サイエンス

下水に混じる向精神薬が魚の脳に影響する可能性

by nirbhao

モントリオール市民の4人に1人が何らかの抗うつ薬を使用しているそうです。モントリオール大学の化学者らにより、下水を通じてセントローレンス川などの水路へ流れ出したそれらの薬物が河川に生息する魚の組織に蓄積されていることが確認され、魚の脳への影響、ひいては生態系への影響が懸念されています。

詳細は以下から。Montrealers are feeding fish Prozac

モントリオールはセントローレンス川とオタワ川の合流点にある川中島に発展した都市で、周囲を川に囲まれています。長年に渡りモントリオール周辺の水系の化学汚染を調査してきたモントリオール大学の化学者Sébastien Sauvé博士らは、付近に生息するカワマスの組織に抗うつ剤が蓄積されていることを確認しました。


モントリオールの下水処理システムは世界で3番目の規模と言われ、多くの大都市で採用されている処理システムと似た「典型的」と言えるもののため、今回の調査結果は国際的に重要な意味を持つだろうとのこと。「モントリオールの下水はとてもベーシックな処理システムを採用していて、基本的に固体しか除去されず、水の殺菌は行われません。しかし、抗うつ剤は化学構造上、下水から取り除くことが非常に困難で、モントリオールよりはるかに高性能な処理システムだとしても抗うつ剤の除去は難しいでしょう」とSauvé博士は語っています。

モントリールの下水処理施設。


「抗うつ剤が人間にとってネガティヴな副作用を持つことは知られていますが、これらの化学物質が魚にとって、ひいてはセントローレンス川の生態系にとって、具体的にどのように影響するかということはまだ不明です」と語るSauvé博士ですが、水生生物にとって問題になるのは抗うつ剤の急性毒性(1回の大量投与により直後に発現する毒性)ではなく慢性毒性だとした上で、脳のセロトニン調節にかかわるバイオマーカーの測定により、魚への生物学的な影響を推定することができるのではないかと研究者たちは示唆しています。

また、人間への差し迫った危険性はないこともSauvé博士は強調しています。「川に流れ出した抗うつ剤は、オリンピックサイズ(50m×25m)の競技用プールにたった1粒の塩を溶かしたようなものです。人間に影響する濃度ではありません。ここで釣りをするなら、抗うつ剤より微量金属の方が心配です。しかし、川の生態系への影響は考えられ、これはモントリオールだけでなく世界中の都市で懸念すべき問題でしょう」

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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