サイエンス

月の形成に新たな学説「月は2つあった」可能性が提示される


月の起源は、原始地球に火星大の天体「テイア」が衝突し、その影響で飛散した両天体の一部が、地球の周回軌道上に集積して形成されたと考えられています(ジャイアント・インパクト説)。この衝突の後、地球にも月にも吸収されなかった物質が、いわば「もうひとつの月」としての天体を形成し、地球は2つの月を持っていた時期があるかもしれないことが、月の形成過程のシミュレーションによって分かってきたそうです。

Earth used to have TWO moons... but one was destroyed in a giant solar collision | Mail Online

従来では、地球とテイアとの衝突で飛散、蒸発した物質のうち、地球にも月にも回収されなかった残りは宇宙空間に散っていったと考えられていました。しかし、今回のモデルでは、これらの物質が月の軌道上の前後60度の重力安定点(ラグランジュ・ポイント)に集まり、もうひとつの月を形成した可能性があることが指摘されています。

この「もうひとつの月」は、形成から数千万年ほどのちに、月との安定点から外れ、地球から見た「月の裏側」で衝突が起こり、現在の月のような形になったと考えられるそうです。


月は自転と公転が同期し、常に地球に対して同じ側を向けているため、通常地球からは見えない側のことを「月の裏側」と呼びますが、この裏側は表側とは地形が大きく異なっており、月の最高点(10075m)と月の最低点(マイナス9020m)が裏側のほぼ近い場所に存在しています。また、地殻の厚さが表側に比べて厚くなっており、従来、この違いは重力による潮汐力によって生じたとされてきましたが、今回のモデルはその説に異論を唱えることになりそうです。

月の裏側についての説明は、JAXAのサイトに詳しい内容が掲載されています。下の画像は、ガリレオ探査機が撮影した月の裏側の写真。


下の画像は、2つの月が衝突し、1つの天体を形成するまでのシミュレーション画像です。2つの天体は、ほぼ同じ軌道を同じ程度の速度で周回していたため、星間宇宙から飛来する天体との衝突とは異なり、非常にゆっくりとした速度での衝突が起こり、この衝突では巨大なクレーターや蒸発は生じなかったと考えられるとのこと。


カリフォルニア大学サンタクルーズ校のErik Asphaug博士は「我々のモデルでは、ジャイアント・インパクト説において指摘される、月と地球のほかに大量のデブリが軌道上に残ったのではないかという点について、うまく説明できる」と語っています。

また、従来の潮汐力説支持者である同校のFrancis Nimmo博士も「Erikの説のエレガントな面は、月の表と裏との違いを説明できる点にある」と語りながらも、現在のデータでは、2つの月が確実に存在したと言い切るには不十分であるとしています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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