メモ

IT界の巨人・インド系企業に戦いを挑む旧ソビエト圏からの新たな勢力

By Kecko

システム開発、プログラミング、サポートセンターなど、さまざまな方面で世界のIT産業成長の一角を担ってきたインドのIT関連企業ですが、旧ソビエト圏を拠点とする企業がその牙城を崩そうと勢力を伸ばしてきています。

Ex-Soviet Programmers Take On India in $48 Billion Market - Bloomberg
http://www.bloomberg.com/news/2013-09-16/ex-soviet-programmers-take-on-india-in-48-billion-market.html


20年前にベラルーシ出身のArkadiy Dobkin氏がアメリカに移住してきて、初めて手にした仕事は「皿洗い」でした。それがいまや、Dobkin氏は故郷ベラルーシをはじめとする東欧諸国に1万人のプログラマーを抱え、「Barclays」や「Expedia」といった企業を向けにソフトウェアを開発する企業を率いています。


Dobkin氏率いるEPAM Systems社は、48億ドル(約4800億円)市場ともいわれるグローバル・アウトソーシング市場をターゲットにビジネス活動を進めており、ソビエト連邦時代に培った技術をもとにプログラミング界の巨人Tata社をはじめとするインドの企業を相手に戦いを挑んでいます。Dobkin氏は両社の違いを「マーケットからの要望に応えることがメインだったインドのITとは違い、冷戦時代のソビエトのエンジニアは軍備に関する仕事を扱ってきた」と説明しています。


また、6000人以上のプログラマーを抱え、顧客にUBSBoeingFordといった企業を持つ、Epam社のライバル企業Luxoft社のCEO、Dmitry Loschinin氏は「ソビエト時代に蓄積されたノウハウと教育方法により、(インド企業が持つ)狭い範囲に特化したプログラミング能力よりも幅広い問題解決スキルを携えている」と語ります。


◆プログラマーのスキル
Loschinin氏は「伝統的に、インドのプログラマーは裏方、シスアド、サポートといった方面の仕事に携わっているが、我々は複雑なソリューションを提供することができる」と語ります。事実、同社のソリューションは銀行向けデリバティブ取引システムや、車載カメラの映像に合成するカーナビゲーションなどとなっており、ドイツ銀行向けには、融資判断を迅速に行うための支援ソフトウェアの開発も行っています。

ここで一つのデータがあります。今年開催されたプログラミングコンテスト「Google Code Jam」では、24名のファイナリストのうち16名が中東欧諸国からのエントリーでした。

Country Representation - Code Jam 2013 Statistics
http://www.go-hero.net/jam/13/regions


また、IBM社がスポンサーを務める「ACM国際大学対抗プログラミングコンテスト」の13名の受賞者のうち、8名が同地域の出身者でした。

Results 2013
http://icpc.baylor.edu/worldfinals/results


中東欧系のプログラマーはインド系に比べて高い給料を得ているのは事実ですが、インド系企業よりも洗練された仕事を理由に、それが妥当なものであるとしています。ロシアの大手金融グループOtkritie Capital社によると、ベラルーシ国内のプログラマーの平均所得は年間1万7000ドル(約170万円)、ロシアの準都市圏エリアでも2万ドル(約200万円)となっています。これに対し、インドでは1万ドル(約100万円)、アメリカでは9万5000ドル(約950万円)となっています。

◆「質的」アドバンテージ
同Otkritie社のアナリストAlexander Vengranovich氏は、中東欧系のプログラマーが持つアドバンテージについて「クリエイティブで、難題解決能力に優れており、インドや中国系の競争相手に比べて質的に上回っている」と分析しています。昨年度のアウトソーシング業界全体のマーケットは48億ドル(約4800億円)で、一昨年度に比べて17%の伸びを見せましたが、中東欧系企業の伸び率はそれを上回っており、Epam社は30%増の4億3400万ドル(約430億円)、Luxoft社も16%増の3億1500万ドル(約315億円)と売上を伸ばしました。それに対するインド系企業も容易に市場シェアを渡すつもりはなく、Tata社の伸び率は29%、そのライバルであるInfosys社も20%の伸びを見せていますが、両者ともコメントを控えています。

◆アメリカで成長する
アメリカ・ペンシルバニアに拠点を置き、実際のプログラミングは東欧で行っているEpam社は昨年の新規株式公開以降、取引を倍以上に伸ばしました。また、スイスに本部を置くLuxoft社も、6月に実施された新規株式公開以降に50%の伸びを見せています。Dobkin氏は、多国籍企業がIT業務をインドへアウトソーシングし始めた1991年にアメリカに移住してきました。ベラルーシでの電気工学の学位を持つDobkin氏は英語を学習しながらいくつかの仕事を経て、1993年に独立を果たしました。現在53歳のDobkin氏は語ります。「ニュージャージーにも、故郷のミンスクにも、そんなことをしたのは私一人でした。資金はないし、コネクションもない。だから、仕事の複雑さという点を売りにして、他社との差別化を図っていくことにしました」

By harrypope

転機となったのは1995年、歯磨きペーストなどで有名なColgate社と交わした顧客関係管理システムに関する契約でした。そのシステムがソフトウェア企業SAP社の創立者であるHasso Plattner氏の目にとまり、同社のソフトウェア開発を請け負うことにつながりました。

◆大企業との取引
インド系企業がいわゆる「2000年問題」で業績を伸ばしたのに対し、EpamはEコマースプラットフォームのようなシステム開発に重点を置いていました。その結果、Four Seasonsホテルチェーンや、フランスのコスメ大手であるSephoraCoca-Cola、そしてadidasという大手企業との取引につながっていったのです。

By Sakeeb Sabakka

「元ソビエト圏の企業は、ヨーロッパ各国と同じタイムゾーンに属しており、アメリカとも近い距離関係にあることから多くのメリットを得ている」とプラハに拠点を持つIBAグループの副社長Valentin Kazan氏は語ります。Kazan氏は「企業にとってこれは好都合なロケーションになっており、地理的、人的なメリット、そして域内でサービスを提供できることから、顧客と近い関係を築けることによって、コスト削減、そして仕事のスピードを速くすることができる」と語っています。

By Garfield Anderssen

個人のスキル、コスト面でのメリットで成長を続けてきたインドのIT勢力ですが、中東欧からの新たな潮流にも目を向ける必要がありそうです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
なぜOperaがベラルーシでは最もポピュラーなブラウザなのか - GIGAZINE

ウォッカだけではない昔はソビエト連邦だった国々の共通点を集めてみました - GIGAZINE

インド映画が誇るあまりにも非常識なアクションシーンいろいろ - GIGAZINE

in メモ, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.