薬物耐性を持つ多剤耐性菌「MRSA」に1000年前から伝わる薬が効果大という恐るべき事実が判明
ペニシリンの一種であるメチシリンなど、複数の抗生物質に対する薬物耐性を持つ多剤耐性菌が「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)」です。健康な人には害のない細菌ですが、感染すると細菌を倒すための薬が効かなくなるという恐るべき細菌で、抗生物質を多用する病院などで多く見られます。そんなMRSAがなんと1000年前のまだ抗生物質が発見されていなかった時代の治療法で殺菌可能であることが発覚しました。
1,000-year-old onion and garlic eye remedy kills MRSA - BBC News
http://www.bbc.com/news/uk-england-nottinghamshire-32117815
1000年前、アングロサクソン人が眼感染症の治療法として用いていた方法が、多剤耐性菌であるMRSAを殺菌するのに適切であることが判明しています。1000年前に既に考案されていたという方法を用いると、MRSAはほとんど殺菌できてしまうそうで、専門家は口々に「驚いた」とコメントしています。
対MRSAに役立つという1000年前の治療法は、大英図書館に保管されているBald's Leechbookと呼ばれる古い医学本の中に記されていたもの。アングロサクソン人の研究を行っているノッティンガム大学のクリスティーナ・リー博士によれば、治療法は「眼軟膏」としてBald's Leechbookに記されていたもので、このレシピを翻訳して実際にMRSAに使用してみたところ、MRSAを殺菌可能であることが判明しています。リー博士によると、眼軟膏はニンニク・玉ねぎ/ニラ・ワイン・雌牛の胆汁の4種類を混ぜて作られるそうです。
Bald's Leechbookはアングロサクソン系の医師が行った実験・観察の記録が記されたもので、現代の科学的研究法に非常に近しい手順でものごとが書かれています。この本の中に書かれていた眼軟膏を初めとするさまざまな薬や治療法の持つ個々の成分や手法が細菌に対してどのように働くかを調査するため、リー博士を含む研究チームはさまざまなテストを行い、MRSAを90%近く殺すことが可能な眼軟膏が見つかったというわけです。
フロイア・ハリソン博士は眼軟膏が「少量の抗生物質活性効果」を持っていると述べており、この眼軟膏の効果について率直に「私たち研究チームは、素材の組み合わせによる眼軟膏の絶大な効果に感動しました」とコメントしています。
リー博士はBald's Leechbookに書かれた眼軟膏がMRSAに効いたように、世の中にたくさん存在する「治療方法について書かれた過去の文献」の中には、現存する細菌や病の治療法になるものがあるかもしれない、と語りました。なお、これらの調査結果の詳細はバーミンガムで開催されるAnnual Conference 2015にて発表予定となっています。
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