スティーヴン・ホーキング博士のためにインテルが新たな入力方式を開発中
21歳のときに筋萎縮性側索硬化症で余命3年という診断を受けながらも、現在も健在で活躍している物理学者のスティーヴン・ホーキング博士。今年もインテルが新しいカスタマイズPCを贈り、その設置が行われました。
Stephen Hawking's New PC
Intel Exploring Ways To Help Stephen Hawking Speak Again | Fox News
ホーキング博士に新しいPCを届けたのはインテルのTravis Bonifieldさん。Bonifieldさんは前任者のあとを受けてここ10年間、ホーキング博士のPCを担当しています。担当は常勤ではなく、普段はアプリケーションエンジニアとして働いています。
ホーキング博士はかつてはAMD製CPUを搭載したマシンを使っていたのですが、インテルの財政事情が悪化していた1997年にゴードン・ムーア名誉会長がホーキング博士と直接面談し、「先進的なインテルのマシンを使いたくはないですか?我々は喜んであなたのためにマシンを作り、サポートします」と申し入れ、ホーキング博士がOKしたので、Intelのマシンを使うようになりました。それ以降、だいたい2年に1台のペースでマシンを提供しています。
ホーキング博士の車いすに新たなマシンを取り付けるところ。取り付けているのはホーキング博士の教え子、Sam Blackburnさん。
Stephen Hawking's Custom PC Unveiled - YouTube
まずは古いマシンを取り外して……
新マシンを設置。
さっそく起動。
合成音声出力にはEZ Keys XPを使用しています。
博士が音声合成ソフトを使っている様子はこんな感じ。
Stephen Hawking Using Voice Synthesizing Software - YouTube
今回インテルが提供したマシンはレノボのX220タブレットをベースにしたもの。CPUとしてCore i7を搭載し、前面にホーキング博士がSkypeで使用するウェブカメラを取り付けてあります。ホーキング博士が座っている車いすの下にオーディオアンプや電圧調整器、USBハードウェアキーなどを含むブラックボックスが収められています。ハードウェア音声合成装置は車いすの後ろ側にある別のブラックボックス内にあります。
ホーキング博士はかつて親指でスイッチを操作して言葉を入力し合成音声として出力していました。調子が良いときは1分で15ワードを入力できていましたが、やがて1分1ワードになり、ついには親指を動かすのが難しくなったため、胸の筋肉にセンサーを取り付けました。現在は、メガネのつるに赤外線センサーを取り付け、ほほの動きを感知して文字を入力しています。
しかし、博士の病気はゆっくりながらも進行しており、最近はほほを動かすのも難しくなってきていて、入力速度も1分に1ワードにまで低下。このため、博士はゴードン・ムーア名誉会長宛に「最近、言葉の入力がすごく遅いんだ。インテルから何か助力は得られないだろうか?」と連絡を入れました。これを受けて、インテル社内ではホーキング博士の入力を助ける何かを開発するため複数のチームを立ち上げました。経験技術研究所(the Experience Technology Lab、XTL)では、顔認識ソフトウェアが新たな入力方式として使えるのではないかと研究を進めています。
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