ブラックホールが星を飲み込むときに何が起こっているか判明してNASAがレンダリング映像を公開
星がブラックホールに近づいたとき、星のブラックホールに近い側と遠い側にかかる重力に大きな違いが生じて、星は近い側から粉々に砕かれブラックホールへと落ち、ガス状の円盤がブラックホールの周囲に発生し、中心から数年に渡ってX線が発生すると考えられており、この現象は「潮汐破壊」と呼ばれています。2015年現在までは、潮汐破壊が発生することは確認されていたのものの、その発生過程については明らかになっていませんでした。しかし、天文学者が率いる調査チームが潮汐破壊の観測に成功し、NASAがレンダリングしたアニメーション映像を公開しています。
Destroyed Star Rains Onto Black Hole, Winds Blow It Back | NASA
http://www.nasa.gov/mission_pages/chandra/destroyed-star-rains-onto-black-hole-winds-blow-it-back.html
Flows of X-ray gas reveal the disruption of a star by a massive black hole : Nature : Nature Publishing Group
http://www.nature.com/nature/journal/v526/n7574/abs/nature15708.html?lang=en
星が強力な重力で吸い込まれた後、ブラックホールに落ちていく残骸が何百万度にも熱せられ強烈なX線を放射。きわめて温度の高い極限状態で放射されたX線は波長が短く光を放ち、星の残骸が事象の地平線の向こう側に落ちるに連れて光はどんどん弱くなっていきます。このときに、ガスが発生しブラックホールの中心に向かってらせんを描くように吸い込まれていくのですが、この現象の発生経緯は謎に包まれたままでした。
しかしながら、ミシガン大学天文学部のJon M. Miller博士やオランダ宇宙研究所のJelle Kaastra博士などが率いるプロジェクト「All-Sky Automated Survey for Supernovae」が、3台のX線望遠鏡を使って異なる波長で見ることにより潮汐破壊の発生過程の観測に成功。今回観測されたのは、地球から2億9000万光年離れたところにある銀河「PGC 043234」の中心にあり、太陽の何百万倍もの質量のブラックホールで発生した潮汐破壊で、直近の数十年で地球から最も近い場所で発生したもの。実際に潮汐破壊が発生したのは2014年11月のことです。
同プロジェクトを率いたミシガン大学のMiller博士は「潮汐破壊が発生していることを示す証拠はたくさんあり、潮汐破壊発生時に何が起こっているか多くの議論が交わされてきました。今回観測された潮汐破壊は、実際に何が起こっているかを理解するために今までにないくらいの最高の機会でした」と述べています。
NASAは同プロジェクトで収集された観測データをレンダリングして潮汐破壊を再現したアニメーション映像を公開しており、潮汐破壊発生時に何が起こっているのかを理解するのにかなりわかりやすくなっています。
NASA | Massive Black Hole Shreds Passing Star - YouTube
少し見えにくいですが、画像の赤枠の中にブラックホールがあります。
奥から手前に向かって光り輝く星がブラックホールの横を通り過ぎようとします。
星とブラックホールの距離が短くなると、星は強力な重力によりブラックホールに近い側から吸い込まれ始めます。
粉々になりながら吸い込まれる星。
円を描くようにしてブラックホールに落ちていきます。
星を吸い込んでいるときに明るくなりブラックホールの全貌を確認できます。
星の残骸でできた円盤が出現。
そして中心から青い光が放射されます。
青い光は暗くなったり……
明るくなったりを繰り返しつつ、中心からガスのようなものが出てきました。
光を発した状態は数年間続くそうです。
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