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Firefoxは収益の大部分を支えるGoogleとの契約を更新できるのか騒動まとめ


Firefoxを開発しているMozilla Foundationはブラウザ右上の検索ボックスに含まれているGoogleやBing(Microsoft)、Yahooなど各社からロイヤリティーを受け取ることで収益を上げて運営を続けています。しかし、このうち最大の割合(約8割)を占めているGoogleとの契約が2011年11月末で期限切れとなる、そしてその後どうなったのか音沙汰がない、ということでFirefoxの今後を不安視する報道が行われ、それに対する激しい反論も行われ、ちょっとした騒動になりました。

by Clive Rich

発端は12月2日17時40分(PST)のZDNetの記事。

Firefox faces uncertain future as Google deal apparently ends | ZDNet


It hasn’t been a good year for Firefox. Mozilla has lost share to Google, it’s lost the loyalty of enterprise customers, and it’s lost key talent. And a deal with Google that supplied 84% of its revenue last year was scheduled to end in November. Can Firefox avoid a slide into irrelevance?

Firefox(Mozilla)とGoogleとの契約期間が2011年11月に期限を迎え、それが延長されたという情報がなかったことを受けて、Firefoxの直面する未来が不確かなものになったという内容の記事です。

続いて、12月4日にTechWaveに以下の記事が掲載されました。

Firefoxがピンチ シェア低下、人材流出、Google契約打ち切りで【湯川】 : TechWave



TechWaveの記事は

米ZDNetが人気ブラウザFirefoxの今後を憂う内容の記事を書いているので、内容を簡単に紹介したい。

から始まる通り、先ほどのZDNetの12月2日付の記事の内容を用いたもので、

 しかしなんといっても最大の痛手は、これまでモジラ財団を全面的にバックアップしていたGoogleが、パートナー契約を11月で打ち切ったこと。契約更新もしくは更改の話し合いが行われたようだが、ZDNetが12月になってモジラの広報に問い合わせてたところ、「公開できる新しい情報はない」という返事が返ってきたという。
 昨年のロイヤリティ収入の86%がGoogleからだったそうなので、これはモジラにとって相当なダメージとなりそうだ。
 この記事を書いたZDnetのEd Bott氏は「最大の収入源が打ち切りになり、マイクロソフト、Googleによる(ブラウザ市場での)攻撃を受ける中で、Firefoxが競争から脱落するのはいつになるのだろうか」と結んでいる。

と、「Firefoxがピンチになった」という論調です。Internet ExplorerをはじめFirefox、Chrome、Opera、Safariと複数のブラウザがしのぎを削る中で、「FirefoxがGoogleとの契約を失った」というセンセーショナルな記事は多くの人の興味を集めることになりました。

このTechWave記事をもとにして2ちゃんねるにスレッドが立ち、それを2chまとめサイトが「Firefoxが開発停止か」というさらに扇情的なタイトルをつけたことで、話題はどんどん広まっていきます。

Firefoxが開発停止の危機 資金源の約9割を占めるGoogleとの契約更新に失敗 | ガジェット速報



しかし、「これはネガティブ要素を並べて組み立てただけだ」という反論が出てきます。

TechWave記事が公開されたのと同じ12月4日に、snyk_s log「Firefox 開発停止」の誤解という記事を掲載。


その中で、

大元のZDNetの記事からして「事実を元にネガティブな筋書きを組み立てるとこうなる!」みたいな内容

であり、契約継続についてのコメントがなかったことについても

そもそも今年の11月を目処にした契約であるならば現在も交渉中であっても不思議ではないし、そんな交渉中の内容について取材されたからと言ってMozillaがホイホイ明かせるものではないだろう

とツッコミを入れています。

Firefoxについての記事を数多く掲載しているMozilla FluxもTechWave記事を厳しく批判。

苦況(ピンチ)の内にも入りません - Mozilla Flux


Googleは、Mozillaとの契約を終了させた場合、22%超のシェアをもつWebブラウザという導線を捨てることになる。Google自体が収入を広告に依存しているのだから、FirefoxユーザーがGoogle検索の利用頻度を減らすと収入減につながり、契約打ち切りはあまり賢明な選択とはいえない。Google Labsの閉鎖などを見るにつけ、Googleも財務面で余裕がないように感じられるが、そうであればこそ、収入を減らす手を自ら打つだろうかとの疑問も湧く。

契約が終了しているにせよ、Mozillaは、その収入がたとえば86%といった大きな割合で失われるとはつゆほども考えていない。嘘だと思うなら、LinkedInのMozilla Corporationのページを見てみるといい。フルタイムのスタッフが400名以上と記載されている。2009年にMozilla関係者が世界中から一堂に会したとき、参加者は約250名だった。この250名にはMozilla Corporationのスタッフ以外も含まれているから、いかに急速に人員が拡充されたかわかろうというものだ。2011年9月にはWeb Strategy部門のVice Presidentが新たに加わっているが、はたして11月末で収入の大半がなくなる会社が幹部の採用などするだろうか。いったい、これのどこがピンチなのか。

LinkedInのMozilla Corporationのページを見ると、Mozilla Fluxが指摘しているとおり、2011年9月にウェブ戦略部門のバイスプレジデントとしてStephanie Schipperさんを採用しています。


契約の行方がどうなったのかはMozilla、あるいはGoogleによる発表待ちとなっていましたが、GoogleがCNETに送ったコメントによると12月時点でまだ契約は継続されている状態のようで、また、Mozillaは「交渉は継続中」であると回答しています。

Don't write off Mozilla-Google revenue deal as dead | Deep Tech - CNET News



モジラとグーグル、検索関連の提携をさらに延長か - CNET Japan



他のサイトでも同様に、MozillaとGoogleとの交渉は継続されていると報じています。

Google, Mozilla Still Negotiating Firefox Search Deal | News & Opinion | PCMag.com



Mozilla: 'Active Negotiations' Continue with Google



ちなみに、Mozillaはその財務資料をネットに公開しているので、収入がどれぐらいあったのかは誰でも確認ができるようになっています。

よくある質問 | Mozilla 年次報告書



これによると、2010年度の連結総収入は1億2320万6000ドル(約96億円)。その多くはFirefoxに搭載されているGoogleやBingといった検索プロバイダによるもので、1億2110万9000ドル(約94億円)分にあたります。Mozilla自身がGoogleを最大のパートナーと表現しているとおり、検索プロバイダのロイヤリティのうち86%をGoogleが占めているそうです。これはだいたい1億415万ドル(約81億円)分に相当します。

Firefoxの現状を確かめてみると、2011年1月の段階で23.72%だったシェアは9月段階で22.48%と、1.24ポイント減少しています。Google Chromeが同期間に5.05ポイント増加しているので、大きなシェア減少に見えますが、最大のシェアを誇るInternet Explorerも3.96ポイント減少、元々シェアが低めのOperaも0.66ポイント減少しており、この数字だけで「Firefoxがピンチ」だとは断言できません。



ちなみに、さらに長期的に見るとFirefoxは前身ともいえるNetscape時代には最大のシェアを誇りましたが、その後IEの猛攻を受けて絶滅寸前になり、Firefoxになって盛り返してきているという形になります。


なお、NetscapeNavigator 4.x時代からMozilla、Firefoxという感じで連綿と使い続けているという実体験からこれまでの歴史を改めて振り返ると、今のようなシェアを誇っていることがむしろ当時からすれば信じがたいことであり、GoogleやMicrosoft、Appleのような強力な資金があるわけでもないのにここまで健闘していること自体がほぼ「奇跡」に近いのです。

また、Firefox10(現在のコードネーム「Aurora」)からは企業ユーザーなどが待望していた「延長サポートリリース版(Extended Support Release)」の提供が提案されています。このESR版はこれまでのような次々と打ち出されるバージョンアップによる新規機能追加が控えられ、一方でセキュリティアップデートがちゃんとリリースされ続けることにより、安定して動作する環境のテストや、各種アドオンの試験なども時間をかけて行えるようになります。もし実現すれば「あまりにも次々とバージョンアップされるけどアドオンとかその他諸々の関係で様子見中、もういっそのことGoogle ChromeとかiCloudの動くSafariとかに移行するか……」と考えていたユーザーも安心して利用できるようになるはずです。

2011/12/21 22:25追記
法人ユーザー向けの延長サポートについては以下のようになります。

Firefox 10 の主な新機能を紹介します « Mozilla Developer Street (modest)
https://dev.mozilla.jp/2011/12/firefox10/

現時点ではまだ正式決定ではありませんが、2012 年最初のリリースとなる Firefox 10 から延長サポートリリース版 (以下 ESR 版) の提供を開始することが提案されています。ESR 版では通常の Firefox のバージョンアップと同時に、セキュリティや安定性に関わる修正のみを行い、機能的な変更を行わないマイナーバージョンアップを提供します。

現在の提案では ESR 版は通常の Firefox の 7 バージョン毎にメジャーバージョンアップを行い、最低 2 バージョンは新旧両バージョンをサポートするため、各バージョンは 9バージョン × 6週 = 54週 ~= 1年 の間継続サポートされる予定です(上図参照)。

機能や速度の変更が行われない安定バージョンが必要なため Firefox 3.6 をお使いの企業ユーザの方は、ESR 版 Firefox 10 にアップグレードされることをご検討ください。

なお、ESR 版は機能的に安定なバージョンでですが、最も動作が安定するバージョンは通常版の Firefox になります。どうしても機能的な変更を避けなければならない場合を除き、新機能と共にメモリ使用量削減、応答性向上、セキュリティや安定性を全て改善し続けている最新の Firefox をご利用ください。

なお、Android 向けには ESR 版 Firefox の提供予定はありません。

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