脳に極小チップを埋め込む「PTSDのインプラント治療法」をDARPAが開始
国防高等研究計画局(DARPA)は、脳に埋め込んだ極小のチップによる脳深部刺激療法でPTSD(心的外傷後ストレス障害)などの精神疾患を治療するプロジェクトの開始を発表しました。5年間で2600万ドル(約26億4000万円)という巨額の予算が立てられています。
2014/05/27 Journey of Discovery Starts toward Understanding and Treating Networks of the Brain
http://www.darpa.mil/NewsEvents/Releases/2014/05/27a.aspx
DARPA teams begin work on tiny brain implant to treat PTSD | The Verge
http://www.theverge.com/2014/5/28/5758018/darpa-teams-begin-work-on-tiny-brain-implant-to-treat-ptsd
DARPAが開始したプロジェクトは「SUBNETS」と呼ばれており、脳と頭蓋骨の間に極小のチップと電極を埋め込むもの。脳の至るところに埋め込まれたチップは脳内の電気信号をモニターし、PTSDのような精神的な疾患の治療を促進するデータを無線で送信できるとのこと。電極は症状を緩和するために電気的インパルスを引き起こすことができます。
DARPAは異なるアプローチをとるため2つのチームを選出。1つはカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)によるチームで、脳のうち精神や神経の疾患に関わる部分にフォーカスを当てたインプラントの開発を目的としています。神経は老化や障害を受けることによって機能単位を失いますが、外界からの刺激によって補填・回復することが可能。インプラントによって脳活動の直接記録・刺激・治療を行うことで、脳の神経回路を修復し、PTSDなどの疾患から人を自由にできるというわけです。なお、処置が成功すれば、最終的にインプラントは脳から除去されるとのこと。
By Bill Brooks
パニック障害、強迫性障害などに対し、診断名ごとに異なる治療法を行うのではなく、各疾患で共通する要因にターゲットを絞って治療する方法を「trans-diagnostic」と呼びますが、もう1つのチームであるマサチューセッツ総合病院(MGH)のチームはこの方法でのアプローチを実施。インプラントによって脳内活動をリアルタイム記録して、病理の兆候を単一のニューロンに至るまでトレースすることで、精神医学・神経学の病理に共通する不安神経症・記憶障害・遅延反応時間といった要素を特定する試みを行う予定です。
SUBNETSプログラムは2013年にバラク・オバマ大統領が発表した、1億ドル(約100億円)の予算が組まれている脳内マッピング研究に関連するもの。もしSUBNETSプログラムが成功を収めれば、アメリカの介護費用の3分の1を占めるPTSDおよび、何百万もの不安障害患者の治療に大きな影響を及ぼすものと見られています。
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