「iPhone 6」と最新の「iPad」を作っているApple下請け工場の戦慄の実態が明らかに
次から次へと新しくデビューするスマートフォンやタブレットが人びとの関心をひきつけている一方で、それら製品を作る現場では過酷な環境下での作業が行われ、現地の労働者が犠牲になっている事実が白日の下にさらされ続けています。新たに発表された報告書では、ある工場が安全対策を約束したにもかかわらず、2年がたった現在でも状況は改善せず、むしろ悪化しているという実態が明らかにされました。
Two_Years_of_Apple_Broken_Promises_CLW_GA_Report_Sept_2014.pdf
(PDFファイル)http://chinalaborwatch.org/pdf/Two_Years_of_Apple_Broken_Promises_CLW_GA_Report_Sept_2014.pdf
U.S. watchdogs accuse Chinese Apple supplier of unsafe work conditions | Reuters
http://www.reuters.com/article/2014/09/04/us-apple-china-labour-idUSKBN0GZ1NB20140904
アメリカを拠点とするChina Labor Watch(CLW:中国劳工观察)とGreen Americaが2014年7月ごろに行った調査によると、中国江蘇省の宿遷市にあるApple製品を製造するCatcher Technology Co Ltdの工場では、可燃性のあるアルミ・マグネシウム合金の粉末が床に散乱する状況で作業が行われ、避難用の窓やドアにも鍵がかけられているという状況だったことがわかっています。Appleからは、調査後に問題についての対策を講じたというコメントが出されています。
「Two Years of Broken Promises(約束の破られた2年)」と題された25ページにわたる報告書では、従業員に対して十分な安全教育が実施されていない現状や、体を保護する保護具が必要な時に用意されていないために有害な化学物質にさらされている現状が報告されています。
CLWが2013年に同じ工場を視察した際にも複数の違反が見つかっており、Appleは労働環境の改善をCatcherを通じて実施することを確約していましたが、およそ2年が過ぎた今でも多くは実行されずにそのままとのこと。報告書の中で調査チームは「2014年に行った調査のなかでは、前回の調査の時点では存在していなかった新たな違反事項が見つかっている。従来の問題も解決されていないことから、労働環境はさらに悪化しているといえるだろう」としています。
CatcherはEメールを通じての声明で「CLWによる調査結果には非常に憂慮の念を抱いており、厳しく受け止めています。弊社ではAppleのサプライヤーコード(下請け業者に求められる行動規範)に準じて行動し、徹底的な調査を実施します」と述べており、一方のAppleも「直近で実施された防火基準調査の際にも、Catcherは不備のあった消火装置の修理や、避難経路の確保状況の改善、不足していた避難誘導灯の追加など、必要とされた対策を当日中に完了させた」として国際安全基準を満たしている点を評価する声明を出しています。
報告書では、「従業員は安全教育を受ける」とする雇用契約を交わしながら一切何の教育も行われていない点や安全保護具の支給の不備、無賃金労働の強要などの問題点が列記されています。
通勤で工場にやってきた従業員の姿。人数が多いためもあってか、屋根のない場所で集合している様子。屋台のようなものもあるので、朝食をとっているのかも。
構内のカフェテリアや工場内の機械の傍らで仮眠をとる従業員の姿など。
カフェテリアでは市場よりも高い価格で食べ物が販売されているのですが、工場の従業員は「Catcherが店に対して高い賃料を取っていることと、他に買いに行くところがないので価格がつり上げられている」と語っています。
従業員が住む寮の様子。寮費は30日あたり60元(約1000円)で、部屋は数人のルームメイトとシェアすることになります。水道光熱費は部屋あたり45元(約770円)とのこと。フロアごとに供用のバス、トイレが設置されており、水道水は飲用には適さない状態だそうです。
加工時に出たアルミマグネシウム合金のくずが放置されている様子。飛散することで健康被害や火災の原因になる危険性が潜んでいます。
加工時に出た廃液がそのまま垂れ流されている様子も収められています。
非常用の脱出口にはカギがかけられていたとのこと。
同じ江蘇省では8月に別の工場で70名以上の死亡者を出す爆発事故が起こったばかりですが、この時の原因も危険な状態で放置されていた鉄くずが原因とされています。事故を受けて政府は省内200以上の工場で操業を停止する命令を出し、安全対策の確認を実施。
しかし実際には同じような危険な状況が残されており、報告書では「政府による調査が行われたが、その後も安全性を高めるための新たな基準などが作られた形跡はない」として問題点を明らかにしています。
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