女性の涙には男性の性欲を減退させる成分が含まれる
笑顔より泣き顔の女性が好き、という人もいるかもしれませんが、生物学的には男性は、泣いている女性には性的魅力を感じにくくできているようです。
イスラエルで行われた実験により、女性の涙から揮発する成分を吸い込んだ男性では、テストステロンのレベルが下がり、脳の中で性的興奮をつかさどる部分の活動が低下することが明らかになっています。
詳細は以下から。A Woman's Tears: The Anti-Viagra? - ScienceNOW
動物の体液には、同種の個体同士で「現在交尾が可能である」「外敵が近づいている」などといったさまざまな情報をやりとりするための化学信号が含まれています。人間でも、例えば汗のにおいは年齢や健康状態などにより変化することや、女性は自分とHLA型が遠い男性の汗のにおいを好むといったことが判明しています。
では、涙はどうなのでしょうか?マウスのオスの涙には、メスが交尾に応じやすくなるタンパク質が含まれるなど、動物の涙の中には化学的な情報伝達に使われる成分が含まれるものもあることがわかっています。しかし、げっ歯類のように毛繕いをしあうことのない人間では、涙で化学的な情報伝達ができるほど個体同士が至近距離に近づく機会は少ないため、涙は視覚的な情報伝達手段に過ぎないと考えられてきました。
イスラエル・ワイツマン科学研究所の神経生物学者Noam Sobel博士はこれに疑問を感じたそうです。悲しみや苦痛により流れる涙は、目に入ったごみを洗い流すために分泌される涙とは組成が異なることがわかっています。情動により流れる人間の涙には、異性へ向けた化学信号も含まれているのではないか、と考えたSobel博士は、悲しい映画を見た女性から採取した涙を男性にかいでもらう実験を行い、女性の涙には男性の性欲を抑える成分が含まれていることを発見したそうです。
実験では自在に涙を出すことができるという女性2名の協力を受け、1979年のフランコ・ゼフィレッリ監督作「チャンプ」で、少年が父の死をみとる場面を見ながら涙を採取してもらいました。
女性が涙を採取する様子の動画はこちらから見ることができます。
次に、23歳から32歳の24名の男性に、採取後数分の女性の涙のサンプルを鼻に近づけ10回深呼吸してもらい、涙を染み込ませたコットンを鼻の下にはりつけてもらいました。
対照群には食塩水を同様にかいでもらい、鼻のしたに付着させたとのこと。なお、この食塩水は、本物の涙に付着した化粧品や香水のにおいなどの条件を一致させるためあらかじめ女性の顔の上を流れさせたものを使用し、被験者の男性たちは、涙と食塩水のにおいをかぎ分けることはできなかったとのこと。
この状態で、「悲しい」表情と「うれしい」表情を合成してどちらともつかない表情とした女性の顔写真を評価してもらったところ、涙をかいだ男性も食塩水をかいだ男性も、表情の判定に差はなかったものの、写真の女性の魅力を評価する際には、涙をかいだ男性のほうが低い評価を下したそうです。
また、涙をかいだ男性は心拍数と皮膚温度、テストステロン濃度が下がることも確認され、これは性的な興奮が抑制されることを示唆するとのこと。また、fMRIにより、涙をかいだ男性では、エロティックな画像を見た際の脳の視床下部と紡錘状回の反応が通常より弱くなることも確認されました。
月経期間中に女性は涙を流しやすくなるそうですが、フェロモンやボディ・ランゲージと同様に、涙も異性間で生殖にかかわる情報を伝達する手段の一つであると考えると、月経期間中によく泣くことは妊娠する可能性の低い期間に性交の機会を減らすことにつながり、実に理にかなったことだと述べています。
トロント大学の神経学者Adam Anderson博士は、今回の研究結果は「隠された涙の起源」を明るみに出すものだと述べています。目からごみを洗い流すための液体が化学信号を持つようになり、その後悲しみを表すようになったのだろうと、Anderson博士は考えるそうです。
また、東京大学の分子生物学者でマウス間の生化学的シグナルを研究する東原和成教授は、今回の実験では男性の性的興奮を抑制する具体的な成分は特定されておらず、伝達が嗅覚系を通じたものなのか皮膚を通してのものなのかも不明であることを指摘し、異性間の生化学的シグナルとしての涙の重要性は判断しがたいと述べています。
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