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定年退職すると男は心身共に不健康になる

By eltpics

アメリカの新聞大手であるWashington Postで30年にわたって新聞記者として務めたレオン・ダッシュ氏は、1977年のアンゴラ南北戦争で7カ月半以上ゲリラに潜入取材した経験を持ち、1995年にピューリッツァー賞を受賞しています。現在は72歳という年齢ながらイリノイ大学で寄付基金教授として講義を持っており、2冊の本の著者でもあります。人生において多くの成功を残し、十二分に快適な老後を送れるはずのダッシュ氏には定年退職する考えはなく、「私が退職する時は死ぬ時だ」と明言しています。いくつかの研究が「定年退職すると不健康になる」というデータを示しているのですが、働き続けるダッシュ氏は医者も認めるほど心身ともに健康な状態を保っています。

‘I’ll Retire When I’m Dead’: Why Continuing to Work Is Good for a Man’s Health
https://melmagazine.com/en-us/story/ill-retire-when-im-dead-why-continuing-to-work-is-good-for-a-mans-health

ダッシュ氏は70代でイリノイ大学で2つの講義を持っており、2016年秋からはもうひとつ講義を開設することも予定しています。ダッシュ氏は仕事に対して情熱を持っているだけでなく、主治医が「とても健康的なので仕事を続けても大丈夫です」と判を押すほど、健康的な状態を維持しているとのこと。ダッシュ氏の友人は62歳や65歳で定年退職したのですが、数年経つと肉体的・精神的に不健康になってしまったそうです。ダッシュ氏は座ってばかりの「定年退職生活」に全く興味がなく、「私は毎朝ベッドから出る理由を持ち続けたい」と話しています。


ダッシュ氏について取り上げたMEL Magazineは、「理想的なのは定年退職が気持ちをリフレッシュしてくつろげる期間をもたらしてくれることです」と話していますが、現実的には、多くの研究が定年退職と精神的・肉体的な健康の低下を結びつけています。2006年3月の全米経済研究所の研究によると、「定年退職は不健康になる可能性を増加させる」としており、移動性が失われることで肉体的な障害が起こりやすくなり、それに伴って精神的な健康も悪化するとのこと。2012年のハーバード公衆衛生大学院の研究では、定年退職者のうち40%が心臓発作などの疾患を抱えている傾向にあり、定年退職後にうつ病を発症する可能性も同じく40%というデータを示しています。また、これらの退職がもたらす健康的な影響は、特に男性に強く現れる傾向にあるとのことです。

ミネソタ大学社会学部のフィリス・モーン教授は、「男性は定年退職に向けて財政的計画を立てる傾向にありますが、退職後のライフスタイルの計画は立てていないのです」と話しています。まだ社会的に男性は一家の大黒柱であることが多く、男性の自己意識は仕事に深く結びついています。そのため定年退職後の男性は、目的を失うという危機に見舞われてしまうそうです。週に何十時間も働いていた生活から労働時間がゼロになることは、男性の「私は誰か?」という質問を証明するアイデンティティーに大きく影響を及ぼすとのこと。

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モーン教授の研究では、多くの夫婦がこれまでより多くの時間を共有するようになることで、不慣れな生活に対する一種の緊張が生まれることがわかっています。仕事がなくなった夫は会社からではなく妻からお金を受け取るようになりますが、妻が唯一の「財政提供者」となることで、多くの夫は無力化されたような気持ちになりやすいそうです。定年退職後にうつ病になったり、夫婦関係が悪化したりすることはこれらの傾向で説明がつくとのこと。

全米経済研究所は「定年退職後に活発な社会生活を送ると健康への悪影響が少なくなる」という研究結果を発表しています。一方で、退職後は同僚との関係性が薄れてしまうことから、男性は「突然誰からも電話が来なくなった」と感じるようになり、出かける場所もなくなりがち。もし元同僚と出かけたとしても、「ここは自分の居場所ではない」ことを再確認することになるかもしれません。

ダッシュ氏はたまに友人を訪ねても、友人をテレビの前からどこかへ連れ出すのに一苦労するそうで、多くの定年退職者が家を出る目的を失い、座ってばかりの生活を送ることになるようです。ダッシュ氏は学生に手ほどきを受けてFacebook・Instagram・TwitterなどのSNSも使用しており、最近でiPhoneに入れた最も新しいアプリは「Snapchat」であるなど、ソーシャルメディア上でも多くの人との付き合いを持っています。


ダッシュ氏は「定年退職せずに仕事を続ける」ことの特殊な例と言えそうですが、「定年退職後のライフスタイルをしっかり設計する」ということをよく考えておくことで、心身ともに充実した老後が送れるのかも。

By Guillermo Avila

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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