新型コロナの治療にイベルメクチンは「何の効果もない」ことが調査で示される
日本でも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種がスタートしていますが、これに伴いワクチン接種に反対する「反ワクチン派」の声もさまざまな場所で耳にするようになっています。そんな反ワクチン派がCOVID-19の治療薬として推奨している治療薬のひとつが、イベルメクチンです。イベルメクチンの効果については北里研究所で医師主導治験が行われており、「(COVID-19の)軽症者にはよく効く」と主張する医師もいるのですが、最新の研究でCOVID-19の治療には「何の効果もない」ことが示されました。
Hiltzik: Ivermectin shows 'no effect' as COVID treatment - Los Angeles Times
https://www.latimes.com/business/story/2021-08-11/ivermectin-no-effect-covid
既に一部の国と地域では新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでいますが、低中所得国では大規模なワクチン接種の実施は「まだまだ長い時間がかかる」というのが現状です。そうこうしている間にも世界中の医療システムが圧迫され、COVID-19患者が増え続けるため、ワクチン以外の方法で入院患者を減らす工夫が世界的に求められています。
そんな中で立ち上げられたのがTogether Trialで、これは「既存の薬剤の中でCOVID-19に有望な効果を持つものは存在しないか」を確かめるための試験です。このTogether Trialで、イベルメクチンについて調査が行われたところ、「何の効果もない」ことが判明しました。
Together Trialはカナダのマックマスター大学による監督のもと、ブラジルで実施されている大規模な試験です。試験の主任研究者のひとりであるエドワード・ミルズ氏は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)が主催した2021年8月6日のシンポジウムの中で、Together Trialにおけるイベルメクチンの調査結果を公表しました。
Together Trialにおけるイベルメクチンの調査に参加したのは約1500人のCOVID-19患者で、患者の「救急治療室での長期間差が必要か」や「入院が必要か」などを問わず、広く投与されました。試験の結果、イベルメクチンは「全く効果がないことがわかった」とミルズ氏は語っています。
具体的な調査方法は調査期間の中で2つあり、試験開始当初はイベルメクチンの単回投与に対する効果をテストされましたが、その後、「患者の体重1kgあたり400マイクログラムのイベルメクチンを1日1回、3日間にわたって投与する」というものに変更されています。このうち半分の被験者に対してはプラセボ錠を投与しており、分析の結果、臨床結果に差異はみられなかったとのこと。
なお、今回のTogether Trialにおけるイベルメクチンに関する研究結果は、正式な論文として発表されたものではなく、査読もされていません。しかし、Together Trialでは過去にドナルド・トランプ前大統領がCOVID-19の治療薬となると宣伝した、抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンが有意な治療効果を示さないことを査読付きの研究論文で示しています。
イベルメクチンがCOVID-19向けの治療薬として注目されるきっかけとなったのは、オーストラリアの研究者が2020年に公開した論文で、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対してある程度の有効性を示した」と報告されたためです。しかし、この研究は人体に投与することが不可能なレベルの濃度のイベルメクチンが使用されていました。
反ワクチン派の人々や陰謀論者たちからイベルメクチンが支持を得ていますが、これについてミルズ氏は、「私を含め現場でイベルメクチンを投与している臨床医は、十分すぎる批判にさらされてきました。医療分野で働いている人々は、自身や家族をが脅迫されたり、名誉を傷つけられたりしています」と語り、陰謀論者や反ワクチン派に目をつけられたことで、イベルメクチンの投与を行った医師たちが困難に直面してきた事実を明かしています。
一方、今回の試験結果を受け、今後もイベルメクチンを支持していくならばさらなる批判にさらされることは「避けられないだろう」とも語り、試験結果が示すようにイベルメクチンがCOVID-19の治療には効果がないことを改めて強調しています。
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