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「なぜ日本人の間で30歳前後のセックス未経験者が増えているのか」というニュースがCNNで報じられる


現代の日本が抱える問題には、若い世代の人口が減少を続ける「少子高齢化」問題があるわけですが、これにはさまざまな理由があるとされています。CNNが東京発として掲載した記事では、20歳代後半を含む30歳代のいわゆる「壮年世代」の未婚者の中でセックス未経験者の占める割合が増加したことを関連づけ、少子高齢化をはじめとする社会が抱える問題とその対応策、そして今後の社会のあり方などが語られています。

Middle-aged virgins: Why so many Japanese stay chaste - CNN.com
http://edition.cnn.com/2015/06/24/asia/japan-middle-aged-virgins/index.html

◆増加する30歳前後の童貞・処女率
記事によると、政府が実施した調査結果では20代と30代の人口のおよそ40%が「親密な関係にあるパートナーがいない」と回答しており、多くの人はそのような関係を「面倒くさい」と感じているとCNNは指摘。また、2010年に実施された別の調査では、30代の未婚男女のうちおよそ4人に一人はセックスの経験がない、という結果が出たと紹介して問題を提起しています。記事を作成したヨーコ・ワカツキ記者は「まだ私が独身だった1980年代の日本の景気は絶好調で、それは男女のデートシーンにおいても同じことが言えました。イケてる女性は結婚前に処女を失うことに罪の意識を感じていませんでした。私自身にとって言えば、処女を失うことは個人的に大きな出来事ではありましたが、社会的にみればそれほど大きなことではありませんでした。当時は80年代であり、日本には活気があり、生活は豊かでした」と当時を振り返っています。

When I was a young, single woman in Japan in the 1980s, the economy was red hot and so was the dating scene.
Cool girls weren't ashamed of losing their virginity before marriage.
Of course for me personally, losing my virginity was a big deal. But socially, it was no biggie. It was the 80s, Japan was alive, and life was good.

そんな「幸せな時代」を謳歌した日本ですが、今ではすっかり変わってしまったとワカツキ氏は指摘。自身や同世代の同僚が持っていた性や男女関係に対する関心が、現在の日本ではすっかり無関心へと変わってしまったことに危機感を抱いているといいます。

実際に日本の厚生労働省が公表しており、記事でも参照したであろう調査結果が以下のページです。報告書11ページの表では、25歳から29歳の未婚男性のうち25%が性交渉の経験なしであることがわかっており、30歳から34歳に至っては26.1%とその数値が若い世代と逆転していることがわかります。一方の女性でも、同世代における数値は29.3%と23.8%となっており、やはり4分の1程度の人が性交渉未経験であることが明らかにされています。

(PDFファイル)第14回 出生動向基本調査 結婚と出産に関する全国調査 独身者調査の結果概要


とはいうものの、これらの数値は過去からの時系列的に突出しているわけではないという点には留意が必要です。第14回調査の結果では各世代で数値が上がったのは事実ですが、30歳~34歳代を除く世代における数値を表の左から読み進めると、過去と比べてもさほど大きく変化しておらず(図中点線)、むしろ未経験者の割合は下がっている(=経験者の割合が増加している)といえるようにも読み取れます。むしろ目を向けるべきは、18歳から24歳の世代における未経験者率が一気に7~8ポイント程度上昇していることかもしれません(図中太線)。


また、CNNの記事では何も触れられてはいませんが、少子化の原因には一人の女性が一生で出産する子どもの平均数である「合計特殊出生率」が低水準で推移していることも大きく影響しています。このほか、「社会が子育てについて厳しい」と問題を唱える声が挙がるなど、少子化にまつわる状況は一言で片付けられるほど単純なものではありません。

◆性に対する無関心
ワカツキ氏は「性に対する無関心は日本において極めて大きな社会問題になっている」と記事で紹介し、世界でも類を見ない速さで進行する社会の少子化問題を引き起こしていることを指摘。そんな問題を抱える日本で行われている試みの1つとして、増加する壮年世代を対象にした「ヌードデッサン会」が開かれていることを紹介しています。


その様子を取材したワカツキ氏は「30歳代、40歳代までにセックスの経験がない男性が単にヌードのデッサンをするというのは、燃えさかる山火事に水を2、3滴たらすだけのようなもので、問題解決にはならないだろう」と感じたそうですが、参加者の一人であるサカイ・タカシさん(仮名)に対して聞き取り取材を行ったところ、思いがけないことを知らされた模様。


41歳のサカイさんが月に2回参加しているデッサン会は、東京を拠点に活動する「ホワイトハンズ」が開催するバリアフリーのヌードデッサンイベントのららあーとで、この場でサカイさんはマンガやアニメのような架空ではなく、実際の裸の女性に近づく機会を初めて得ることになったといいます。

また、ホワイトハンズが主宰する「ヴァージンを、明るくマジメに考える学校」のヴァージン・アカデミアは、約100ページに及ぶという公式テキスト「ヴァージン・ブレイカー!」を教材にカリキュラムを構築しているそうです。


サカイさんはインタビューに対して「女性に出会って魅力を感じると、デートに誘ったり手をつないだり、キスしたりと普通はそんな風に進むものですが、私の場合はそのような事がこれまでに起こりませんでした。そういう機会は自然にやってくるものだと思っていたのですが、何もありませんでした」と語ります。

ホワイトハンズで「セックスヘルパー」として活動するサカツメ・シンゴ氏は「セックス未経験で、そんな自分の状況を変えたいと思っている壮年世代の男性は、女性とのリアルな人生経験が欠けています。なので、彼らに裸の女性を見ながら過ごす時間を与えることが、問題解決への第一歩となるのです」と活動の目的を語っています。


またサカツメ氏は「日本の社会には、愛やセックス以外にもアニメや芸能人、マンガやゲーム、スポーツなど、多くのエンターテインメントが存在しています」と日本の状況を説明し、「そのような、自分を傷つける可能性のない楽しいものがある状況において、なぜ愛やセックスを選ぶ必要があるのか?と考えるのです」とセックスへの無関心の理由を指摘。「『完璧な人間関係』という幻想と、日本人が持つ『失敗すること』への恐怖が結びつくことで、今の社会の問題が起こっているのです」と問題の背景を語り、セックスへの無関心が出生率の低下に影響を与えていると語っていたとのこと。


デッサン会に参加しているサカイさんは山登りが趣味で、職業は教師。これまでにセックスの経験がないだけでなく、女性と付き合ったことやキスの経験もないそうです。サカイさんはそんな自分の「経歴」を周囲にひた隠しにしてきたとのことで、「童貞であることを周囲に教えないことは、実際の問題が存在していないと振る舞い、問題を棚の上の誰の目にもつかない場所に隠していたようなものでした」と語ります。

◆今後のサカイ氏、そして社会の行方
CNNの記事を作成したワカツキ氏は「6歳になる私の息子を見ながら、果たして今後の日本は『よき我が家』になるのか」と考えるといいます。人口の減少率がこのままだと、2060年には日本の人口は2015年よりも30%も減少してしまい、人口の5人のうち2人が65歳以上となった社会は果たして存続することはできるのか、この子の人生はどんなものになるのだろうか、と心配になるとのこと。

自身の27年におよぶキャリアの中で、日本人のセックス観、人間関係観は大きく変化してきたとワカツキ氏は語ります。バブル景気にわいていた1980年代、未婚で25歳以上の女性は「賞味期限を過ぎた」という意味で「クリスマスケーキ」と呼ばれました。それが1990年台になると「年越しそば」に変わったといいます。これはもちろん、「適齢期」が31歳になったということ。

そして2015年、このような呼び名はすでに「言い古された表現」として笑いのタネとなっていると指摘。20年に及ぶ景気後退の結果、日本人男性は職業にも就けず、家族を養うだけの稼ぎもないために自信を喪失することですっかり去勢されてしまったとしています。


前出のサカツメ氏も同様に「経済状況と収入の規模は、自分への自信の持ち方に大きく関わっています。収入が低ければ自分への自信が失われ、自信の喪失は愛情関係を築くことを難しくしてしまいます」と語ります。

サカイさんはいま、ホワイトハンズのセッションの中で自分の過去を隠さずに打ち明けているそうで、他人に全てを話すことで「自分は一人ではない」ということに気づくことができたとのこと。サカイさんは「社会には、あたかも『自分には性欲がない』と言いきかせながら暮らしている人がたくさんいます。実際にじかに接してみると、そのような人が増加していると感じています」と語ります。

サカイさんは今でも童貞を卒業したいという気持ちはあるものの、一方ではその気持ちは淡々としたものであるとのこと。「本当のことを話せるようになって今は気持ちが楽になりました。話すことで、自分の置かれた状況は必ずしも変える必要があるものではなく、認識すべきものであることに気がつきました」としつつも、「まだ、あきらめていませんよ」とその気持ちを語っていたそうです。


記事の内容についてはさまざまな意見を持つ人が存在しているようですが、日本の社会が抱える問題と、セックス経験率との間にどの程度確かな相関関係があるのかについては、単純に結論を出すのが難しい問題といえそう。登場している団体や人物の考え方について異論を唱えるものではもちろんありませんが、このトピックをCNNが、しかも東京発の記事として発信したということで、世界でどのように受け止められることになるのか、非常に気になるところです。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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