Yahoo！がアリババ株のスピンオフ計画を延期

By Christian Barmala

アメリカのインターネット関連サービス会社のYahoo！は、中国最大のECサイト「アリババ」の株を保持しています。Yahoo！はこのアリババ株を別会社にスピンオフするという計画を2015年初頭に発表していましたが、この計画が延期となったことが正式に発表されました。

Corporate Information - Yahoo - Press Center
https://info.yahoo.com/press-center/article/yahoo-provides-planned-spin-off-120000730.html

Yahoo！は重役会の決定と度重なる調査の末、2015年1月にアナウンスした「アリババのスピンオフ計画」を延期することを発表しました。Yahoo！が保有するアリババの株式は300億ドル(約3兆6000万円)相当といわれています。なお、Yahoo！はアリババのスピンオフに代わり、株式とウェブ事業を切り離すための別の構造を検討することを発表しました。アリババのスピンオフを取りやめることで、Yahoo！の持つアリババ株以外の資産と負債は別の新しい企業に移されることとなり、新会社の株式はYahoo！の株主にそれぞれの保有率に応じて分配されることになる模様。

Yahoo！の重役会で議長を務めるメイナード・ウェッブ氏は「オリジナルのスピンオフ計画が発表され、多くの審議を繰り返してきた結果、我々はアリババのスピンオフ計画を保留することに決めました。もちろんその要因の中には、アリババ株の価値を損なう可能性(スピンオフ計画が課税対象となるかどうかが不確定)がある、という点もあります。なお、委員会は今後も事業と株主の利益のため、アリババ株をYahoo！から分離するために尽力していきます」と語り、延期になった理由を説明しています。

By Yahoo

さらに、同社のマリッサ・メイヤーCEOは「さらなる努力により、我々の価値を高め、出資者への不確実性を減らし、最終的にアリババ株を分離することが我々の今後のビジネス形態にとって重要になります」とコメント。

Yahoo！がアリババのスピンオフを断念したのは、スピンオフの際に「アリババ株が課税対象となるかどうか」について米内国歳入庁から回答を得られなかったため。つまりどういうことなのかというと、以下のサイトでわかりやすく解説されています。

ヤフー取締役会がアリババのスピンオフを断念　その代りヤフー・ウェブサイトを切り離すことを検討へ - Market Hack

スピンオフの理由

ヤフーは同社の含み資産の価値を顕在化させるべく、去年からその方策を練ってきました。そしてヤフーが所有しているアリババ株を、いわばETFのようなカタチで別会社に落とし込み、それを株式市場に上場することで、キャピタルゲイン税がかからないスピンオフを実現しようとしたわけです。

断念した理由

しかし米国の内国歳入庁から「それをやっても問題ない」というレターを受け取れませんでした。

このためスピンオフされたアバコは（いつ税金が課せられるか、わからない）という不確実性を抱えるわけです。

するとアバコ(※)は常にアリババ株よりディスカウントで取引されることになってしまうリスクが乗じます。

このようなディスカウントが生じ、すべての含み価値をきれいに顕在化させることが出来ないのなら、このスキームにこだわり続けること自体に意味が無くなってしまうわけです。

※アリババ株をスピンオフしてできる予定だった企業

また、アリババ株を分離するプランだけでなく、Yahoo！の本体をスピンオフする計画も同社は検討中。ただし、その場合にはサードパーティーの同意や財務諸表の監査、株主の承認、証券取引委員会への出願などをクリアする必要があります。Yahoo！は迅速に処理を進めるとしていますが、複雑な処理を片付けるのに1年以上かかるとみられます。

なお、2015年10月にCNBCが「Yahoo！のコアビジネスに価値はない」と、オンライン広告市場で苦戦するYahoo！を酷評していましたが、アメリカの大手通信キャリアであるVerizonがYahoo！のインターネットビジネスに興味を示している、という報道もあります。