メモ

成長が著しいPCゲーム市場から学べるビジネスモデルとは?


スマートフォンや家庭用ゲーム機がひしめき合うゲーム市場でシェア37%を誇りトップに君臨するのはPCゲームで、その市場は成長の一途をたどっています。PC市場が成長を続けるのは他の業界では見られない独特のビジネスモデルが使われているからとのことで、eBayにより買収されたサービスHunchの共同創業者であり、KickstarterやPinterestなどのスタートアップに投資してきた経歴を持つChris Dixon氏が、テレビや音楽、出版業界が学ぶべきこととして、PCゲーム市場のビジネスモデルを解説しています。

Lessons from the PC video game industry — Medium
https://medium.com/@cdixon/lessons-from-the-pc-video-game-industry-3350bb7713de

◆PCゲーム市場
PCゲームのほとんどは、アクティブユーザー数が全世界で1億2500万人を突破したSteamというダウンロード販売プラットフォームでリリースされています。Steamはゲームの売上の約30%を取り分として得ており、2015年の売上は1850億円に到達。Steam上では約4500本のPCゲームが販売されていて、その中で1位に君臨するのが「Dota 2」というゲームです。


Dota 2はいわゆるフリーミアムというビジネスモデルを採用していて、ゲームプレイは無料であるのもののアイテム課金制を採用しています。ただし、アイテム課金と言っても販売されているアイテムの大半はゲームキャラクターのコスチュームで、スマートフォンでよくあるガチャやスタミナなどのプレイ回数を制限する消費項目に課金するシステムとは違う形態です。世界中にプレイヤーを抱えるゲーム「League of Legend」もコスチュームを販売するアイテム課金制を採用していて、2014年はアイテム課金だけで約1234億円の売上をあげたとされています。

つまり、PCゲーム市場はコアユーザーとエンゲージすることで、その恩恵を多大に受けているということです。

◆MODとリミックス
家庭用ゲームやスマートフォンゲームで見られない、PCゲーム独特のビジネスモデルとして「MOD」があげられます。MODとは、ユーザーが作成したデータの改造や追加を行うファイルおよびファイルを適用したゲームのことで、MODが始まりだした当初はハッキング行為にあたる可能性があるとして違法性を含めた議論がなされていましたが、昨今では公式ゲームの開発者サイドがMODを好意的に受け止めて、公式がMOD製作をサポートしたり開発ツールを提供したりするなど、柔軟な対応が見られます。PCゲーム業界ではMODが文化として確立されており、優れたMODが独立した製品として販売されることがあるほどです。Steamではユーザーが開発した約4億本ものMODが公開されていて、先に登場したDota 2も最初は「WarCraft3」のMODでした。


著作権を強く保護するテレビや音楽、出版業界ではPCゲームでいうところのMOD的なビジネスモデルは確立されておらず、ユーザーベースでの映像や音楽作品、書籍の編集や二次創作を行うと訴訟問題に発展する可能性があります。Dixon氏は「こういった制限が、誰も試していない新しいことにチャレンジしようとするクリエイターの首を絞めてしまい、結果的に業界が縮小傾向にあるのではないか」と指摘しています。

◆クラウドファンディングとフィードバック
ゲームに限らず多彩なジャンルの製品がKickstarterに代表されるクラウドファンディングに出品されているのですが、PCゲームは多数の製品の中でも圧倒的人気を誇り、Kickstarterのジャンル別総出資額ランキングでは、「ゲーム」が2位の「テクノロジー」に5000万ドル(約61億円)の大差をつけて1位に輝いています。ゲームジャンルの中でも出展数の多いのがPCゲームであり、他のクラウドファンディングサイトでも多数のPCゲームが出展されています。クラウドファンディングで一番重要なのは出資金をユーザーから集めることですが、PCゲームの開発者にとってはユーザーが出資を通してプロジェクトに参加する、ということが出資金集めと同じくらい大事とのことです。


また、最近の傾向では先行プレイを配信するPCゲームも多く見られます。ソフトウェア開発で見られる「ベータ版公開→フィードバック→正式版公開」というビジネスモデルを使うPCゲームが近年増加しており、Steamで人気を博している「Prison Architect」は、Steamの早期アクセスを利用して得たユーザーからのフィードバックを反映しつつ知名度を上げていき1900万ドル(約23億4000万円)もの開発資金を得た作品です。他にもSteamにはソフトウェアでのベータ版に当たる早期アクセスを利用するゲームが増加していて、開発者とユーザーの相互関係がきっちりと確立されています。

オンラインメディアのBuzzFeedを立ち上げたジョナ・ペレッティ氏は「従来のメディアはフィードバックをくれる消費者と関係を構築できていないのが問題である」と老舗メディアが抱える問題を指摘し、「IT企業は消費者が何を望んでいるかを理解している『小売業』で、老舗メディアは最も高い金額を払った人にしか販売しない『卸売業』みたいなものです」と形容しています。つまり、開発者サイドとユーザーがコミュニケーションをとることでお互いの利益を生み出せるのがクラウドファンディングやベータ版配信、早期リリースといったビジネスモデルなのですが、このビジネスモデルは老舗企業の力が強い業界で採用されにくいのが現状のようです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
1発でパソコンをゲームに最適化するフリーソフト「Game Booster」 - GIGAZINE

殺人者の心理がわかるゲーム「DayZ」が発売後1カ月で100万DLを突破した理由とは? - GIGAZINE

PS4とXbox Oneが一体化したノートPC型ゲーム機「PLAYBOX」がギーク過ぎ - GIGAZINE

3Dバリバリのゲームをするべく小型のキューブPCにグラボを増設してみた - GIGAZINE

PCゲームの中でピタゴラスイッチをするムービー - GIGAZINE

in メモ,   ゲーム, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.