関西勢の強さの源、栗東トレーニングセンターの坂路コースを見学してきた
中央競馬の競走馬は、茨城県にある美浦トレーニングセンターか滋賀県にある栗東トレーニングセンターの厩舎で競走のための調教を受けるわけですが、近年は栗東で調教を受けた馬(関西馬)が美浦で調教を受けた馬(関東馬)を圧倒しています。この最も大きな要因だと考えられているのが、栗東トレセンにある坂路コースです。
平坦な土地に作られた美浦トレセンに対して、栗東は敷地全体に起伏が激しく、中でも坂路コースは美浦のものより角度が急で、馬の心肺機能を高めるのに役立っていると考えられています。日本ダービー調教公開で出走予定の各馬の様子を見たあとは、栗東自慢の坂路コースにあるスタンドへ行ってきました。
坂路スタンドへ向かう途中の追馬場(準備運動に使われる場所)でダービー出走馬・サンディエゴシチーを発見。
さらに、坂路コースの逍遥馬道(馬をリラックスさせるために歩く通路)には、先日のNHKマイルカップをレコード勝ちしてダービーへ挑むダノンシャンティの姿も。鞍上は安藤勝己騎手。
坂路スタンドの中はこんな感じになっています。正面に真っ直ぐ見えているのが坂路コース、右手奥にはさきほど見学したコースの反対側が見えています。
坂路コースは写真奥から手前に向かって上がってくる形になっています。コース上に緑色のカメラのようなものが取り付けられていますが、これは上がってくる馬のゼッケンにつけられているバーコードを読み取ってその馬のタイムを計測している機器。
このように、ゼッケンにはバーコードがついています。
向かって右手側のモニターでは坂路ゴールまで600m、400m、200mの地点をカメラが写しており、走破タイムが表示されています。スポーツ新聞の記者はこの数字をメモして記事に活かしているわけですね。
ちょうどコースを上がってくる馬たちがいました。
栗東トレーニングセンターの坂路コース - YouTube
坂路コース入口に向けて、逍遥馬道を歩いて行く馬たち。
追馬場と逍遙馬道の関係はこんな感じになっています。
追馬場に馬が増えてきました。これから坂路での調教に挑む馬が多いということでしょう。
これは坂路コースを上がりきった側。
ちょうど坂路コースを走り終えたダノンシャンティの姿が見えました。
その後からはローズキングダム。火曜日に挫跖が見つかり、この日は軽い調整だけだったようです。
続いては騎手の乗っていない馬が走ってきました。どうやら途中で落馬があったようです。
体重400kgから500kgほどある馬が時速60kmぐらいで走ってくるわけで、もし他の馬にぶつかるととても危険。すぐに坂路の上で捕まっていました。
ちなみに、騎手らはこのようなプロテクターを着けています。馬の蹴る力は強力で、調教師や調教助手でも蹴られて亡くなった方がいるほど。穏やかに見える馬ですが、いろいろと危険です。
再び追馬場を見ると、取材のカメラが来ていました。ダノンシャンティらが走り終えたあとなので、その様子を撮影していたようです。
改めて、トラックの方に目をやってみるとゲートのところに人が集まっています。
これはゲート試験。競走馬はレースのときにこのゲートから飛び出していきますが、馬はもともと臆病なのでこういう狭いところは苦手です。そのため、本当にレースの時にちゃんとゲートから出られるかをこうして試験し、合格しないと出走できないという仕組みになっています。ちなみに、ゲートの1番から4番までが試験用(本番用)で、5番からは練習のために無音(ゲートが開くときの音がしない)になっており、さらに番号が大きいところは本番のものよりゲートが広くなっています。
このとき行われていた試験はスムーズにできたように見えました。
栗東トレーニングセンターのゲート試験 - YouTube
運転免許試験で落ちる人が少ないように、ゲート試験もほとんどの馬が受かる…かというと、そんなこともありません。かつてラガーレグルスという馬は皐月賞で3番人気になりながらもゲート内で暴れて騎手を振り落としてしまい、競走中止となりました。このとき馬券は有効だったために、約56億円分が一瞬でパーに。後日、ラガーレグルスは改めてゲート試験を受けることになりましたが、東京競馬場で昼休みに行ったこともあり観衆が集まり、中には大声を上げたり傘で音を立てたりした人がいたため、ラガーレグルスはゲート内で立ち上がってしまい、試験不合格となった……というエピソードがあります。
坂路コースへの行き帰りに、このようなウッドチップの山を見ることができます。コースに敷かれたチップはもちろん交換が必要なため、このようにストックが山盛りなのです。
坂路コースを後にして、先ほどとは別のスタンド(右回りスタンド)にやってきました。ここではダービーに向けての合同記者会見が行われていました。
こちらのスタンドはちょうどゴール前になるということもあって、多くの調教師や競馬記者の人が詰めていました。
蹄鉄にはいろいろな種類がある……という資料のはずなのですが、持出厳禁なのになぜかすべて出払っていました。
記者会見が少し遅れるようだったので外へ。
さきほど調教公開にゲスト出演してくれた岩田康誠騎手と四位洋文騎手を発見。四位騎手はダービーではルーラーシップに騎乗します。四位騎手といえば2007年にウオッカ、2008年にディープスカイとダービーを連覇した騎手。ダービー2年連続制覇は武豊騎手に次ぐ2人目の記録、牡馬・牝馬でのダービー制覇は史上初の記録です。
騎手なのに青ではなくシルバー(白)のヘルメットでしたが、これは馬場保全委員の証。
そこへ佐藤哲三騎手が現れました。なんと個別の写真撮影にも応じてくれるというサービスっぷりでした。
その後、さらにゲシュタルトに騎乗する池添謙一騎手も登場。忙しい中、写真撮影に時間を割いてくれました。
馬に乗って去っていくのは幸英明騎手。2003年にスティルインラブで牝馬三冠を達成しています。
後ろ姿ですが河内洋調教師。有名な人があちこちにいて驚くばかりですが、そういう場所に見学に来ているのだから当然のことですね。
この青い屋根の建物は計量所、馬の体重を量っています。馬体重の馬の調子を知る上での大事な要素の一つです。
最後は白井壽昭厩舎への訪問です。一般人が厩舎に入るチャンスは滅多にありませんが、厩舎の中はどのようになっているのでしょうか。
・つづき
大卒で厩務員になった経歴を持つ白井壽昭調教師の厩舎を訪問
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