アメリカでガンを治療する新しい方法が特許に
アメリカにて一部のグループがガンの治療に関する特許を取得したと発表。その対象がなんと「砂糖」と「短鎖脂肪酸」の化合物らしい。これでガン細胞の増殖速度を落としたり、ガン細胞自体を正常な細胞に変えることが可能になるというのだから不思議。
これは「Chemistry & Biology」の12月号で発表されたもので、この研究に携わったジョーンズホプキンズ大学によると、まだ動物実験も人体への影響も未確認の段階ではあるが、前途有望であることに違いはないとのこと。
一体どういうものなのか、かなり専門的な話なので意味不明ですが、ちょっと見てみましょう。ガン治療が今とはもうちょっと違う方向に発展するのかもしれず……。
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これによると、いわゆる砂糖がガン細胞に対して及ぼす効果について注意を払っている研究者は今までほとんどいなかったが、実際には既に20年以上前の1980年代に短鎖脂肪酸、つまり「酪酸塩」というものがガン細胞の広がる速度を減少させるという事実は発見されており、特に消化器系統においては食物繊維との相乗効果によってガン細胞を正常な細胞に復元することが可能だという事実が知られていたようです。この事実だけでも初耳なので驚くべき事だと思うのですが、調べてみると確かにそのようなことを書いているページをいくつか発見できました。
ベジェタリアンにはガンが少ない
第8のグループには酪酸塩を入れなければなりません。酪酸塩は単純な脂肪酸で、大腸に住むバクテリアの中で人の健康のためになるビフィズス菌で、酪酸塩よって大腸内で生産されます。ビフィズス菌はイヌリンあるいはオリゴフラクトーゼなどの化合物を分解します。オリゴフラクトーゼはアーテイチョーク(チョウセンアザミ)その他の食品にも含まれています。酪酸塩には結腸分化異常を発生させる能力があり、大腸ガンの進行をくい止める重要な働きがあります。興味のある事実ですが、水溶性の食物繊維は少なくとも実験動物については乳ガンを防ぐ効果が認められています。酪酸塩または類似物質は、体内における他の多くの部位において抗ガン効果がみられます。
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食物繊維が大腸癌の罹患率を減少させる予防的役割を担っていることを示す証拠はまちまちである。ほとんどの動物実験および疫学研究は、食物繊維に結腸癌の予防作用があることを示している。 [20] 繊維という用語は、小麦のふすまおよびセルロースに代表される不溶性繊維、ならびに乾燥豆などの可溶性繊維などの複雑な混合物を指す。繊維の摂取により、大腸内のさまざまな潜在的機序によって発癌現象が変更される可能性がある。 [62] [63] [64] こうした機序には、繊維の胆汁酸への結合、糞便の水分増量およびそれによる発癌物質の希釈、大腸内容物の通過時間の短縮などがある(明白な因子ではない)。繊維を発酵の材料とすることにより腸内細菌の量が増大し、酪酸塩に代表される短鎖脂肪酸の産生が促進される。 [64] 酪酸塩はin vitroで抗発癌作用を示し、結腸上皮細胞の重要なエネルギー源と考えられている。 [65] [66] 9ヵ国で行われた13のケースコントロール研究を対象にメタアナリシスをした結果、高繊維食品の摂取量は、結腸、直腸のいずれの癌の発症とも逆相関することが明らかにされた。
要するになんとかして酪酸塩をガン細胞内に移動、あるいは浸透させれば、ガン細胞を修復して正常細胞にすることができるかもしれない、あるいはガン細胞化を防ぐことが可能かも知れない、ということです。
で、今回のアメリカの特許はこの短鎖脂肪酸である「酪酸塩」を一般的な薬として使うレベルまで引き上げて改良しようというもの。しかし当初は失敗し、副作用が強烈なものになってしまったそうです。だがさらなる研究の結果、無害な砂糖の分子、つまりグルコースが細胞内に酪酸塩を運び込むことができることを発見したとのこと。
この「砂糖」と簡単に呼んでいるものの実際の正体は「N-アセチル-D-マンノサミン」、あるいは「アセチルマンノサミン (ManNAc)」というもの。これと酪酸塩を結合させるわけですね。
このアセチルマンノサミンと酪酸塩を結合させた化合物は細胞表面に容易に浸透し、なおかつ細胞内では酵素によって分解されるという特質を持っています。これによって細胞内でアセチルマンノサミンはシアル酸というガン研究において重要な役割を担う物質に加工され、ガン細胞の成長を司る遺伝子に働きかけてその活動を停止させることが可能になるとのこと。
要するにこれはアポトーシス、細胞自殺という現象を無限に増殖するガン細胞において始動させるためのキーであり、実際に実験環境ではガン細胞の成長速度を遅くしたり、あるいはガン細胞自体を死滅させることに成功しているとのこと。おもしろいのはこのアセチルマンノサミンと酪酸塩を結合させず別々に投与しても効果は認められず、結合させてから投与した場合のみガン細胞に作用するということ。まだ研究の初期段階なのでくわしいことは判明していないそうですが、おそらくはこの結合自体が遺伝子の異常作用であるガン細胞発生のメカニズムを正常なあるべき遺伝子へと修復しているのではないか?と推測しているようで。
これが近い将来、副作用が極めて少なくて、なおかつ劇的な治療法となることに期待。
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