ごく普通のノートPCを使って超音波によるデータの送受信を可能にする実験
JR東日本がリリースした「JR東日本アプリ」や「ぐるなびタッチ」など、人間にはほとんど聴くことができない高い周波数の音を使ってデータを送受信する技術が実用化されてきています。音声を再生できる装置とマイクさえあれば手軽に通信を行うことが可能になるのですが、その仕組みをごく一般的なノートPCを使って自作しようという試みが行われています。
Ultrasound Networking | Anfractuosity | Still waiting on the daybreak, its shadows in my mind
http://www.anfractuosity.com/projects/ultrasound-networking/
実際にデータを送受信してみたムービーがYouTubeで公開されています。
Ultrasound data transmission with standard laptops - YouTube
まず、送信元のPCに「Hello World」とテキストを入力し、Enterを数回押して改行を入れます。
すると、送信機の動作を示すグラフに変化が起こり、23KHzあたりに鋭い山が現れました。これでデータが送られたことがわかります。
一方の受信側PCの画面には、マイクで拾った音声の周波数スペクトルが表示されています。三角形に見える部分は不要なノイズなので、データ変換される際には必要な周波数以外をカットするバンドパスフィルタで取り除かれます。実際にデータ転送に使われるのは、右に小さく表示されている部分の音声だけ。
データは5バイトずつのパケットに分割して送受信されており、あまり速度は速くない様子。しばらく待っていると、画面では非常に見にくいのですが、文字列らしきものと空行が表示され、元の文章が受信側のPCで表示されたことが示されました。
このシステムは、Ubuntu上で動作するオープンソースの「GNU Radio」を用いて設計されたもので、TCP/IPとUDPの2つのプロトコルで送受信を行うことが可能になっています。
データの変調方式は、周波数の変化でデジタル信号の「1」と「0」を作り出すFSK(周波数偏移変調)を採用。以下の図では「1」と「0」の状態だったデータ(Data)が信号を運ぶ役割を果たす音波(Carrier)に掛け合わされ、波の幅が変化(=周波数が偏移)してデータが載せられた信号(Modulated Signal)が作り出されたことを示しています。
下図で、上部のグラフは送信元となるトランスミッターに送られた信号、そして下部のグラフはマイクが拾った音の信号となっています。マイク音声にはフィルタをかけて余分なノイズを除去して復調してあるためか、信号が0Hzの位置に表示されています。
データを転送する際のイメージは以下のような感じ。2台のPCからは18KHzと19KHzというそれぞれ異なった周波数の音が再生され、お互いに送受信することで通信できるようになっています。人間の可聴域は一般的に20Hzから20KHzまでなので、実際にはもっと高い周波数の音声が使用されることが多くなると思われます。
2台のPCの間でデータをやり取りするためには、Bluetoothによるデータ転送や、USBメモリやLAN接続などの外部機器を経由しなければならない場合がほとんどですが、音声によるデータ送信技術が自分のPCでも使えるようになるとさらに便利になりそうです。
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