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飛行機の翼を曲げたり折ったりする翼の耐久性試験ムービーあれこれ


飛行機に乗って窓際の席に座っていると、風が強い日などに翼がウネウネと曲がるのを見て「もうダメだ。落ちる」と暗い気持ちになった人もいると思いますが、飛行機の翼はある程度曲がるように作られており、通常の飛行で折れることはまずありません。しかし、曲がると言っても適当に設計されているわけではなく、そこには膨大なマンパワーと予算がつぎ込まれ、緻密な計算と設計の結果として安全な翼が生みだされています。そんな翼の試験風景のムービーをまとめた記事が公開されています。

Watch These 7 Airplane Wings Pushed to the Brink and Beyond
http://www.popularmechanics.com/flight/g2428/7-airplane-wing-stress-tests/

◆01:ボーイング777型機の主翼破壊試験
ボーイングが1995年に送り出した大型機、ボーイング777型機の開発風景がこのムービー。実機を巨大なテスト用施設に据え付け、大きな力をかけて翼を曲げ、実際に折ってしまう様子が収められています。

Boeing 777 Wing Test - YouTube


ボーイングの工場内に設置された、巨大なジャングルジムのような試験設備に据え付けられた777型機。手前には、試験の様子を見守る人々の姿が見えます。


翼の先端や中間部分にワイヤーを取り付け、上からぐいぐいと引っ張ることで翼の耐久性を調べるという、巨大かつシンプルな試験です。


ワイヤーが巻き上げられ、徐々に曲がってゆく主翼。


かなりの力が翼に加えられており、影響を受けて機体の胴体にはシワが生じるほど。


固唾をのんで見守る開発エンジニアたちの姿。場内にはマイクで試験の経過を読み上げる声が響いており、設計限界値を大きく超える「150%」のアナウンスに場内は大喝采。機体の高い性能が証明された瞬間です。


しかしその後も試験は続きます。もはや、あり得ないぐらいまで反り返った翼。ここまでの状態になると「落ちる」と思っても仕方ないレベル。


まるで、鳥が羽ばたいているかのような翼の角度。もちろん通常の状態でここまで曲がることはまずありません。


その後も会場には「151、152……」と、力の強さが読み上げられます。その数値が「154……」とアナウンスされた瞬間……


「ばーん!」というごう音とともに、主翼が折れてしまいました。翼の表面は大きく裂け、主翼を引っ張っていた数々のワイヤーや鉄骨が散り揺れています。


見守っていたエンジニアもこの表情。このようにして、飛行機の翼は設計どおりに壊れるように作られているというわけです。


◆02:エアバスA350 XWB型機の主翼耐久試験
次は、ボーイングと双璧をなすエアバスが開発した最新のA350 XWB型機の主翼耐久試験の様子。このムービーでは実際の破壊シーンは収められていませんが、主翼に加えて機体関連の様子も多く収められています。

Pushing the A350 XWB to the brink - YouTube


夜の空港をトーイングカーで引っ張られるA350 XWB型機。この機体は、開発段階で製造された試験機なので塗装されておらず、エンジンも搭載されていない状態です。


試験場に据え付けられたA350 XWB。巨大なパイプの台にセットされ、周囲には試験用の機材がずらりと並んでいます。


試験用施設はこんな感じ。大きく「Full Scale Static Test(フルスケール静的試験)」と書かれています。静的試験とは、飛行状態になく、地上で行われる試験を指す言葉。


主翼の表面には、無数のワイヤーをセット。


このようにして、主翼全体に力を加えることで、より正確な試験を行うようになっている模様。翼の下側にもワイヤーがセットされ、下向きの力も加えられるようです。


試験が開始すると、これまた大きな力で引っ張られて曲がる主翼。実際に折れるシーンはありませんが、全体的にまんべんなく「しならせる」ことで、応力が1か所に集中して破壊が起こるのを防いでいる様子が感じられます。


機体にセットされる赤い巨大なフレーム。この試験では、翼だけでなく機体にも上下の力を加えることで、、実際の飛行状態により近い状況が生みだされています。


機体には数千個のセンサーがセットされ、機体の状況を刻一刻と伝えてきます。


大きく持ち上がった主翼。その先端は、最大で5.2メートルも高い位置に持ち上がることがあるそうです。


試験を統括するエンジニアが機体周辺を解説。客席の窓に当たる部分には、何やらホースのようなものが取り付けられていますが……


これは、ホースを使って機体に圧縮空気を送り込むための設備。機内の空気圧を高めることで、上空1万メートルを飛行している時と同じ負荷を機体に加えながら試験を行うようになっているというわけです。


機内の様子はこんな感じ。与圧用のホースが窓にセットされている様子が見えるほか、床にはテスト用とみられる鉄製のフレームが張り巡らされています。


CGで機体の様子をチェックするエンジニア。冒頭のボーイング777型機に比べて、エアバスA350 XWB型機は約20年後に誕生した機体ということで、そのテスト技術にも格段の進化が見られるようです。


◆03 ボーイング787の疲労試験
A350 XWB型機がデビューする数年前には、ボーイング787が誕生しています。以下のムービーは、787型機の実機を使って飛行シーンを再現し、機体の疲労度を検査する試験を収めたもの。

Boeing 787 conducts fatigue testing - YouTube


先ほどまでとはうって変わり、今度は屋外に設置された試験設備。しかし機体には同じようにワイヤーやホースなどがセットされています。


この試験の目的は、強度そのものよりも実際の使用状況を再現することで、機体にどのような疲労が蓄積するのかを確認することにあります。そのため、試験には長い時間が必要とされ、テスト開始後は1日も休まずに3年間にわたる試験が続くとのこと。


最終的にこの試験では、通常の飛行機が退役するまでのフライト回数を上回る10万回のフライトがシミュレートされ、設計どおりに機体が機能するか、想定どおりの耐久性を保っているかの検証が行われるとのことです。


◆04:F16戦闘機のFSDT(Full Scale Durability Test:フルスケール耐久試験)
このような耐久試験は旅客機だけではなく、戦闘機でも行われているとのこと。以下のムービーはF-16戦闘機の製造メーカーであるロッキード・マーチンが公開したものです。

F-16 Durability Testing: 25,000 Hours and Counting - YouTube


あまり多くの様子は公開されていませんが、試験用のリグに据え付けられたF-16の翼や胴体に力が加えられている様子がわかります。ロッキード・マーチンでは長期間にわたるシミュレーション試験を実施することで、F-16戦闘機の設計寿命である8000 EFH(Equivalent Flight Hours:相当飛行時間)を超える耐久性を証明しているとのこと。2015年7月には2万5000 EFHを達成しており、さらに長期間の検査を行うことで機体の安全性と性能を検証することになっているそうです。


その様子は、以下のロッキード・マーチンのリリースでも発表されています。

F-16 Durability Testing: 25,000 Hours and Counting · Lockheed Martin
http://www.lockheedmartin.com/us/news/press-releases/2015/june/F16-durability-testing.html

◆05:2人乗りグライダー、DG Flugzeugbau DG-1000型機の主翼破壊試験
巨大な旅客機やパワフルな戦闘機とは正反対に位置する、2人乗りグライダーでも同様の試験は行われています。

bruchversuch-a (Wing stress test) - YouTube


この試験は、ドイツのグライダー製造メーカー「DG Flugzeugbau」が製造するDG-1000型機の主翼の強度を調べるためのもの。機体が小柄なので、試験用の設備もこの通りミニサイズ。


しかし、実際に行われる試験は旅客機と同じ内容です。このテスト用リグでは、主翼だけが土台にセットされ、上からワイヤーでぐいぐいと引っ張るようになっている模様。


試験が開始。翼が大きく反り返ったあげくに……


「ばん!」と大きな音をたてて折れる翼。グライダーのような小さな飛行機でも、やはり安全性のための試験は手抜かりなく行われているようです。


◆06:今度は1人乗りグライダー、DG Flugzeugbau DG-800型機の主翼破壊試験
さらに、同じメーカーの1人乗りグライダーでも同じ検査は実施されています。機体が小型になることもあり、翼長や翼弦長(=翼の太さ)は小さくなっている模様。

DG 800 Wing Stress Test - YouTube


同じ設備に据え付けられた翼。ぐいぐいと引っ張られた翼は、このあと同じように破壊されてデータが取られています。


◆07:F/A-18「ホーネット」戦闘攻撃機のフルスケール耐久試験
Australian Defense Science and Technology Group(オーストラリア防衛科学技術グループ)が1995年に実施した「International Follow-on Structural Test Project (IFOSTP:国際継続構造検査プロジェクト)の様子。

International Follow-on Structural Test Project (IFOSTP) - YouTube


F/A-18「ホーネット」は、アメリカのマクドネル・ダグラスが製造する戦闘攻撃機。アメリカ海軍・海兵隊の他にも、オーストラリア、スペイン、フィンランドなどの空軍で採用されているためか、オーストラリアでの試験が行われたようです。


テスト用のリグにセットされた機体。


機体にはさらに数々のワイヤーや油圧シリンダーなどをセットし、実際の飛行状態を再現。


どの場所かはわかりませんが、亀裂が生じている様子が収められているのにはビックリ。ひょっとしたら、機体そのものではない可能性も。


テスト用リグの上で、実際にジェットエンジンを回しているようなシーンも収められています。


このように、空を飛ぶ飛行機はさまざまな試験をクリアすることで安全性が高められています。その安全性は「一般道を車で走るよりも安全」と言われるほどなので、今後飛行機に乗る機会があっても心配する必要はなさそうです。

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in 乗り物,   動画, Posted by darkhorse_log

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