東京都が絵画商法業者(通称:エウリアン)に行政処分、若者を執拗に勧誘し高額な絵画を販売
By angrydicemoose
東京都が「絵画商法」を展開する業者(通称:エウリアン、「絵売り」の語呂合わせから」)に対して行政処分を行ったことを発表しました。
若者を執拗に勧誘して高額な絵画を売りつけるという強引な販売手法に対して改善措置を取るように指示されているほか、業者名も公表されています。
具体的な販売手法の詳細や東京都に寄せられた相談事例など、エウリアンの実態は以下から。
若者らに高額な絵画を販売した事業者に行政処分を実施|東京都
東京都の報道発表資料によると、絵画販売業者3社と販売業務を支援していた絵画卸売業者1社に対して、特定商取引に関する法律第7条に基づいて改善措置を取るよう指示処分を行ったほか、東京都消費生活条例第48条に基づく是正勧告を行ったそうです。
指示の内容及び勧告に対する改善措置については2011年3月24日までに都知事あてに報告させるとしており、指示に従わない場合は業務停止命令が下されるほか、勧告に従わない場合は従わない旨を公表するとのこと。
今回の処分は以下の4社が秋葉原や銀座などの繁華街において、販売目的を明らかにせずに20~30代の若者に声をかけて店舗に誘い、執拗な勧誘を行っていたことを受けたもので、主な誘引方法も公開されています。
■販売業者
・アートクライミング株式会社
主な誘引方法:上野や秋葉原の路上や店頭で販売目的等を告げずに、店舗に連れて行く
・株式会社アトリエ凛
主な誘引方法:秋葉原の路上で販売目的等を告げずに、店舗に連れて行く
・株式会社葵美術
主な誘引方法:銀座の店頭で販売目的を告げずに、店舗に呼びこむ
■卸売業者
・アールブリアン株式会社
取引行為に対する関与の内容:商品の提供、売上・顧客管理、顧客相談対応など
また、今回処分の対象となった業者の行っていた販売方法の具体例が「相談事例」として掲載されていますが、一度販売会場に入ってしまうとなかなか帰らせてもらえず、長時間にわたる勧誘を受け、最終的には疲れて買うことを承諾してしまった……というケースがみられます。
相談事例|東京都
【事例・アートクライミング】
消費者Aは、平成22年1月の夕方、秋葉原駅の駅前で、20代の女性から、「ちょっと絵を見ていきませんか。」、「場所はすぐ近くですから」と声をかけられた後、その女性に連れられて、会場に行った。
絵を見終わって、Aが帰ろうとしていたところ、従業員は「どの絵がよかったですか。」と聞いた。Aは近くの絵を適当に指したところ、「あの絵を選ぶ人はめったにいないんですよ」と話して、椅子に座るように促した。それから、作品のことや作者の経歴などについて、説明をし、この絵は「枚数もあまり出ていない」などと繰り返し熱心に勧めてきた。
最初、その絵は高額な値札がついていたので、Aは、とても買うことができないと話した。その後、従業員は「交渉してくる」と言って、一旦席を外して戻って来たところ、絵の価格は20万円下がった。それでも、Aは、「お金はないし、無理です」と、断った。
それから、また、別な人と戻ってきて、さらに価格を下げた。Aが返事をせずにためらっていると「趣味に使うお金を回してみてはどう」と、繰り返し説明をした。従業員は、どんどん話し続け、帰りたいと口を挟めるような状態ではなかったので、時間が過ぎていった。Aは、空腹で、疲れてしまい、帰りたい気持ちもあって、最終的には、断りきれず、買うことになった。
帰る頃には、会場を閉めるくらいの時間だったので、家についたのは夜遅い時間になっていた。
【事例・アトリエ凛】
消費者Bは、平成22年1月の夜、秋葉原駅へ向かっていたところ、電気街口の手前当たりの路上で、20代後半から30代くらいの女性が券を渡してきた。Bは受け取って、立ち去ろうとしたが、女性が券をすぐに手渡さなかったので、立ち止まる形になった。
その女性は「絵を見ないか」「画廊で絵を見ていかないか」と、話しかけた。Bは、絵を販売するような話はなかったので、鑑賞するだけだと思って、その会場に行った。
会場に入って、絵を一通り見終わったとき、従業員は「見た絵の中で一番気になったのはどれですか」とたずねた。Bが答えたところ、その絵の前で説明を始めた。従業員は、絵の作者や絵の製法などについて説明をした。「原版を作るのが大変で、一度作ると、再版するのは難しいので、なかなか多く流通しないんですよ」「この絵を選ぶなんて、芸術関係でもやっていたんですか」などと話してきた。
Bは、この絵は高いから無理ですと断ったところ、従業員は、「毎月いくらなら払えますか」という話をして、「1ヶ月1万円を切ったら安くないですか」と話してきた。Bは、「1万円でも高いですよ」と言ったら、繰り返し説明するような感じになった。
それでも、従業員が熱心に説明するので、買う感じになっていった。深夜近くになっていたので、こんな時間になっていたことに改めて驚いた。最終的に、買うことになって、契約書などを書いた。
家に戻ったのは、深夜を回った時間だった。
【事例・葵美術】
消費者Cは、平成22年5月の昼頃、銀座にある店の前で、「ギャラリーで展示会をしています」と声をかけられた。20代前半くらいの女性は、店に入るように促した。女性が必死な様子だったので、絵を見るだけならと思い店に入った。
Cはすぐに出るつもりだったので、従業員の説明を聞き流しながら、絵を見た後、出口に向かおうとしたところ、従業員は「家に飾るとしたら、どれがいいですか」「どれが一番気に入りましたか」と聞いてきた。Cは、近くの絵を指したところ、その絵を外して、ギャラリーの角に掛けかえた。椅子を持ってきて、「座って見るのが一番いいですよ」と言って、座るように促し、作家の説明をした。適当に相槌をうちながら、話が続いた。そのあと、別な人が引き継いで話した。
その説明はずっと続いて終わらない感じで、Cはどんどん疲れていった。それから、「いくらだったら買う」と言ったので、Cは、勧められても困ると断った。
最後のほうは、二人がかりで、説得されるような感じだったので、Cは、疲れてしまい、買いますと伝えた。昼食も食べていなかったし、狭いところでずっと帰れない状態だったので、帰る頃には、非常にくたくただった。
ちなみにこれらの業者が販売している「絵画」は販売価格数十万円におよぶ高額なものとなっていますが、複製版画であるなどするため買取業者による買取価格は非常に低く、実際の裁判でも「不公正な販売価格である」という判断が下されているケースがあるという点にも注意が必要です。
絵画商法 | 藤森克美法律事務所
「(本件絵画は)アクリル画を下絵として被控訴人アールブリアン株式会社が制作した複製版画であって,買取業者による買取価格は5000円から1万2000円であり,これら業者による販売価格は買取価格より高くなるとしても限度があるものであり,本件版画の価値が高く評価されているとはおよそいえない」
「本件版画が制作に画家が関わるオリジナル版画と異なる複製版画であることや上記の買取業者の買取価格等に照らして,市場価格と比較して著しく高い販売価格であるということができる」と判示
ほとんどの店舗が閉鎖してしまい、一足先に絵画商法が廃れてしまった感のある大阪の電気店街・日本橋では絵画商法に代わって服を売りつける店舗が存在感を増すようになりましたが、今回の行政処分で秋葉原の絵画商法も転機を迎えることになるのでしょうか。
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