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イエス・キリストには妻がいたのか?

By Thomas Berg

キリスト教の多くの教派において、三位一体の教義のもとで神の子が受肉して人となったとされる、真の神であり真の人である救い主が「イエス・キリスト」です。そのキリストには妻がいたとする複数の証拠が存在し、宗教学者や考古学者の間では長らく論争が続いています。

Did Jesus Have a Wife? - The Atlantic
http://www.theatlantic.com/magazine/archive/2016/07/the-unbelievable-tale-of-jesus-wife/485573/

2012年にローマで開かれた学会の中で、ハーバード大学のカレン・キング教授が「キリストは彼らに、私の妻だと言いました」と書かれた古い文献を発見したことを発表しました。この文献は、古いパピルス紙にコプト語という古代文字で文章が書かれており、この内容が、それまで信じられてきた「イエス・キリストは生涯独身であった」という事実を覆すもの、ということで大きな話題を呼びました。

「キリストは彼らに、私の妻だと言いました」と書かれた文献は、名刺サイズのパピルス紙で、キング教授はこの文献を「イエスの妻の福音」と名付けています。


パピルス紙に書かれた一文は不完全なものですが、キリストとその使徒の会話から、キリストに妻が存在したことがはっきりと伺えます。そして、そのキリストの妻というのは、「マグダラのマリア」と考えられています。しかし、マグダラのマリアは聖人ではあるものの、「娼婦であった」と考えられている人物でもあり、この事実からマグダラのマリアがキリストの妻であったかもしれない、という事実をかたくなに否定する一派もあります。また、女性を宗教の指導者的な立場にすることを拒む勢力なども、キング教授により発表された「イエスの妻の福音」は偽物であるとして、キリストに妻がいたということを否定しています。

さらに、ローマカトリックの総本山であるバチカンの新聞が、「イエスの妻の福音」と名付けられた文献を「下手な偽物」、と報道。さらに、新約聖書こそ正しいとする学者の多くが、「イエスの妻の福音」にはコプト語のスペルミスが存在することを指摘しています。


しかし、「イエスの妻の福音」の存在は半信半疑ながらも認められるようになっていき、世界的に大々的なニュースにまでなりました。それでも鳴り止まない批判の声に応じる形で、2012年の発表から1年半が経過したのち、キング教授は放射性炭素年代測定法テストなどを行い、「イエスの妻の福音」が作られた正確な年代を測定します。そして、発見された文献に使用されているパピルス紙やインクは古代のもので、現代になって誰かが偽造したものではない、と発表。

しかし、「イエスの妻の福音」が偽物であると主張する人々は、オークションに登場するような古いパピルス紙を購入し、古代と同じ方法でインクを混ぜて、コプト語を記すことは可能だ、と主張。加えて、「イエスの妻の福音」と「トマスによる福音書」で偶然にも同じ誤字が存在することを指摘し、「トマスによる福音書をまねて作られたものであるため、同じ誤字があるのだ」と指摘。このようにして、「イエスの妻の福音」が本物であることをかたくなに拒否し続けています。

「イエスの妻の福音」がどこから見つかったものなのかを調べれば簡単に事実が明らかになりそうですが、キング教授は所有者が「匿名にしてほしい」と要求したため、かたくなにどこから入手したものかは明かしていません。ただし、この文献はエジプトもしくはシリアで発見されたものと考えられています。

「イエスの妻の福音」を持つキング教授


なお、「イエスの妻の福音」の持ち主は自身の素性については明かしていませんが、どこでこの文献を入手したのかについてはキング教授に明かしています。文献は1999年の11月にハンス・ウーリッヒ・ラウカンプという名前の男性から購入したもので、ラウカンプ氏はこれを1963年にドイツのポツダムで入手したと語った模様。

キング教授は「イエスの妻の福音」が、キリストが結婚していたことの証明にはならないとした上で、「初期の信者の一部が、キリストに妻がいたと信じていたことを示す初の証拠」と指摘。さらに、キング教授よりも先に同文献のコピーの解読を依頼されていたベルリン大学の考古学者であるピーター・マウロ氏は「この文献の切れ端(イエスの妻の福音)は、キリストが自身の妻について語った唯一の例であり、結婚していた可能性を示すものだ」と、語ります。ただし、ラウカンプ氏とマウロ氏は共に既になくなっており、同文献の出自などについては、既にほとんど知ることができない状態、とキング教授は語っています。

この「イエスの妻の福音」については過去に以下の様に記事化しており、文献にはほかにどのようなことが書かれているのかなどは、以下の記事を読むとわかります。

キリストはマグダラのマリアと結婚していたかもしれない謎のテキストを発見 - GIGAZINE


ほかにも、キリストがマグダラのマリアと結婚していたと主張する学者がいます。イスラエル系カナダ人のドキュメンタリーフィルム作家シムチャ・ジャコボビッチ氏とカナダ人学者のバリー・ウィルソン氏による書籍「The Lost Gospel(失われた福音)」では、キリストには妻のほかに、複数の子どもも存在したという主張がなされています。

「キリストには妻子がいた」 新書出版で議論再燃 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News
http://www.afpbb.com/articles/-/3031652


ジャコボビッチ氏とウィルソン氏はロンドンの大英図書館に収蔵されている古文書「ヨセフとアセナテ」と、その手記を解読したとのこと。2人によれば、古文書の中には隠される形で、キリストの求婚・結婚・子どもと、キリストが成し遂げようとしたことが記されている模様。暗号化された状態で古文書に記されている理由については、「初期の教会には対立が多く、このような形で隠された」と語っています。

なお、ジャコボビッチ氏とウィルソン氏の主著に対する批判も多く、Amazonで販売されている「The Lost Gospel」のカスタマーレビュー欄も、星5の最高評価と星1の最低評価が入り交じっています。

Amazon.co.jp: The Lost Gospel: Decoding the Ancient Text That Reveals Jesus' Marriage to Mary the Magdalene: Simcha Jacobovici, Barrie Wilson, Tony Burke: 洋書


加えて、2015年には過去に一度「偽物である」と鑑定されたヤコブ(キリストの弟)の骨が収められた納骨箱「ヤコブの骨箱」は本物で、キリストには妻と子どもがいたとする調査結果も発表されています。

Findings Reignite Debate on Claim of Jesus’ Bones - The New York Times
http://www.nytimes.com/2015/04/05/world/middleeast/findings-reignite-debate-on-claim-of-jesus-bones.html


The lost tomb of Jesus? Scientist claims he has 'virtually unequivocal evidence' that could help explain the whereabouts of Christ's remains | World History | News | The Independent
http://www.independent.co.uk/news/world/world-history/the-lost-tomb-of-jesus-scientist-claims-he-has-virtually-unequivocal-evidence-that-could-help-10158514.html


イスラエルのコレクターが1970年代にエルサレム東部の古美術商から購入したという「ヤコブの骨箱」には、アラム語で、「ヨセフの息子にしてイエスの兄弟、ヤコブ」と書かれています。2003年に同納骨箱をイスラエルの研究団が調査した際、調査団は「納骨箱は古代のものであるものの、アラム語で書かれている碑文は比較的新しいものであり、文字は誰かが宗教的な価値を高めるために書き足したもの」と鑑定しました。

しかし、ジェームズ・キャメロンの指揮のもと撮影されたドキュメンタリー番組の「キリストの棺」の撮影に関わっていたドキュメンタリーフィルム作家のジャコボビッチ氏が、イスラエルの主席研究員として長年政府の地質調査に関わってきたという地質学者のアリ・シムロン氏に出資して行っているという調査により、1980年にエルサレム東部で見つかった「Talpiot Tomb」と呼ばれる古代の墓が、ナザレのイエスとその遺族が眠る墓地であるという明確な証拠を発見した、と主張しています。

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in メモ, Posted by logu_ii

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