人ではなく資源に課税することで高品質サービスがあふれ環境に優しい社会が実現できる「Ex’tax」構想とは?
課税方法は公平の観点だけでなく、富をうまく配分し経済を活性化させたり持続的な発展を実現したりとさまざまな要素を考慮する必要があるため"正解"はなく、社会情勢に合わせてより良い方式を求めて進化しています。そんな中、資源枯渇などを考慮してよりエコロジカルでなおかつサービス品質を向上させ人々の生活をより豊かなものにするための課税方法として「Ex'tax(エックスタックス)」という考えが注目されています。
Ex'tax :: The Big Idea
http://www.ex-tax.com/big-idea/
Ex'taxがどのような税制なのかは以下のムービーを見ればよく分かります。
Ex'tax in 90 sec on Vimeo
現代社会は物であふれかえる「物質社会(消費社会)」です。
あふれかえる製品は、資源から生み出されています。
そのため物質社会は資源枯渇の問題を生み出しました。
他方で人口爆発という言葉のとおり、20世紀以降、急激に世界人口が増加。
物質社会は人もあふれる社会であり、働き口が見つからず失業する人であふれかえる「失業社会」としての一面もあり。
資源が枯渇する問題と失業者があふれる問題は実は相関関係があります。それは、相対的に見れば資源の消費行動に対する課税が少なすぎるのに対して労働力に対する課税水準が高すぎるから。つまり、「資源は安くあがり、労働者は高くつく」というわけです。
資源消費のコストが安いため、資源はガンガン消費されて枯渇するほどなのに対して……
労働力に対する課税の大部分を労働者を雇用する企業が負担するため、高い人件費を嫌って人減らしをするというわけです。
「それはおかしいのではないか?」と考えたのが、オランダの起業家Eckart Wintzen。彼はこの物質社会・消費社会の構造的欠陥を課税方法で解決しようとして、考え出されたのが「Ex'tax」という税制です。
消費社会の根本的な問題は、資源が安く、人が高いということ。つまり、人(やサービス)に対して税金をかけ過ぎていて、反対に資源消費に十分、課税されていないということ。
そこでEx'taxでは、この構図を逆転させ、「資源の消費に対して大きく課税して、逆に人やサービスに対しては税金を減らすべき」と考えます。
Ex'tax制の下では、資源をやりとりする時に大きく課税されるため資源価格が必然的に上昇します。したがって物の価格は上がります。
そうすると、なるべく物を大切にしてRecycle(リサイクル)・Reuse(再利用)しようという動きにつながります。
そして、資源の消費自体を抑えるReduce(消費を減らそう)という動きも出てきます。つまり、Ex'taxによって自然と3Rが推進され、エコな社会になるというわけです。
さらに、物が壊れた場合でも修理して長い時間使うという行動が生まれやすくなります。
もちろん修理をするのは人なので、ここに雇用が生まれます。
また、人が行うサービスに対する課税が低くサービスにかかるコストが低下するため、安価にサービスを受けられることになります。
労働力ではなく物に課税しようというEx'taxによって、安くてサービス品質が高く環境に配慮した社会が実現されるというわけです。
「労働者への高い課税は労働者の数を最小化する」「(相対的に)資源への課税が低ければ際限なく資源が消費される」という構造から、課税対象を「人」から「資源」へと大きくシフトさせるEx'taxですが、この税制が実現するためには「人から資源への課税」という変革を世界規模で実行する必要があるので、実現への障壁は高そうです。
なお、Ex'taxは、税率を一律にするフラット・タックスを改良する税制としてデイビッド・ブラッドフォード氏が考案したエックス・タックスとはまったく別物です。
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