サイエンス

第一子が娘の父親は男女平等に肯定的な傾向が強いことが日本の研究で判明


政治的な価値観は親から子への一方向だけでなく、子どもから親へも伝わる可能性があります。早稲田大学政治経済学術院の尾野嘉邦教授とマカオ大学政府行政学部の千葉大奈准教授が日本の大規模社会調査を用いて、第一子の性別と父親のジェンダー平等意識や政策への支持との関係を分析しました。研究結果は2026年6月12日付で学術誌「Public Opinion Quarterly」に掲載されています。

Do Daughters Change Their Fathers? Evidence from the First-Daughter Effect in Japan | Public Opinion Quarterly | Oxford Academic
https://academic.oup.com/poq/advance-article/doi/10.1093/poq/nfag040/8706729

娘は父のジェンダー意識を変えるのか? – Global Research Center (GRC) 早稲田大学 研究活動
https://www.waseda.jp/inst/research/news/84704


The first-daughter effect: How raising girls changes fathers’ political views in Japan
https://www.psypost.org/the-first-daughter-effect-how-raising-girls-changes-fathers-political-views-in-japan/

親が子どもに政治的な価値観を伝える過程は「政治的社会化」と呼ばれます。これに対し、子どもとの関わりを通じて親の考え方が変わる現象は「逆方向の政治的社会化」と呼ばれています。欧米では第一子が女児の父親は、第一子が男児の父親よりもジェンダー平等に肯定的な傾向を示す「第一子娘効果」が報告されてきました。しかし、中国や南アフリカでは明確な効果が確認されておらず、欧米以外でも同じ傾向が現れるかは分かっていなかったとのこと。


そこで尾野氏らは2000年~2018年に実施された日本版総合的社会調査(JGSS)のデータを用いて、子どもが1人以上いる男性のうち第一子が女児の父親と、第一子が男児の父親を比較しました。日本では1899年に公式統計が始まって以来、出生時の男女比が女児100人に対して男児約105人で安定しているため、尾野氏らは第一子の性別を自然実験に近い条件として扱っています。

尾野氏らは父親の男女平等に対する考えや政策への支持を以下の6項目を用いて分析しました。各項目が調査された年は異なり、有効回答数は760人~1万984人となっています。

伝統的な性別役割分業:「夫の役割は収入を得ることで、妻の役割は家庭や家族の世話をすることである」という考えへの賛否
選択的夫婦別姓:結婚後の姓について妻が夫の姓に変えるべきか、夫婦でどちらの姓にするか決めるべきか、どちらも変える必要がないかを回答
女性天皇:父方をたどると歴代天皇につながる女性皇族が即位することへの賛否
女系天皇:女性皇族と一般男性との間に生まれた子どもに皇位継承資格を認めることへの賛否
所得再分配:「高所得世帯と低所得世帯の所得差を縮小するのは政府の責任」だという考えへの賛否
犯罪対策への政府支出:犯罪対策に対する政府の現在の支出額を「多すぎる」「適切」「少なすぎる」の3段階で評価

分析の結果、第一子が女児の父親は第一子が男児の父親よりも伝統的な性別役割分業に否定的で、選択的夫婦別姓と女系天皇を支持する傾向が強く見られました。

また、所得再分配の強化と犯罪対策への政府支出の増額についても支持する傾向が確認されましたが、女性天皇への支持については有意差がなかったとのことです。

以下のグラフは6項目の推定効果を表したもので、縦の破線が「差なし」の0、横線が95%信頼区間です。数値が大きいほど、第一子が女児の父親の方がその項目について男女平等に肯定的な回答や政策を支持する回答をした傾向が強いことを示しています。


さらに、第一子が女児の父親が政治全般においてリベラルなのかを確かめるため、「一般的な保守・リベラル傾向」「自由民主党(保守政党)への支持」「地域で外国人が増えることへの賛否」「同性愛に対する態度」「安全保障への政府支出」についても比較しましたが、この5項目にはいずれも有意な差がなかったとのことです。尾野氏らは、第一子の性別による差が政治的態度全般ではなく、女性の権利や機会に関わる項目に集中していたと説明しています。

なお、尾野氏はサイエンス系メディアのPsyPostに対し、「今回の結果はあくまで平均的な傾向で、すべての父親に当てはまるものではなく、推定された効果も圧倒的に大きいわけではない」とコメントしています。

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in サイエンス, Posted by log1b_ok

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