上司不在で肩書き・役職を撤廃し社員に自由を与える「ホラクラシー」を導入した会社に起こったこととは?
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by Rum Bucolic Ape
会社内の階級制度をなくして、全社員がフラットな立場で働く「ホラクラシー(Holacracy)」という制度は、アメリカのスタートアップ企業Ternary Softwareが発端となって2007年頃に誕生しました。実際にホラクラシーを導入した会社で、職場環境がどのように変化したのかが明らかになっています。
What Happened After Zappos Got Rid of Workplace Hierarchy - The Atlantic
http://www.theatlantic.com/business/archive/2016/01/zappos-holacracy-hierarchy/424173/
まず「ホラクラシー」とはどんな働き方なのか、以下のムービーを見ると理解できます。
What is Holacracy? - YouTube
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毎日オフィスに通って働いている、Adamという男性がいます。
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Adamの会社では、数々の問題が発生しています。
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Adamは上司から与えられた仕事をこなしながら、「今よりももっと職場環境を改善できたらいいのに」と考え中。
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問題とは、例えば社員の誰にも割り当てられていないタスクや、仕事上のムダな手順のことなど。
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Adamは職場環境を改善するために、まずは直属の上司であるKarenに相談。
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しかしKarenは常に多くの仕事を抱えている上に、大勢の部下がいるため、相談するまでに時間がかかります。
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社員同士で話し合って問題解決を目指すこともできますが、この方法もかなり時間がかかります。
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この状態でできることは、社内のヒエラルキーに沿って、各自が問題から身を守りつつ、割り当てられた仕事を行うことだけです。
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しかし、そうするとお互いにコミュニケーションが取れなくなってしまい、会社全体が苦しむことになります。
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そこで発案されたのが「ホラクラシー(Holacracy)」という新しい会社組織のあり方。ホラクラシーを導入することで、仕事をより早く、明快に、自主性を持って行うことが可能。
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上司に自分のアイデアを提案する代わりに……
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自分で自分の仕事を決めます。
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会社内で次々と起こる問題を解決するには、会議でアイデアを提案。
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全員の意見を聞いて、承諾を得ます。
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アイデアが承認されれば、自分の仕事に関する意思決定権が増えて、上司の許可を逐一取る必要はなくなります。
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権限を会社中で分配することで、上司がいないフラットな職場に。通常の階級制度では不可能だった社員同士の新しいコラボレーションが生まれたり、コスト削減にもつながると言われています。
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このように上司の許可待ちのために現状を放置することはなくなり……
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作ったものをすぐさまユーザーへ届けることができるようになるわけです。
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このホラクラシーを導入したのが、アメリカ・サンフランシスコ州の靴小売業者のZappos(ザッポス)。Zapposは商品を顧客の元にできるだけ早く届けることを理念に掲げており、口コミで次々と新規顧客が増えて、2009年にはアメリカ・フォーチュン誌の「最も働きたい会社ベスト100」の23位に入るほど人気が高いオンラインショッピングサイトです。サービスの品質の高さから、2009年にはAmazonがZapposの株式を12億ドル(当時の相場で約1123億円)で買収しています。
Online Shoes, Clothing, Free Shipping and Returns| Zappos.com
http://www.zappos.com/
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Zapposは創業当時から「新入社員に2000ドル(約24万円)で会社を辞める権利を与える」など、独自の人材採用哲学を追究してきました。この取り組みは、仕事に対して一生懸命取り組まない可能性のある新入社員を事前に排除する意図があるそうです。このような独特の社風を持つZapposがホラクラシーを導入したのは2015年4月末のこと。社員の肩書きや役職をなくすことで社員同士の協力を促進する狙いがあり、戦略決定には「GlassFrog」というホラクラシー専用アプリを使うことになりました。
しかし、実際にはCEOであるトニー・シェイ氏が全く予想もしなかった結果を生み出しました。社内制度を根本的に刷新したことで会社全体が混乱に陥り、「どのように仕事をすればいいのか全く分からない」と訴えるスタッフもいたそうです。例えば人事部が消滅したことで社員の給料をどのように決めるのかが分からなくなったり、重要な決定を下す際に相談できる上司がいなかったりといった問題が起こったとのこと。「上司不在・肩書きナシ」という新しい制度になじめない社員が続出した結果、ホラクラシー導入1ヶ月後の2015年5月時点で、従業員約1500人のうち、約14%にあたる210人が退社を決意したそうです。
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さらに、全体の18%もの社員が他の企業にヘッドハンティングを受けて、2015年のZappos社内の転職率は平年より10%も高い約30%に上っています。Zapposが2016年1月22日に発表した公式声明では、「2015年に例年よりも退職者が多かった理由として、ホラクラシー導入後は長期雇用者に支給する退職金を以前よりも増やしているからだ」と説明しています。ZapposのシェイCEOは、「全ての従業員に対してホラクラシーがうまくはたらくわけではない」と理解しているようで、ホラクラシー導入時に「社内の新しい方針が自分に合わないと思う人は、給料3ヶ月分の退職金を支給するので自由に退職してもよい」とアナウンスしていました。COOのアラン・ラジャン氏によれば、退職金を受け取って会社を去っていった人の多くはZapposの元重役で、ホラクラシーの導入によって役職を失った人々だったとのこと。
一見簡単そうに聞こえるホラクラシー制度ですが、意思決定方法などについて細かく説明したルールは全30ページ・1万5000単語に及び、8000単語のアメリカ合衆国憲法と比べると倍以上の量があります。また、ホラクラシーはいまだ発展途上で、「職場をフラットにして社員同士のコミュニケーションを円滑にして、経費削減の効果もある」と唱える人もいれば、コンサルタントの中には「ホラクラシーを導入すると、重役など会社に必須の従業員も減らすことになり、大企業ではうまくいかないこともある」と主張する人もいます。また、「昇進」という概念がなくなるので、従業員のモチベーションが下がることもあるとのこと。
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スタンフォード大学による研究では、「会社内の階級を撤廃することは、想像しているよりもはるかに困難を極めるだけでなく、人々は序列に従って働く方を好み、平等主義の職場では方向感覚が失われてしまう」という結果が出ています。別の論文では「階級社会は実践的で、人間心理的に快適なように設計されているのです」と結論づけています。
しかし、2006年~2015年の10年間にホラクラシーを導入した会社は300社ほどあり、そのうち80%もの会社が1年後もホラクラシーを採用していることが明らかになっています。
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Zapposは「退職者数と同数の新規雇用も行っている」とコメントしていますが、多くのベテラン社員を失ってしまったZapposが、ホラクラシー制度を継続することでどのように変化していくのか、今後の動向に注目が集まっています。
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