「スマホアプリ開発で大金を稼ぐのは全体のたった2%」など、アプリビジネスに関する恐るべき実態を明かすレポート「Developer Economics Q3 2014」が公開
By Kārlis Dambrāns
世界のアプリ市場を中心にさまざまな調査を行うDeveloper Economicsによる定期レポート「Developer Economics Q3 2014」が公開されました。このレポートによると、スマートフォンのアプリ開発で大金を稼ぐデベロッパーたちのアプリは市場全体の収入の半分以上をたたき出しており、デベロッパーの約半数はひと月に1万円の収入すら得ることができていない、というスマートフォンアプリ開発ビジネスの恐るべき実態が明かされています。
Developer Economics Q3 2014: State of the Developer Nation | Developer Economics
http://www.developereconomics.com/reports/developer-economics-q3-2014/
Developer Economicsは、アプリ市場を中心にさまざまな調査を行っている企業。定期的に公開しているレポートでは、インテルやMicrosoft、Mozilla、NokiaなどのIT市場で大きな影響力を持つ企業と協力して調査を進めており、今回公開されたレポート「Developer Economics Q3 2014」でも、各社の協力のもと1万人のアプリデベロッパーを対象とした調査を行い、それを基にさまざまな興味深いデータが導き出されています。
モバイルアプリのデベロッパーが使用しているプラットフォームの割合を表したグラフが以下のもの。最もアプリデベロッパーが開発に取り組んでいるのはAndroidの70%で、次点にiOSの51%、続いてWindows Phone(28%)、Windows 8(18%)、モバイルブラウザ(15%)、BlackBerry10(11%)となっており、iOSがシェアを徐々に下げているのに対し、Windows Phoneは徐々にシェアを上げており直近の調査では28%ものシェアを獲得することに成功していることが分かります。
地域別にみた主要プラットフォームのシェアの違いはこんな感じ。北米・欧州・オセアニアといった先進国の多い地域ではiOSとAndroidのシェアは同程度もしくはiOSのシェアが上回っているのですが、南米・アフリカ・アジアといった発展途上国の多い地域ではAndroidが圧倒的なシェアを誇っています。
これについてDeveloper Economicsは、「モバイルプラットフォームにおけるシェア争いは、iOSが大多数のハイエンドデバイスのシェアを得ることに成功しているものの、その他のシェアのほとんどをAndroidに奪われるという形でほとんど決着がついている状態だ」と記述しています。
そしてこれは実際のモバイルプラットフォーム(OS)の市場シェアを表したグラフ。デベロッパーが開発に取り組んでいるプラットフォームのシェアの差とは裏腹に、実際のマーケットシェアではiOSとAndroidの間には大きな差ができています。
次のグラフはデベロッパーがひと月にアプリからどの程度の収入を得ているのかを表したもので、なんと全体の47%が月に1~100ドル(100~1万円)程度の収入しか得られていないことが分かります。これらのデベロッパーはアプリ開発を本業として続けていくのは明らかに不可能な層で、それが全体の約半数というのは驚くべき数字です。これに対してひと月に1万ドル(約100万円)以上稼ぐアプリデベロッパーは全体の12%、50万ドル以上(約5100万円)を稼ぐデベロッパーに至っては全体の1.6%しか存在しないそうです。
さらに以下のグラフはAndroidとiOSにおけるデベロッパーのひと月の収入ごとの割合を表したもの。グラフによればiOSアプリデベロッパーの50%とAndroidアプリデベロッパーの64%は、ひと月の収入が500ドル(約5万円)以下という非常に厳しい数字が出ています。実際のマーケットシェアは圧倒的に少ないにも関わらず、多くのデベロッパーがiOSアプリを開発するのは、以下のグラフからも分かるようにAndroidアプリよりも「儲かるから」、とのこと。
アプリ収入別にセグメント分けしたグラフが以下のもの。グラフ上部のパーセンテージはアプリの売上全体における割合を表しており、例えばひと月に10万ドル(約1000万円)以上を売り上げるアプリを開発しているのは全体の2%のデベロッパーで、その2%が作るアプリの売上は全体の売上の54%を占める、ということがグラフから分かります。
アプリ全体の売上の半分以上がたった2%のデベロッパーが作成したアプリによるものであったり、ひと月に50万ドル以上(約5100万円)を稼ぐデベロッパーは全体の1.6%しかいなかったり、デベロッパー全体の約半数が月に1万円以下の収入しかなかったりと、アプリ開発でそれなりの収入を得ている中間層のデベロッパーというのがスマートフォンアプリビジネス市場にはほとんどいないわけです。
なお、アプリデベロッパーの67%は一般消費者を主なターゲットとしてアプリを作成しており、11%は何かしら専門家をターゲットに、16%は企業をターゲットにアプリの開発を行っているとのこと。企業をターゲットにアプリを開発しているデベロッパーの収入は、他の層をターゲットにアプリ開発をしているデベロッパーと比べると、ひと月当たり5000ドル(約50万円)以上を稼ぐ割合が2倍、ひと月で2万5000ドル(約254万円)以上を稼ぐ割合は3倍にもなるということも明らかになっています。
以下のグラフはデベロッパーが使用している開発言語のシェアを表したもので、最も多くのデベロッパーに使われているのはAndroidアプリの開発言語でもあるJavaで全体の42%です。さらにAndroidアプリやiOSアプリのデベロッパーが使用している言語まで見てみると、47%のiOSアプリデベロッパーと42%のAndroidアプリデベロッパーは、ネイティブ言語以外を使用してアプリ開発に取り組んでいることが分かります。
さらに、ゲームアプリに関するデータを見てみると、33%のアプリデベロッパーがゲームアプリを作成しており、ダウンロードされるアプリの40%がゲームアプリで、ゲームアプリの57%が500ドル(約5万円)未満の売上しかあげられず、デベロッパーの70%が4つ未満のゲームアプリをリリースしており、アプリ市場全体の収入の80%はゲームアプリによるものとのこと。
これはゲームアプリデベロッパーが現在使用しているツール(青)と、その前に使っていたツール(水色)を表したグラフ。このグラフによると最も多く使われているツールはUnityですが、特殊なツールを使用せずにゲームアプリを開発するデベロッパーの割合も42%とかなり高めであることが分かります。
なお、Developer Economicsの調査によると、ツールの使用とアプリ開発による収入の間には強い相関関係が存在していることが判明しており、多くのツールを使ってアプリ開発を行うと、アプリの売上がどんどんふくれあがっていくという結果が出ており、サードパーティ製のツールを使ってアプリ開発を行うのはアプリビジネスを成功させるためにとても重要な要素とのこと。
これまでにリリースしたアプリの数と、アプリ開発からどのくらいの収入を得ているかを表したのが以下のグラフ。縦軸がこれまでにリリースしたアプリの数を表しており、多くのアプリをリリースしているデベロッパーほどアプリから多くの収入を得ていることが分かります。
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