広大な敷地にそびえ立つ倉庫群、劇団四季を影で支える「四季演劇資料センター」に潜入してきました~後編~
前編から引き続き、後編でも劇団四季が所有する広大な倉庫の中の様子を紹介していきます。衣裳やかつらなど、小道具に分類されるものも保管されているなど、舞台にかかわるすべての道具がこの場所へと集められ、そして全国へと旅だっていくようです。
取材時は冬期休館中だった「四季演劇資料館」の中もこの日だけ特別見学させてもらい、今年度用に変更する前の展示をぐるりと見てきました。
詳細は以下から。荷出しが始まるまで、引き続き倉庫の中を見せてもらうことに。四季の歴史上特別な意味を持つ「オンディーヌ」という演目で使われる大規模な機材。舞台上で水を使った演出をするためのものです。
ここがぐるぐると回って、柱全体から水が出る仕組みになっています。
水を止めた後、ぽたぽたと水滴が舞台上に垂れないように受け皿も搭載しています。
オンディーヌのセットは大きく、倉庫のかなりの割合を占めていました。
火山が噴火し溶岩が流れでている様子を表現した壁の部分。
大きな顔がこちらを見ています。ちょっぴり怖いです。
これもまた「オンディーヌ」のセットで特徴的な船のセット。顔があるせいか、つい目が行ってしまいます。
水を蓄えておくタンクも巨大。小学校の屋上などにある貯水タンクを思い出させるスケールです。
「ユタと不思議な仲間たち」で使われる小道具のすすき、これは実は造花などではなく、この倉庫近辺の敷地に生えているものを刈ってきて使っているとのこと。
こちらの桜はさすがに造花です。
すすきを刈るための帽子らしいのですが、ここにあると何かの舞台の小道具に見えてしまいます。
こんな風に釣るして乾かします。すすきが取れる季節は当然限られていて、いつ必要とされるか分からないので毎年こうしてストックを作っているとか。
「エクウス(馬)」の荷出しが始まりました。荷出しと同様、人力メインでえっさほいさと運び入れます。
どんどん運び出されていきます。
高く積み上げたステージシート(舞台上に設けられた座席)を下に降ろしていきます。この回の便はシンプルな形のものが多かったせいかさくさくと終わってしまいました。
引き続きまだまだ林立している倉庫を見せてもらいます。A8倉庫へ。
ちょっと小さめな倉庫だな、と感じてしまいました。どの倉庫も広大なので、だんだん空間把握能力が狂ってきているようです。
「地がすり」という、舞台の上に敷く布地がくるくると巻いて保管されています。
トラックのフロント部分だけがあるというのは不思議な感じ。
これだけの広さを持ってしても十分とは言い切れないほどのセットの量に圧倒されます。
「コンタクト」のセットや幕などは1カ所にまとめられていました。
「JCSS」は「ジーザス・クライスト=スーパースター」の略。「ジャポ」というのは2パターンある演出方法のうち、日本風のセットや衣裳などの「ジャポネスク版」のものであることを示しています。
白い鉄骨がメインのセットとなっています。
車輪のようなパーツも多く保管されていました。
「トロイ戦争は起こらないだろう」のセットたち。
A6倉庫へと足を進めます。
ほかの倉庫に比べて平べったいのは新しい倉庫だからだとか。以前に作っていたものは縦に長い形状で建てられていたのが、だんだん平べったくするようにシフトしていったそうです。
とても緑の多いこのセット群は、2008年に自由劇場で上演された「赤毛のアン」のものです。
街灯など、小道具がそのままおかれているものが多いと感じました。
原型の残っている部分だけを切り取ってみると、なぜか物語が始まりそうな雰囲気が生まれます。それだけセットが作り込まれているということかもしれません。
その後、衣裳保管室へと案内してもらいました。これは金属製の衣裳箱。
すべて金属製なのかと思いきや、輸送の都合上木箱も第一線で使われているとのことでした。
洗える衣裳と稽古着などを洗濯するために、洗濯機も運びます。
それが何と全自動ではなく二層式。洗う→乾かす→干すという行程をばらばらに行った方が効率がいいからということで、新しく買う場合も二層式を選んで買っているとか。
「アイーダ」など上演中の舞台の衣装棚は空っぽ。今ごろ舞台の上で活躍しているのだろうかとつい思いを馳せてしまいます。
ちなみに、「アイーダ」で使われているのはこんな衣装。エジプトを舞台としたお話で、主人公のアイーダは一国の王女でありながら、比較的シンプルな衣装の多い役柄。
by 下坂敦俊
段ボールに入れて収納されているものもありました。
洋服とはいえこれだけの量になると運ぶのは簡単ではありません。2階にある衣装室にはリフトで持ち上げて運ぶようです。
倉庫ではありますが、かつらなどを整えるための小物類が一通りそろっています。
くしやブラシが何本も用意されています。
かつらがずらりと並べられています。
「ハムレット」のかつらが置かれていました。
どこにどの演目のものがあるのか、ホワイトボードで管理しているようです。このかつらの件に限らず、どこに何があるかは結構有機的に管理されているようで、システム化されてすべてプログラムによって機械が管理……というようなサイバーなものではなく、人の手で管理されているようです。
「夢から醒めた夢」の衣裳。当然のことではありますが、役者さんごとに衣裳のサイズは異なります。一つの役に数名がキャストされることがある四季では、衣裳はかなり膨大な量になりそうです。
これはかなりきらびやかな衣装たち。「夢夢(「夢から醒めた夢」)は映えるからね」とわざわざ衣装にかかっている幕を取ってもらいました。
これもかなりインパクトのある衣装です。着ている俳優さんが重さを感じそうなボリューム。
「王様の秘密」という、王様の耳はロバの耳を題材にした演目の衣装もありました。
最後に、取材時には冬期休館中だった「四季演劇資料館」の中も見学させてもらいました。2010年度は4月24日(土)から開館していますが、これから紹介する展示とは内容が変更されていますのでご了承ください。
開館期間は4月~11月。近隣にスキー場があるような場所なので、雪に閉ざされてしまうためです。入場料は大人600円、子供300円という価格設定。
受付には周辺の観光ガイドなども置かれています。
こちらは「ミュージカル李香蘭」の小道具のはちまきなど。
「ユタと不思議な仲間たち」で実際に使われたお面。
壁面にはポスターや写真などが掲示されています。
「ジーザス・クライスト=スーパースター」の舞台模型。
歴史ある劇団のため、昔を思わせる感慨深げなポスターも展示されていました。
1998年長野冬季オリンピックで浅利慶太代表が演出を務めた際の関連物がいろいろと展示されています。聖火をともすトーチなど、貴重なものがずらり。
「オンディーヌ」の舞台模型。これは第1幕。
上からのぞくと、幕が重層的に重なって奥行きが演出されているのが分かります。
第2幕。
金と銀のいすが精巧に作られています。
実際に使われた小道具はこちら。
特徴的なオブジェ。
第3幕。
細部まで作り込まれています。
2009年までの特別展示は「トロイ戦争は起こらないだろう」のセットと衣装。巨大な足が印象的です。現在は荷出しを見せてもらった「エクウス(馬)」に変更となっています。
「エクウス(馬)」といえばこのマスクが印象的ですが、これも見ることができるのでしょうか。
by 上原タカシ ©Disney
取材時には冬期閉館中の札がかかっていました。
ちなみにこの木でできた塀は飾りではなく、こんな風に雪がうずたかく積もってしまうので、入り口までの通路が封鎖されないように守る役割を果たしています。
雪解けを迎えた資料館はちょっと印象が違います。劇団のこれまでを紹介する意味もあってか、比較的歴史のある演目が中心となっていますが、劇団四季の演目を見たことがある人ならふむふむと楽しめる展示内容となっていました。倉庫は一般公開されていませんが、そこから直接運ばれてきた、実際に使われた舞台セットを見ることができるので、興味のある人は足を運んでみて下さい。
劇団四季の規模の大きさを紹介してきましたが、舞台上で演技を見せてくれる「俳優」の育成にも他に類をみない力の入れ方で取り組んでおり、その一端が見えるのが稽古場などを含む複合施設「四季芸術センター」。横浜・あざみ野にあるこちらの施設にもお邪魔して、実際のレッスンの様子をじっくり見せてもらいました。
・つづき
劇団四季のバレエと発声のレッスンをじっくり見学、舞台俳優の基礎はここから生まれる - GIGAZINE
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