タダで世界中を飛び回る「マイレージ、マイライフ」みたいな人生を送る男
Ben Schlappig氏は無料で航空券を取得して世界を飛び回る25歳のブロガー。彼は生活のほとんどを飛行機の上で過ごしており、1日の6時間は空にいます。例えばある週末は69時間で香港、ジャカルタ、東京を回ってニューヨークに戻る、というような生活を送っており、空港から出ることはほとんどなし。唯一ホテルに宿泊するときは一流ホテルのスイートルームですが、これもお金を支払うことはありません。2014年から計算するとわずか1年で地球16周に相当する40万マイル(約64万km)という距離を飛行しているという、映画「マイレージ、マイライフ」を地で行くような男性の半生がRolling Stoneで明かされています。
Up in the Air: Meet the Man Who Flies Around the World for Free | Rolling Stone
http://www.rollingstone.com/culture/features/ben-schlappig-airlines-fly-free-20150720
Schlappig氏は「5枚のクレジットカードを使ってほぼ無料で航空券をゲットする方法」といった航空関係のお得情報を提供するブログ「One Mile at a Time」を運営しています。毎日約6回の更新を行っていますが、数多くの読者を集める秘密は単にハウツー記事にあるわけではなく、その方法を実践することで実際にSchlappig氏自身がゴージャスな生活を送っていることも1つの要因です。
以下の写真に写っているのが飛行機のファーストクラスでシャンパンを傾けるSchlappig氏。
Schlappig氏が無料でファーストクラスなどのチケットを入手する方法を発見したのは13歳のころ。彼は他の兄弟と比べても飛び抜けてIQが高く、幼少期から飛行機が大好きだったとのこと。そんなSchlappig氏が見つけたのはFlyerTalkというウェブサイトでした。FlyerTalkは全ての航空会社情報の世界的フォーラムで、例えばシステムのバグで表示された格安チケットの情報など、航空会社のシステムの穴をついた情報が飛び交っています。
Schlappig氏は、まずはユナイテッド航空の最上級会員になることを目指して、1年かけて航空会社のチケット発行アルゴリズムのバグを利用する入り組んだテクニックや、1970年の終わり頃から始まった航空会社のマイレージプログラムのことなど、様々な「航空券のトリック」について学びました。
続いて必要になるのは大量のクレジットカード。できる限り多くのクレジットカードを集めてはキャンセルすることで、銀行と航空会社の提携ポイントを手に入れるという技があるのですが、さらに航空会社のシステムを調べたSchlappig氏は、大量のクレジットカードを有効利用する「Manufactured Spending」という手法を知ります。航空会社提携カードは支払金に応じてポイントがつくため、航空マニアたちは買値とほぼ同額で販売できるギフトカードなどをクレジットカードで購入してそれを支払いに充てることで、ほぼ無料でマイルやポイントを取得するという方法を使っていました。
By Mighty Travels
Manufactured Spendingが実際に有効な手段であるとわかったSchlappig氏は、この方法がカジノのテーブルゲームと似た、航空会社が親元、自分たち実践者が“トランプ賭博師”のゲームであると理解しました。彼は、実際に家族旅行で購入したドイツ行きのエコノミー席の航空券を無料でファーストクラスに変えて見せたことで、自らの行動を両親に許容させることに成功。15歳になるころには、Schlappig氏の父親は週末に世界中を飛び回るSchlappig氏の送迎を行うなど、「趣味」を応援する立場になっていたそうです。
こうしてSchlappig氏は16歳のときにシカゴ・大阪・サンフランシスコ・ソウル間のフライトを繰り返して1度の旅行で太平洋を6回渡るなどして、17歳の誕生日には50万マイルのフライトを記録しました。普通の高校生とははるかに異なる体験を得ていたSchlappig氏はクラスメートよりもFlyerTalkの活動家たちと行動する方が有意義であると気づきます。2007年にはフロリダ大学に入学したものの、FlyerTalkの活動を続けたとのこと。そのとき立ち上げたのが人気ブログとなる「One Mile at a Time」で、それまでに学んだ「趣味」がビジネスになっていくわけです。
By ChicagoKoz (ORDSpotter)
その後にも、Schlappig氏は仲間とともに間違って販売された航空券を返上すると200ドル~400ドル(約2万4000円~5万円)分のバウチャーがもらえる「フライト・バンピング(フライトのガス抜き)」と呼ばれる現象を予測するソフトウェアを開発し、「バウチャー」というある種の自由貨幣を操作できるようになります。また、航空会社に不手際があると入手できる「謝罪バウチャー」を受け取るため、Schlappig氏はフライトのたびにヘッドライトの故障などを探すなどしてバウチャーを蓄えたとのこと。Schlappig氏は当時のことを「カンタンにシステムを操れるティーンエイジャーの横柄さは、ゲームの限度を押し上げる誘惑に駆られるのです」と話しています。
しかし、そのときSchlappig氏はNew York Timesの記者に不注意で1万ドル(約124万円)以上のバウチャーを見せてしまったことで、ユナイテッド航空から「システムを悪用したためアカウントを永久停止する」という配達証明便を受け取ることになります。その手紙にはシステムを悪用した被害額として4755ドル(約59万円)の返還も求められていましたが、Schlappig氏は「ルールは強引に押し上げているが、違法なことはしていない」と返還には応じていません。ユナイテッド航空はSchlappig氏の件に関して公式コメントを出さないとしており、Schlappig氏も請求書を送るようにユナイテッド航空に連絡しているものの、返事はないとのこと。
この頃からSchlappig氏は本格的なブログの収益化を開始し、「PointsPros」というマイレージサービスをうまく使った旅行コンサルティングを始めました。計り知れないほど複雑な航空会社のマイレージに関するルールは混乱した旅行客の中に市場を作り出し、PointsProsを軌道にのせることに成功。2015年現在、Schlappig氏のブログの収益は3本柱で成り立っており、1つ目が広告、2つ目がPointsProsとなっており、3つ目はブログからのクレジットカード加入率によるカード会社からのコミッションとのことです。
By Tom Mascardo
なお、映画の「マイレージ、マイライフ」は以下のような映画です。
マイレージ、マイライフ (字幕版) - YouTube
・関連記事
飛行機のチケットの買い時をビッグデータで予想して通知するサービス「FLYR」 - GIGAZINE
周遊チケットが簡単に取れる「KAYAK」を使ってアメリカ2都市に行ってみました - GIGAZINE
格安航空券もネットで国際競争の時代、海外サイト利用でバンクーバーまで飛んでみた - GIGAZINE
格安航空会社ではないが南アフリカと日本を繋ぐ信じられない格安フライト、ドバイ経由のエミレーツ航空で帰国してみた - GIGAZINE
運賃は500円~1000円程度、格安で旅行できる「立ち乗り飛行機」が登場へ - GIGAZINE
・関連コンテンツ