レビュー

「サンデーマガジン創刊号復刻版」をもらってきたのでじっくりと読み比べてみました


というわけで、今回のイベント終了後におみやげとしてサンデーとマガジンの創刊号を復刻したものをもらってきました。実際には今回の取材はここまでネタになるものがあるとは思っていなかったので「この創刊号のおみやげだけでいいかなー」とか甘く考えていたのですが、さすがに50周年記念と言うだけのことはあって気合いの入った充実っぷりでした。

そんな永遠のライバル関係にある両誌の創刊号ということで、実際にどのような内容なのか非常に気になるところ。創刊日はいずれも同一、価格は週刊少年サンデーが30円、週刊少年マガジンが40円。この10円の差は「サンデー創刊物語~夢のはじまり~」によると、最後の最後になって雑誌の生命線ともなるこの「定価」をどう設定するかで、両編集部が互いに定価部分を空欄にしたまま印刷所に持ち込み、相手の定価を見てからそれよりも低い定価を付けようということになって膠着状態に突入、最終的にはギリギリまで粘ったサンデー側がマガジンの定価を見て、10円低い定価を付けた、ということになっています。

サンデーとマガジンの創刊号フォトレビューは以下から。
この中に入っているらしい


創刊号登場


まずは少年サンデーから。創刊号の表紙は当時入団2年目の長嶋茂雄選手。当時巨人軍のキャンプ地だった兵庫県明石市の明石球場で撮影しており、球団ではなく、直接長嶋氏本人に電話して許可取りをしていたそうです。


最初のページはこんな感じ、王貞治。


当時月間連載7本を抱えていたのにさらに週刊少年サンデーでも連載を始めた手塚治虫の漫画が掲載されています。右にあるページの「便利すぎるロボットくん」も気になる。


創刊号の目次はこんな感じ。漫画連載は5本。


とはいうものの、この5本がかなり強力で、1つは手塚治虫、さらに藤子不二雄もいます。サンデー編集部が藤子不二雄から週刊連載の約束を取り付けた2日後に、マガジン編集部も藤子不二雄のもとに向かったが、既にサンデーで週刊連載をOKしていたため、マガジンには連載できなかったそうです。


で、こっちがその週刊少年マガジン。価格がサンデーに比べると10円高くなってしまったものの、付録が3冊も付いており、それでなんとかイーブン状態か。この表紙の人物は朝潮太郎。


最初のページはこんな感じ。「特写」と呼ばれるページで、今で言うところの「グラビア」。やはりスポーツがメイン。


目次を見るとこんな感じ。漫画連載はサンデーと同じく5本。しかしながら知名度やページ数ではサンデーの方が上回る形に。というか、週刊雑誌ではなく漫画雑誌という視点で見ると、創刊号では明らかにサンデーの方が漫画雑誌っぽくできあがっています。


今ではちょっと見あたらないのですが、漫画の最初のページに正々堂々と「提供 宮本製菓」などと書いてあるのがちょっと面白い。


これは連載小説「月光仮面」第六部 花と拳銃。マンガよりも割とマガジンは全体的に「子ども向けの週刊誌」を目指して作っていることがさらに明らかになっていきます。


週刊誌っぽく仕上がっているので、「富士山が爆発する?鮫島先生の予言は正しいか」というような記事も載ってます。


この「中学生のころの皇太子さま」というのも興味深い。「新聞は、うそを報道してはいけないよ」というありがたいお言葉が掲載されています。確かにちょっと週刊誌のノリかも。


マガジンに手塚治虫は漫画連載を持たなかったものの、フジペットカメラが1000台当たるという創刊記念特別大懸賞では探偵クイズなるものが。しかもよく見ると、1000台当たるが、創刊号では400人にしか当たらない。マガジンではサンデーに比較して懸賞が極めて少なく、ぶっちゃけ確認できる限りではプレゼント系はこれだけです。だがしかし、この応募は綴じ込みのハガキでなければならず、いわゆる「アンケートはがき」が既にこの時点で完成していることがうかがえます。


マガジンの懸賞ハガキはこんな感じ。


小説とマンガから面白かったモノを3つ、そのほかの読み物で3つ選ぶ方式。年齢を示す「学年」が「小学」と「中学」しかないため、このあたりをターゲットにしていたことがわかります。


あと、左ページの連載少年小説「探偵京四郎」も気になりますが、右ページの「人間ロケット発射!」もかなり煽り気味のタイトル。序文のリードを読むと「今まさに、世界さいしょの宇宙人となろうとしている人がいる。宇宙人とは、いったいなんだろう?」と書いてあり、先ほどの「富士山が爆発する?」といい、明確にテイストが存在していることがわかります。ちょっと今のマガジンに通じるものがあるかも。


あと、これもすごい。電子メールが一般的な手段となった現在ではほとんど壊滅状態かもしれない「国際文通」の広告。時代を感じます。


週刊誌テイストなので、「映画館で席をとる方法」という今ならこれだけで物議を醸し出しそうなすごい内容が書いてあります。いわゆる悪用厳禁ネタか。


この画像では字がつぶれて読めないのですが、「編集賛助員の方々」として、東京都教育委員長・東大教育学部長・東京教育大学教授・東京学芸大学助教授・東京都文京区立真砂小学校校長・東京学芸大学付属豊島小学校教諭・和光学園小学部長・東京学芸大学付属竹早小学校教諭の名前が掲載されています。今では考えられないのですが、当時は要するにそういう方向を目指していたので、それっぽいネタも多かったわけです。


対して少年サンデーを今一度読み返してみると、やはりマガジンとはかなり毛色が違っていることに気づかされます。「わが国唯一の総合制高校通信教育」の広告。当時の小学館は小学一年生などの学習雑誌全盛期なので、いかにもそれっぽいものがあちこちに反映されています。


中学生の読者は「中学生の友」に誘導するため、「中学生諸君の雑誌はこれだ!」というすごいキャッチフレーズが。マガジンは懸賞ハガキの内容から小学生と中学生をターゲットにしていたようですが、サンデーは中学生にはさらに別の雑誌も購入させようという魂胆だったらしい。


さりげなくこんなところに国語新辞典の広告。もちろん小学館発行。抜け目ありません。


校章や校歌の紹介。今ではちょっと考えられないぐらいにマジメ。


科学のアンテナ、ニューストピックスなどもマガジンに比べると極めてまじめなネタが多い。時代を感じさせてくれるのは「東京から大阪まで三時間」という記事。「東京-大阪の間をたった三時間ではしる超特急電車ができます。いま走っている"特急こだま号"は六時間です。できるのは昭和三十九年ですが、そのうち東京から大阪へ野球見物に行けるかもしれません」と書かれています。


あと、サンデーはマガジンよりもやたら懸賞が多い。これは花嫁衣装一式が当たるというファッションミシンの大懸賞。


これは自転車が5台当たるスーパークイズ。


ハガキが掲載されるとバッチが当たる。


最後のページにも「大懸賞 だんちゃんの探偵クイズ」なるものがあり、50名にエルム鉛筆削器が当たるそうで。とにかくサンデーはプレゼントで釣るのが常道のようです。ここまで徹底していると逆に清々しい。なお、現在の少年サンデーにもこの「大懸賞」なる名称は何と生き残っています。また、本質的に体質はあまり変わっておらず、プレゼントは基本的に大放出気味です。当時から連綿と続いている体質だったとは、驚愕です。


で、これがつい最近発刊された創刊号もどきの表紙を採用した週刊少年サンデー。左の現代版は松坂大輔、右が今回もらってきた復刻版。


この創刊号もどきの表紙のサンデーには最初に少しだけ触れた「サンデー創刊物語~夢のはじまり~」という「お前は編集王か」というような感じのプロジェクトXばりの美談感動大河伝記マンガが掲載されており、その中にあるセリフがいちいち面白い。たとえばこの「そうそう!娯楽漫画なんてものは、集英社か講談社にまかせておけばいいんですよ!」は実に味わい深いセリフ。


また、週刊誌の現場を肌で実感するために集英社に行くシーンもすごい、「不夜城 集英社」ということで、「どこのヤクザですか?」というような戦慄すべき集英社の編集部が出てきますが、大丈夫なのですかね、これ。


ちなみに当時の週刊誌と現在の週刊誌の厚さの差はこれだけあります。マンガが日本の文化として位置づけられるようになるまでを支えてきただけの重みはあります。


次の100周年記念の際には果たして、サンデーとマガジンはどのようなカタチで生き残っているのでしょうか……?

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in レビュー,   取材,   マンガ,   コラム, Posted by darkhorse

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