サイエンス

「1週間以内に自殺しようとする人」を75%の精度で予測することに成功


自殺はさまざまな国々で社会問題となっており、特に病気などで死亡するリスクが低い若年層では上位の死因となっています。新たにハーバード大学の研究チームが、「1週間以内に自殺企図する人」を75%の精度で予測することに成功したとの研究結果を報告しました。

Using smartphone surveys to predict next-week suicide attempts.
https://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fabn0001117

Harvard study predicts most suicide attempts a week in advance | Harvard FAS
https://current.fas.harvard.edu/stories/harvard-study-predicts-most-suicide-attempts-week-advance

自殺は10~34歳のアメリカ人において、事故に次ぐ第2位の死因です。世界全体では戦争や虐殺などを含む暴力全体よりも多くの命が、自殺によって失われているとのこと。また、ここ数十年に行われた複数の研究では、「自殺で亡くなった人の50%は最後の1カ月で医療従事者の診断を受けていた」ということも明らかになっています。

多くの自殺者が死の直前に病院を訪れていたのに自殺を防げなかったという事実は、確かに悲しいものです。その一方で、「自殺の兆候は気付きにくい」「極度の苦しみを持つ人にとって自殺は避けられないものだ」という考えに疑問を投げかけるものでもあります。なぜなら、これらの人々は「自分の精神状態が悪化している」と認識し、自殺などの結果に陥るのを防ごうとして、実際に外部の医療従事者に相談しているからです。


それにもかかわらず自殺が起きてしまう理由について、ハーバード大学の自殺予防研究の第一人者であるマシュー・ノック教授は、従来の臨床ケアシステムでは自殺念慮の複雑で一時的な性質が見過ごされやすいと指摘しています。ノック氏は、「自殺企図や自殺による死亡を予測するのは容易ではありません」「人々を危険にさらす要因や自殺念慮の増減を理解する必要があります」と述べています。

ノック氏によると、大多数の人にとって自殺念慮や自殺リスクが高い状態は一時的なものだとのこと。人々は今の苦しい状態から逃れたいと思っており、その選択肢のひとつに自殺が入り込んでしまうものの、一時的な苦しい状態を乗り越えれば充実した人生を送れることが多いそうです。


ノック氏はスマートフォンが普及し始めた当初から、携帯情報端末を用いてリアルタイムで自殺念慮の増減を測定する研究を行ってきた人物です。今回ノック氏が率いる研究チームは、救急外来で精神科の治療を受けた成人と、自殺念慮や自殺企図によって入院治療を受けた12~19歳の若者を対象に、スマートフォンアプリを用いた調査を実施しました。

両グループとも病院やクリニックの退院直後から3カ月にわたり、1日6件の任意回答アンケートを受け取り始めました。そして次の3カ月間には、1日1件の任意回答アンケートを受け取ったとのこと。このアンケートには「0」~「10」の11段階で評価する20個の質問が含まれており、そのうち3つは自殺衝動や自殺の意思、自殺衝動に抵抗する能力を測定するものでした。そして残り17個は、否定感・絶望感・閉塞感・孤立感・怒り・動揺・不安・疲労・興奮度・肯定感といった気分や情動について測定するものでした。

対象者のうち約500人がアンケートに少なくとも1回は回答し、全体で7万7000件の回答が得られました。研究チームはアンケートの内容だけでなく、アンケートを受け取ってから回答し始めるまでの時間や回答にかかった時間など、アンケートに関連するメタデータも考慮に入れたとのこと。

研究チームが機械学習モデルを用いてアンケート回答やメタデータを分析した結果、次の1週間以内に発生する自殺企図の75%と、自殺関連事象(自殺企図だけでなく自殺を予防するための入院も含む)の87%を予測することができました。

特に自殺企図のリスクと強く関連していたものに「興奮度」があり、興奮度が11段階のうち1段階上がるごとに自殺企図の可能性が11%増加しました。陸軍兵士を対象にした2026年の研究では、自殺企図から生還した人の90%が心理的な興奮や苦痛を和らげたくて自殺しようとしたと回答しており、今回の興奮度が高いと自殺しやすくなるという結果と合致します。


今回の研究はノック氏の研究室で行っている、自殺リスクをリアルタイムでモニタリングすることを目的とした、幅広い研究イニシアチブの一環です。ノック氏は、気分の変動をモニタリングすることにプライバシー面の問題が絡むことを認識しているとのことで、「この方法には注意が必要であり、臨床医や治療対象となる疾患や症状を抱える人々と緊密に連携して取り組む必要があります。しかしここには、大きな可能性が秘められています」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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