「僕は友達が少ない」平坂読と「魔術士オーフェン」秋田禎信の人気作家対談「執筆者の戦場」を一部先行公開
イラスト:草河遊也
現在、既刊の新装版と新シリーズが刊行されている「魔術士オーフェン」の作者である秋田禎信さんと、「僕は友達が少ない」の作者である平坂読さん。秋田さんはまだ「ライトノベル」という言葉が使われていなかった時代から業界に関わっていた作家ですが、一方の平坂さんはそのライトノベルを読んで育った作家であり、二人の間には世代差があります。しかし、実はこの2人の間には不思議な共通項が……というのが2人の対談「執筆者の戦場」で明かされます。
この対談は3月25日に発売される「魔術士オーフェンはぐれ旅 解放者の戦場」初回限定版付属の小冊子に収録されるのですが、今回、ダイジェスト版ながら発売に1ヶ月以上先駆けてGIGAZINEで先行公開することになりました。いずれも時代を代表する人気作家の対談、どのような感じだったのかは以下の通り。
進行:
まずは秋田先生、『僕は友達が少ない』を読んでみていかがでしたか?
秋田禎信(以下、秋田):
面白かったですよ! 変な言い方かもしれませんが、ずっとニヤニヤしながら読んでいました。
平坂読(以下、平坂):
ありがとうございます! 光栄です。小学生のころからのファンなので、こうしてお話しているだけでも不思議な気分なのに、本も読んでいただけているとは感激です。
進行:
平坂先生が小学生のころ、秋田先生は21歳でしたっけ?
秋田:
そうですね。平坂先生とは10歳くらい年が離れているのかな。今思い返すと、僕は富士見ファンタジア文庫の読者で新人賞に応募した最初の世代ですよね。そういうライトノベル読者からプロになった最初の世代、まで言っちゃうと嘘になるでしょうけど、それほど大きく外してもいないんじゃないですかね。
進行:
なるほど。当時はそんなにライトノベルレーベルはありませんでしたからね。
秋田:
まだライトノベルという言葉もなくて、編集部も『文芸』から崩れたような独特の空気がありました。当時の僕は高校生ですから、あの世界が大人に見えていましたけど、今の編集部はもっと明るい感じですよね。僕は、そんな中でよくわからないまま作家になってしまいました。
進行:
当時はまだジャンルもない、手探りの時期でしたね。対する平坂先生はまさに「ライトノベル」というジャンルが生んだ作家のような気がするのですが。
平坂:
確かに、ずっとライトノベルを読み続けて、そのまま作家になりました。最初からライトノベルが書きたくて作家になったというところが、一番秋田先生と違う点かもしれません。
秋田:
本人の気持ちも、周囲の見方も違う気がしますね。ジャンル化されるっていうのはそういうことなんでしょうけど。
進行:
平坂先生がデビューした頃には既に色々な作品が溢れていましたよね。その中で『オーフェン』ってどんな位置にある作品だったんでしょうか。
平坂:
『スレイヤーズ!』をきっかけにしてライトノベルを読みはじめて、他の作品も読みたいと思って出会ったのが『オーフェン』でした。本当に面白くて、まあそんなにたくさん本を買うお金もないので、この2シリーズを中心に読んでいました。当時は長くシリーズが続くこと自体が珍しかったので、ちゃんと続きの出る『オーフェン』はすばらしいな! なんて思ってましたね(笑)。
進行:
『スレイヤーズ!』と『オーフェン』は平坂さんの中で違いがありましたか?
平坂:
なんとなく、『オーフェン』は「大人っぽい」と思っていました。
秋田:
そういう見え方はしていたかもしれませんが、書いているほうの感覚からすると、『スレイヤーズ!』の方が大人だなあと思ってましたね。過剰な火力の女の子が暴れ回るっていうのは当時としては過激な設定だったんですが、リナっていうキャラクター自身はかなり大人で、ブレる余地もないんですよ。そのあたりの安心感が『スレイヤーズ!』のポイントだろうと思います。それに比べると『オーフェン』はやたら若いですよね。キャラクターもそうですが、僕の子供っぽさが硬い文章を書かせていて、そこが平坂先生には大人っぽく見えたのかもしれません。
平坂:
あの文体には憧れました。
進行:
その割には、平坂先生の文体は秋田先生の文体とは結構違いますよね。
秋田:
平坂先生の言葉の選び方とか文章そのものは確かに違うかもしれませんが、知っている単語は案外同じ気がしましたね(笑)。もしかして読んできたものが結構かぶってるのかなというか、なんとなく似ている部分を親戚の子供に見つけたようで嬉しくなりました。
平坂:
僕は『オーフェン』の無謀編を何度も読んでキャラクターの立て方を学んだので、意識せずにそういった部分も影響を受けているのかもしれません。
進行:
お二人から読者の方にこの対談を通じて伝えたいことはありますか。
秋田:
誰でも生活に疲れて、アンテナが鈍って、世の中にあるコンテンツが何も面白くないって気分になることがあると思います。僕自身もそういうことはありますが、でも少し落ち着いてから本腰を入れて探してみると、必ずちゃんと面白いものが見つかるんですよね。平坂先生のように新しい才能が、色々な業界でどんどん生まれていますから。
平坂:
秋田先生の素晴らしいお言葉のあとでアレですが、『オーフェン』は本当に面白いので、今のライトノベルファンのみんなもぜひ読んでみてね、と(笑)。
進行:
ありがとうございました。
ちなみに、今回対談した2人のプロフィールはこちら。
◆秋田禎信
1973年生まれ。17歳でファンタジア長編小説対象・準入選。『ひとつ火の粉の雪の中』にて作家デビュー。著作に『カナスピカ』『RD潜脳調査室Redeemable Dream』(講談社)、『機械の仮病』(文藝春秋)、『秋田禎信BOX』『ハンターダーク』(TOブックス)など。
◆平坂読
第0回MF文庫Jライトノベル新人賞・優秀賞を受賞。2004年、受賞作『ホーンテッド!』でデビュー。2009年8月より『僕は友達が少ない』を刊行開始。2012年1月現在、既刊7巻、アンソロジー1巻が展開され、累計で400万部を突破するほか、2011年10月から12月まで、テレビアニメ化されるなど大規模なメディアミックスも行われた。現在のライトノベル界を代表する作家の一人。他シリーズに『ねくろま。』『ラノベ部』など。
上記の対談の完全版は3月25日発売の「魔術士オーフェンはぐれ旅 解放者の戦場」初回限定版付属の「Production Note Ⅱ」に収録されます。この「Production Note Ⅱ」には対談のほかにインタビュー、秘蔵のラフが収録され、また、ラッツベインが初登場する短編「そこまで責任もてねえよ!」を完全に再録しています。
「解放者の戦場」のあらすじはこんな感じです。
《戦術騎士団》の崩壊から数日後。オーフェンは指揮官としての責任を問われ、市議会により拘束されていた。そして、騎士団と魔術学校の運営を託されたマジクたちは、それぞれの立場から秩序維持のために動き始める。一方、マヨールは妹であるベイジットを追うために、《キエサルヒマ魔術士同盟》を離反し、原大陸を放浪する。辿り着いたのは魔術士のいない開拓地。《ヴァンパイア》たちが統治する村だった。すべてが混沌とし事態も収拾されぬまま、《反魔術士勢力》を支援するために一隻の船が入港する。《ガンズ・オブ・リベラル》。解放と自由を歌うその船は、魔術士にとっての脅威を詰め込んだ装甲船だった。
原大陸の覇権をめぐる抗争は三つ巴の様相を呈し、新たな戦火は各地へと広がっていく。
小説本編の他に、公式グッズもいろいろと展開中。コレは本編から選び抜かれた名台詞が365日分収録されていたり、日常会話をオーフェン風の言い回しで紹介する「オーフェン日常用語対訳集」などが収録された、「魔術士オーフェンはぐれ手帳2012」。
草河遊也描き下ろしイラスト入りのメモリアルカレンダー
牙の塔の紋章が入った「魔術士オーフェンはぐれ旅ブックカバー」
さらに、秋田さんが今年でデビュー20周年ということで、「解放者の戦場」発売記念フェアが開催されます。これは、フェア開催書店でオーフェンシリーズを購入すると特製トレーディングカード(全9種)、秋田禎信×草河遊也サイン入りグッズ(ポスター、色紙)などが抽選で当たるというもので、一部店舗ではシリーズの人物相関図などを収録した「魔術士オーフェンはぐれ旅」入門書が配布されたり、オーフェンの等身大パネルが展示されたりするとのこと。
また、3月22日から4月3日にはpixiv Zingaroで草河遊也さんの原画展も開催されます。展示されるのは複製原画ではなく生原画で、現在刊行されているオーフェン新シリーズのために描き起こされたイラストを中心に20点以上の作品を展示。イベントは入場無料となっています。
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