組合によると、サフォーク消防団はつい最近、2005年に基準が引き上げられた国の「高所作業する職員の安全を保証する規則」を取り入れたそうで、それを遵守したために、遠方からわざわざ特殊訓練を積んだ隊員を呼び寄せることになったようです。また、サフォーク州議会は、動物保護団体の「RSPCA」による通報に応える形で、国の規則に則って消防隊が出動したまでだと表明していますが、結果的にその出動命令は空振りに終わってしまっています。
イギリスでも消防団の出動にかかるコストは税金からまかなわれています。納税者団体のスポークスマンは、「たった1匹のネコを助けるために、5つもの消防隊が出動するのはどう考えてもばかげています。もちろん消防士の安全は守られるべきですが、規則に過剰反応し、お役所仕事的なやり方でいわゆる楽な仕事に注力しすぎるのはやりすぎで、税金の無駄使いです」とコメントしています。
また、消防士団体のサフォーク支部を統括するAndy Vingoe部長は、「ネコが屋根から下りられなくなったのだったら、まず飼い主が心配してペットを救おうとするはずで、飼い主の救助行為と消防団のそれは正直なところ大差ありません。ネコ1匹に消防団を5つも派遣してしまうのは明らかにやりすぎで、もしそのタイミングで別の重大事件が起こってしまったらどうなるか、考えただけでも恐ろしいことです」と苦言を呈しています。
この「事件」を目撃した隣人のTeresa Saundersさん(49歳)は、「ネコの飼い主は誰だか知らないけれど、消防士さんはすばやくネコを助けてくれて、しっかり任務をやりとげてくれたの」とインタビューに答えているため、内情のごたごたとは裏腹に、一市民から見たらとりあえずこの事件は円満に解決しているようです。ちなみに、ネコは救助後すぐにどこかへ駆けていってしまったとされています。
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